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村上春樹『騎士団長殺し』とクラシック音楽
今日は村上春樹の『騎士団長殺し』について話します。
感想をPostしたいところですが、ネタバレする可能性があるため、ここでは、この小説に印象的に取り上げられていたクラシック音楽について書いてみます。
実は、私は20年以上のクラシックマニアです。
極めてマニアックな話が延々と続きますし、文章のオチもないので、関心のない方はこの時点で離脱することをお勧めします。
この機会にクラシック音楽にはまってみるのも一興です。
村上春樹は作品中に音楽を印象的に使うことで知られています。
『1Q84』ではヤナーチェクの『シンフォニエッタ』が冒頭に使われています。また、『色彩を持たない多崎つくる』では、リストの『巡礼の年』が使われています。
村上春樹独特の表現で曲や演奏のことが書かれており、私のようなクラシック音楽ファンは毎回それを楽しみに読んでいます。
もっとも、ジャズや50-60年代(彼の青春時代)ロックも多く使われています。
私は著者と違ってそこまで広い音楽的趣味を持ち合わせていませんので、ジャズやロックが使われた時は残念に思い、クラシックが使われると喜びます。氏の小説には、そのあたりを一喜一憂しながら読む楽しさもあります。
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本作においては、リヒャルト・シュトラウスの『薔薇の騎士』(ショルティ指揮)が多く取り上げられています。
おそらく、私のようなクラシックファンはここで相当に驚愕したはずです。
シュトラウスの『薔薇の騎士』は名作オペラとして非常に有名ですが、クラシック音楽評論家の間では、一般にカラヤン指揮かエーリッヒ・クライバー指揮が勧められており、ショルティ盤は一顧だにされなかったからです。
奇異に思われるかもしれませんが、クラシック音楽ファンは、少数の評論家が推薦盤として取り上げているのを調べ、それを買い集めて楽しむというのを趣味にしている傾向があります。
CDショップに行くと、書籍やネットで得た情報をメモにして、そのCDを探しているおじさんがたくさんいます。
今頃、ショルティ盤がバンバン売れているかもしれません。村上春樹現象と言えますね。
『薔薇の騎士』は有名な曲ですが、実は私は何度もチャレンジした結果、「好きではない」曲として片づけていました。
いかにマニアとはいえ、すべてのクラシック音楽を気に入るわけではありません。
いやむしろ気に入る曲や演奏は数少ないのです。素晴らしい曲や演奏を追い求め続け、ごくまれに本当に好きな曲や演奏と巡り合うのが、この趣味の醍醐味と言えます。
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話は戻りますが、私が聞いたのはカラヤン盤とクライバー盤で、ショルティ盤ではありませんでした。
っていうかショルティ盤は完全にノーマークな演奏です。おそらく多くのクラシック音楽ファンにとってもノーマークで、この世評の低い盤を取り上げた真意を著者に確認したいところです。
そういえば、著者はかつて小澤征爾との対談本を上梓しており、それも刊行早々に買ってむさぼり読みましたね。
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私がバイブルとして、数回の引っ越しに際しても手放さずにいる本が『ノルウェイの森』です。
この中でもクラシック音楽が取り上げられています。
中でも、ブラームスのピアノ協奏曲2番の取り上げられ方は印象深く覚えています。第3楽章冒頭のチェロの独奏を玲子さんがギターで弾きながら、「バックハウスとベーム」と言います。
これは、カール・ベームが指揮、バックハウスがピアノ、オーケストラがウイーンフィルの1960年代の演奏のことを指します。
知らないと絶対にわからない一節です。こういうマニア向けのセリフを渉猟していくのも、村上春樹の本を読む楽しみの一つです。
この演奏はこの曲の絶対的名盤として認識されており、私も20年来の愛聴盤です。
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本作においては、ほかにもモーツアルトの『ドンジョバンニ』も重要な位置を占めます。
モーツアルトの有名なオペラは、ほかに『魔笛』『フィガロの結婚』などがあり、どれも素晴らしいです。私は、いずれもカール・ベーム指揮のものを持っており、愛聴しています。
思えば、大学時代に一番最初に買ったオペラのCDが『フィガロの結婚』でした。3枚組で6400円。貧乏学生だった当時、清水の舞台から飛び降りる気持ちで買ったことを覚えています。
いざ聞いてみると本当に素晴らしく、夢中で聞きました。たかが6400円ですが、人生を変える出会いであり投資であったと思います。
ほぼ同時期に、上記ブラームスのピアノ協奏曲2番も購入しました。これらの名盤を推薦していた評論家が、数年前に物故されました。氏の推薦盤をメモしてCDショップに行っていたものです。ご冥福をお祈りします。
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毎日数時間はクラシック音楽を聴いていますので、もはや人生の何分の一かがクラシック音楽によって出来上がっていると言っても過言ではありません。
クラシック音楽については書ききれないので、今日のところはこれで筆を擱きます。冒頭に宣言した通り、オチなしです。
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