映画音楽紹介➅「デボラのテーマ」モリコーネの描く美しいノスタルジアに浸る。
こんにちは。映画音楽をこよなく愛するペリーです。
今回は、映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』から
「デボラのテーマ」をご紹介致します。
いまや音楽は、私達にとって《精神的必需品》であると言えます。
今回も皆様にとっての一助になれば嬉しいです。
(2023年1月19日追記:『モリコーネ / 映画が恋した音楽家』公開おめでとうございます!!)
映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』概要
映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』は、1984年公開のイタリア・アメリカ合作映画。
ギャング達の愛や友情、裏切りを描いた大作。
監督はセルジオ・レオーネ。
主演はロバート・デ・ニーロ、ジェームズ・ウッズ。
若き日のデボラ役を演じたジェニファー・コネリーのデビュー作としても知られる。
・エンニオ・モリコーネについて
音楽は巨匠エンニオ・モリコーネが担当した。
1928年生まれ、2020年没。享年91歳。
セルジオ・レオーネ監督やジュゼッペ・トルナトーレ監督とのタッグが有名。
セルジオ・レオーネ監督は小学校時代の同級生でもある。
「夕陽のガンマン」、「ニュー・シネマ・パラダイス」、
「海の上のピアニスト」、「ミッション」…
数々の名作映画に携わり、その都度聴く者を虜にする名曲を生み出してきた。
また、NHK大河ドラマ「武蔵 MUSASHI」(2003)の音楽を手掛ける等日本との接点も多く、映画音楽作曲家の中でも日本におけるモリコーネの知名度は群を抜いて高い。
”映画音楽作曲家”の側面ばかり注目されがちなモリコーネであるが、演奏会用の作品も多く遺しており、純音楽・現代音楽作曲家として再評価の動きが高まっている。
「デボラのテーマ」音楽紹介
映画本編中で何度も耳にする「デボラのテーマ」。
劇中のヒロイン、デボラから名付けられた美しい音楽である。
弦楽オーケストラを主軸に、声楽、オーボエ、アルトフルートにより演奏される。
モリコーネの作品といえば、耳が唸る程の旋律の美しさ。
本曲もその例に漏れず、甘美でノスタルジアに満ちた極上の旋律。
旋律の絶妙な弛緩と緊張の関係が、聴く者の心を揺れ動かし、思わず目頭が熱くなってしまう。
また、主旋律の随所に現れる非和声音の独特の浮遊感が、過ぎ去ってしまった遠い過去を想い返して感傷に浸っているかのような感覚にさせてくれる。
そして、その主旋律を奏でるのは、艶やかな音色のヴァイオリンとソプラノ歌手エッダ・デッロルソの澄み切った天上の歌声である。
ああ、なんと心地よく癒される音楽だろう。
一音一音が、聴く者の情緒に訴えかけてくる。
モリコーネの「エッダがいなければ、声楽に手をつけなかっただろう。」⁴という発言にも頷ける。それほど、彼女の歌声には心を掴むものがある。
Lentoの速さでゆっくりと奏でられる本曲は、
静かで優しく、柔らかく、そして暖かい。
その曲想は、弦楽の人情味のある美しく重厚なハーモニーによって包まれている。
見事に全楽器が曲想と調和し、その精緻なオーケストレーションに耳が唸る。
特に、低音部におけるチェロとコントラバスの下支えが穏やかに響き渡り感動を促す。
まるで土の地面のような、どっしりしているが同時に温もりもある音で、
全体の暖かく優しい曲想をしっかりと支えている。
甘美な旋律と暖かな和声が出逢う時、
夢のように甘く柔らかい響きが、そこにはある。
懐かしい若き頃をふと想い返したくなった時、聴きたくなる作品だ。
最後に
エンニオ・モリコーネの音楽は、今後いつの時代の人々にも感動を与え続けていくに違いない。
今日モリコーネの音楽はコンサートの曲目として頻繁に演奏されている。
そして、これは私事になるが、モリコーネのファンではなくてもモリコーネの音楽を口ずさんで歌える友人がいる。
モリコーネの音楽は普遍的に聴く者の心を鷲摑みにする音楽だと、私は確信している。
今後も彼の音楽を永遠に聴き続けていきたい。
ところで、ジュゼッペ・トルナトーレ監督によるエンニオ・モリコーネを追ったドキュメンタリー映画『ENNIO(原題)』の公開が待ち遠しい✨
2022年3月に公開される予定であったが、現在蔓延している疫病により製作が遅れ公開が延期になっている。
私にとって、全映画ファンにとって、見逃すわけにはいかないだろう。
公開される日が本当に楽しみである。
脚注
¹ ©Graeme Maclean, once upon a time in america 1, Still from film to compare with previous photo. https://www.flickr.com/photos/gee01/145769485
² ©Olivier Strecker, 2017, CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Ennio_Morricone_Cannes_2007_edited.jpg
³ ©"Jennifer Connelly" by chieu_cuong88 is marked with CC BY-SA 2.0.
⁴ Ennio Morricone on Once Upon a Time in America - Soundtrack, "An Interview with Ennio Morricone by Marco Werba Originally Published in CinemaScore#13/14,1985", https://cnmsarchive.wordpress.com/2015/04/08/ennio-morricone-on-once-upon-a-time-in-america/
⁵ Endless Love - The Ennio Morricone Online Community, https://chimai.miraheze.org/wiki/Movie_Endless_Love
⁶ 佐野武(2004)『ENNIO MORRICONE in Japan 公式図録』TBS
参考文献
・映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』セルジオ・レオーネ監督 1984年
・“Deborah's Theme (From "C'era Una Volta In America")”The Platinum Collection, Composed By, Arranged By, Conductor – Ennio Morricone, Soloist – Edda dell'Orso, ℗1984 EMI Records Ltd
・Deborah's theme (Once upon a Time in America) - Ennio Morricone, J John, 2020, https://youtu.be/6RAdNsZjxyQ
・佐野武(2004)『ENNIO MORRICONE in Japan 公式図録』TBS
・伊福部昭(2008)『完本 管弦楽法』音楽之友社
・The double life of Ennio Morricone (1928-2020) from ABC, Penny Lomax and Ellie Parnell, 2021, https://www.abc.net.au/radionational/programs/musicshow/morricone-felicity-wilcox-soundtracks-sergio-leone-hollywood/12986214
・Ennio Morricone on Once Upon a Time in America - Soundtrack, https://cnmsarchive.wordpress.com/2015/04/08/ennio-morricone-on-once-upon-a-time-in-america/
・Endless Love - The Ennio Morricone Online Community, https://chimai.miraheze.org/wiki/Movie_Endless_Love
・Ennio Morricone Official Website, http://www.enniomorricone.org『
・映画『ENNIO(原題)』公式サイト, https://gaga.ne.jp/ennio/