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“王将”といえばどっち?「餃子の王将」「大阪王将」データ比較分析

 こんにちは。ベトナム在住ライターの寺内です。

 前回冷凍餃子について分析しましたが、みなさんは餃子をよく食べますか?
 私は時々無性に食べたくなるのですが、一から作るのが面倒だったりします。そして餃子といえば“王将”のイメージがあるのですが、「餃子の王将」と「大阪王将」、2つの違いについてあまりよく知らず...違う会社?なのは知っていますが、それぞれの違いや特徴について調べてみたいと思いました。

 ということで今回は「餃子の王将」と「大阪王将」について分析したいと思います。

≪Knowns Bizについて簡単にご紹介≫


中華料理チェーンの認知率と満足率

Knowns Biz調べ:中華料理チェーンの認知率と満足率

 今回餃子専門店を調べるにあたってKnowns Bizを用いて中華料理チェーンのジャンル検索をしたところ、認知率では「餃子の王将」が1位(95.0%)、2位は「バーミヤン」(90.9.%)、3位が「大阪王将」(76.6%)でした。
  満足度では「餃子の王将」が約84%、「大阪王将」が約77%でした。

 では、どういった違いや共通点があるのかみていきたいと思います。

「餃子の王将」「大阪王将」違いって?

店舗母体

 「餃子の王将」と「大阪王将」の発祥母体は同じで、1967年に京都で創業しています。1969年に暖簾分けの形で「大阪王将」は独立し、85年には"王将”という商標をめぐり裁判になりましたが、それぞれ現在の店名とする旨で和解しています。

 「餃子の王将」は1974年に株式会社王将フードサービスを設立し、店名の通り餃子を専門とした中華チェーンとして店直営・フランチャイズ店舗を国内に732店舗を展開しています。

 対して「大阪王将」はイートアンドHDという会社の一部であり、グループとしてイタリアン風ラーメンの「太陽のトマト麺」やらーめん専門店「よってこや」なども展開、通販事業など他の業態も展開しており多角化を進めています。

餃子の違い

引用元:餃子の王将HPより餃子

 どちらも国産の豚肉・キャベツ・にんにく・生姜を使用していますが、大きな違いとしては「餃子の王将」は香味野菜が豊富でガッツリ、「大阪王将」はニラが入っておらず「餃子の王将」よりもさっぱりとした味わいだそう。
(※餃子の王将ではにんにくを使用しない「にんにくゼロ生姜餃子」も提供)

 また「餃子の王将」は強力な粘りの北海道産の小麦粉を使用し、皮が厚めでもちもち、野菜が多く中はシャキシャキした食感です。餃子は店舗へ届けられるまで一切冷凍せず、工場から毎日店舗へ配送されています。

 「大阪王将」は具は肉がホイップ状に白くなるまで練りあげることで肉の旨みを餃子にとじこめ、野菜も脂でコーティングされジューシーです。皮と具材は別々に店舗に納品され、お店で手巻きされているそうです。

引用元:大阪王将公式X(ツイッター)より元祖焼餃子

天津飯の違い

引用元:餃子の王将HPより天津飯

 どちらのお店でも餃子と並ぶ人気メニューが"天津飯”だそう。

※大阪王将については天津飯より天津炒飯の方が人気のようですが、同メニュー“天津飯”で比較しています

 「餃子の王将」の天津飯はネギやカニカマなどの具材がたっぷり入っています。「餃子の王将」の本拠地は京都ということもあり、天津飯にかける餡は醤油ベースに生姜を加えた京風の味つけになりますが、関東にある「餃子の王将」は、京風、甘酢、塩の3種類から選べます。
 元々関東にある餃子の王将で提供する天津飯は甘酢あんのみでしたが、関東に住んでいる関西人も多いため、甘酢あんの酸味に馴染めない人が続出したという経緯があり、3種類から選べるようにしたようです。

引用元:大阪王将HPよりふわとろ天津飯

 「大阪王将」は具材が入らない、卵だけのシンプルな"ふわとろ天津飯”です。 あんはあっさりとした醤油ベースで、卵6個を使いふっくらと厚みがあります。
 こだわり抜かれた"ふわとろ”の食感が魅力で大人から子供まで親しまれているメニューです。 

メニューと店舗

 「餃子の王将」は各店の地域性やお客様ニーズに応えるため、エリアごとのメニューをご用意しています。
 店内はオープンキッチンで、町の中華料理店のような雰囲気。客席は狭めで一人ないし少人数のサラリーマン客がさっと食べてさっと帰るような、回転率の高い店舗が多いようです。

 「大阪王将」は70種類以上の定番メニューに加え、"チキン南蛮”や期間限定で"オムライス”"カツ丼”といった餃子の王将にはない中華から少し外れたメニューも出すなど、バラエティーが豊かです。
 店内は照明がやや薄暗く、雰囲気のある落ち着いた雰囲気。グループ客や家族客がゆったり食事ができる店づくりを意識しているのでしょうか。

参考元:https://www.osaka-ohsho.com/menu/pdf/allergen.pdf

利用者比較分析

 では、それぞれの利用者層の分析をみていきたいと思います。

Knowns Biz調べ:7Journey
左:餃子の王将 右:大阪王将

 7Journeyの競合比較で見てみると、直近1年以内の利用である現在利用者層(ロイヤル+離反予備軍)は「餃子の王将」が上回っています。
 一方で利用経験がないものの意欲がある層(チャンス)や認知はしているが利用していない層(きっかけ待ち)は「大阪王将」の方が多い結果となっています。

 「餃子の王将」の利用率が高く、「大阪王将」は気になるけれど実際に利用したことがない人が多いようです。どこで差が出ているのでしょうか。​​

Knowns Biz調べ:デモグラ 左:餃子の王将 右:大阪王将

 さらにデモグラフィック分析も見てみます。
 上記グラフでは餃子の王将と大阪王将の回答割合を比較し、同一の場合は100、多い場合は青字、そして少ない場合は赤字で"特徴度"という値で表しています。

 このグラフから、「餃子の王将」は比較的女性の顧客の比率が多く、「大阪王将」は男性の顧客が多いようです。
 また年齢層は両ブランドを比較すると「餃子の王将」は10代〜20代・30代後半〜50代前半の割合がやや多く、「大阪王将」は30代前半と50代後半以上の割合が多くなっています。

Knowns Biz調べ:左:餃子の王将、右:大阪王将利用者の居住地

 購入者の居住地を"特徴度”で比較をすると「餃子の王将」利用者が関東・中部に多いのに対し、「大阪王将」利用者は西日本から南日本に多いです。

 どちらも関西発祥ですが、関東の店舗数を比べてみると「餃子の王将」は180店舗、「大阪王将」は89店舗なので店舗数が影響していそうです。

Knowns Biz調べ:ブランドイメージ 左:餃子の王将 右:大阪王将

 ブランドイメージでは「餃子の王将」が“コスパ・経済性”"ベーシック・定番的”"家庭的・安堵感”が上位にきていますが、対する「大阪王将」も上位3つは同じイメージがランクインしています。

「餃子の王将」どんな人が選ぶ?

 デモグラ分析では女性の購入者がやや多いと出ていましたが、どのような人が「餃子の王将」を選んでいるのでしょうか?
 全世代のサイコグラフィックでは両ブランドが似た結果だったので、今回はそれぞれ購入者の性別を絞って見ていきます。

Knowns Biz調べ:餃子の王将 現在利用者(女性)の個人価値観
Knowns Biz調べ:餃子の王将 現在利用者(女性)の社会価値観
Knowns Biz調べ:餃子の王将 現在利用者(女性)の消費価値観

 現在利用者×女性でサイコグラフィックを見てみると、個人価値観は"プロセス重視”"時間長者”"健康志向”な方が多く、社会価値観は"自分より家族優先”"専業主婦(主夫)エンジョイ”な方が多く出ています。
 また消費価値観は"お得感重視消費""良いもの良い価格消費”に次いで、生産者の顔を見ることを好む“トレーサビリティ重視消費”が高いことが特徴です。
 個人価値観や消費価値観から、「餃子の王将」の印象的なライブキッチンが利用者に好まれる一因になっているのかもしれません。

「大阪王将」どんな人が選ぶ?

Knowns Biz調べ:大阪王将 現在利用者(男性)の個人価値観
Knowns Biz調べ:大阪王将 現在利用者(男性)の社会価値観
Knowns Biz調べ:大阪王将 現在利用者(男性)の消費価値観

 現在利用者×男性でサイコグラフィックを見ると個人価値観は"倹約家”"時間にシビア”"物欲少なめ”な方が上位に出ています。
 社会価値観は"ゴーイングマイウェイ”"おりこうさん”"ワーカホリック”な方も多く、正反対のクラスターが並んでいるのは、さまざまな職業や環境の方に利用されているからかもしれません。
 そして消費価値観は品質・安全性を重視する"リターン期待型消費”が最も上位にあり、使った金額以上のリターンを期待する傾向がありそうです。
 また“ステータス消費”“良いもの良い価格消費”も上位にきているので、「大阪王将」のファンとして独自の価値を感じて利用している人も多そうです。

今すぐ自社・競合の顧客構造を見てみたい方へ

ニューコンセプトGYOZA OHSHO

引用元:GYOZA OSHO ブランドサイトより

 これまでの「餃子の王将」は、"旨い、早い、安い“という男性向けのイメージで完成されていたそうですが、更なる事業を拡大のため、女性をメインターゲットとした新コンセプト店「GYOZA OHSHO(ギョウザ オウショウ)」を立ち上げました。

 男性だけでなく女性が気軽に入店しやすいよう、内装、メニューまでこだわり抜いた店舗にするため、女性プロジェクトチームが立ち上げられ、社外ブレーンに女性インテリアデザイナーや料理研究家を起用。
 2016年に誕生し、2019年には東京第1号店がオープンしました。

 通常の「餃子の王将」は回転率の良さを重視した店舗つくりでしたが、「GYOZA OHSHO」は落ち着いた照明や音楽など、ゆったり過ごせる工夫が凝らされ、カフェのような雰囲気です。
 「GYOZA OHSHO」では、「餃子の王将」で提供されている料理のほか、通常店でもおなじみの「ジャストサイズメニュー」だけでなく、店舗限定のヘルシーでお酒に合う料理や彩りのよい料理なども充実しています。

 接客やコミュニケーションの時間も長く取れるので、スタッフがメニューの内容やおすすめの食べ方などを説明しながら、次の注文に繋げているそう。コースメニューの事前予約もあり、パーティーや団体利用など「餃子の王将」だけでは埋められない、幅広いニーズに応えています。

お持ち帰り需要と既存顧客へのアプローチ

引用元:大阪王将公式X(ツイッター)より冷凍食品
Knowns Biz調べ:調理済み冷凍食品の満足率ランキング

 前述した通り、「大阪王将」を運営する「イートアンドホールディングス」は餃子やチャーハンなどの冷凍食品の製造も行う食品メーカーです。 20年以上前から餃子の具材と皮を製造する工場を構えている同社は冷凍餃子部門のシェアは第2位、他の調理済み冷凍食品でも満足率が高く、Knowns Bizのランキングでも第4位に「大阪王将たれつき肉焼売」がランクインしています。

 コロナ禍にはお持ち帰り需要に着目し、ファミリー層の多い住宅地エリアに出店。売り上げ計画の2倍を達成したそうです!冷凍食品とお持ち帰り需要で躍進しています。

 またデモグラ分析でも男性がやや多く出ていましたが、2014年に営業利益が落ち込んだ後、既存顧客の中高年の男性にターゲットを絞った安さやボリュームを全面に押し出したメニュー展開も男性に人気の理由のようです。
 利用者の消費価値観であった"リターン期待型消費”にも合う戦略だと感じました。

 2023年4月には東京・渋谷の老舗街中華で提供されてきた人気メニュー「ルースー炒飯」を期間限定で大阪王将風にして販売。
 さらにガッツリと楽しみたい方向けに、肉・炒飯ともに2倍に増量する「肉だく」も可能だったそうです。(現在は販売終了しています)

引用元:大阪王将公式HPよりTOKYOルースー炒飯

Knowns Bizを使った資料を見てみたい方へ

まとめ

 「餃子の王将」利用者の特徴
・10代〜20代・30代後半〜50代前半、やや女性に人気
・皮が厚めでもちもち、野菜・香味野菜多めでガッツリした餃子派
・昔ながらの街中華を楽しみたい人
プロセス重視、トレーサビリティ重視消費の傾向

 「大阪王将」利用者者の特徴
・​​30代前半・50代後半以上、やや男性に人気
・皮が薄めでサクサク、ニラなし・肉が多めでジューシーだけどさっぱりした餃子派
・中華だけでなくさまざまなメニューを楽しみたい人
・さまざまな職業や環境の人に選ばれる、リターン期待型消費の傾向

 似ているようで真逆の戦略を取っている「餃子の王将」と「大阪王将」。上記を踏まえた上で改めてお店に行ってみても面白いかもしれませんね。

町中華・ガチ中華・高級中華

引用元:PR TIMES 株式会社リクルートによる「ホットペッパーグルメ外食総研」
ガチ中華についてのアンケート調査​​​​より

 株式会社リクルートの「ホットペッパーグルメ外食総研」の行なった調査(2022年6月実施)によると、中華料理は月に1回以上食べる人が75.8%と大人気なことがわかります。

 この調査によると、これまでも人気があった「ボリュームがあって、気軽に通える昔ながらの町中華」、「やや高級路線で、ゴージャスな内装や円卓の個室などがあるような高級中華」に加え、「日本人の好みに寄せていない本場の中華料理が味わえるガチ中華」の人気が高まっているそうです。

引用元:PR TIMES 株式会社リクルートによる「ホットペッパーグルメ外食総研」
ガチ中華についてのアンケート調査​​​​より

 3つのカテゴリーの中でも「ガチ中華」は行ったことはないが行ってみたい、という方が4割弱ほどいます。

 行ったことはないが行ってみたい層をみると、4割弱の「ガチ中華」に対し、1割強と押され気味の「町中華」ですが、餃子の王将や大阪王将に限らず、復刻メニューやTikTokを活用したPRやメガ盛りメニューなど行なっている町中華も多いようです。

日本各地のご当地餃子

 前回冷凍餃子の分析でも触れましたが、現在一世帯あたりの餃子支出額は宮崎県でした。しかし長年、首位争いを演じていたのが栃木県宇都宮市と静岡県浜松市で、みなさんも"宇都宮餃子”や"浜松餃子”を耳にしたことがあるのではないでしょうか?

 野菜あんがたっぷりの宇都宮餃子やキャベツや玉ねぎで甘めのあんが特徴の浜松餃子。その他にも日本全国には様々なご当地餃子が存在しています。
 餃子は日本人にとっての国民食の代表かもしれませんね。

引用元:NTT FINANCE Traceより全国ご当地餃子マップ

筆者のひとこと

 「餃子の王将」は私の行動範囲の最寄り駅近くなどにあり、学生時代から利用していたのですが、「大阪王将」を初めて食べたのはベトナムに住んでからです。
 しかも食べたのは日本の店舗ではなくバンコク旅行中で、どうしても餃子が食べたくてデリバリーオーダーしました。(笑)

筆者撮影:バンコクでオーダーした大阪王将の餃子

 個人的には「餃子の王将」よりも肉感があって、たれがラー油ダレでビールが進んだ記憶があります。(個人的にはどちらの餃子も好きなので選べません笑)
 「大阪王将」は海外に台湾・中国・タイ・シンガポールに展開しているそうです!

 つい先日には台湾と中国でも大阪王将の冷凍餃子が販売されたそうです。

 また「餃子の王将」も台湾に進出しているそうです!

 本場中国で主に食べられているのは水餃子や蒸餃子で、それらを残った際に焼き餃子にして食べるので、焼き餃子は残り物のイメージがあるそうです。
 日本の餃子は中国から伝わった後に独自に変化していったようで、中国ではニンニクは具に入れず薬味として添えたり、生ニンニクをかじりながら食す、タレは黒酢と醤油または黒酢のみを使うなど、私たちが食べている餃子とは様々な違いがあるようです。
 また主食なのでご飯と一緒には食べないそう!

 どんどん世界進出している日本式の餃子。日本クオリティーの餃子がもっと手軽に世界中で食べられる日も近いかもしれません…!

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