きわプロジェクト

きわプロジェクトでは、「都市像と自然」の関係を思索・知覚する方策を模索しています。 公開トークで登壇予定のゲスト、プロジェクトメンバーとの対話を継続的に進めており、この「ダイアローグ」では、その内容を公開していきます。 HP: http://kiwa-project.org/

きわプロジェクト

きわプロジェクトでは、「都市像と自然」の関係を思索・知覚する方策を模索しています。 公開トークで登壇予定のゲスト、プロジェクトメンバーとの対話を継続的に進めており、この「ダイアローグ」では、その内容を公開していきます。 HP: http://kiwa-project.org/

最近の記事

きわダイアローグ15 向井知子 3/3

◀︎◀︎◀︎◀︎◀︎最初から ◀︎◀︎◀︎前へ 3. 思考や感覚の断片が、立体性を帯びてくる/// 向井:2021年の「きわにたつ」「きわにふれる」は確かにどちらも特別な空間になった反面、あれでよかったのかなという気持ちもありました。 実は、「きわにたつ」「きわにふれる」では、これまでの制作とは異なり、映像の素材となった写真の加工において、それがどこの場所であったかわかる程度の原形を留めていました。もちろんこれまでの制作においても、その土地にフォーカスした地域プロジェクト

    • きわダイアローグ15 向井知子 2/3

      ◀︎◀︎◀︎前へ 2. 自己効力感をもって共鳴する/// ――ホムブロイヒで展示するテキストの上には、ホムブロイヒの敷地内で拾ったものを置くつもりとおっしゃっていましたね。ドイツで展示をされるので、ドイツの方に馴染むものを置くのだろうなとは思うのですが、ドイツの人の季節の移り変わりに対する感覚は日本の人とあまり変わらないんでしょうか。タケノコを見て春だなと思うような、季節を感じるドイツならではのものがあるのかなと。 向井:日本人だって今四季を感じるのはなかなか難しいで

      • きわダイアローグ15 向井知子 1/3

        ホムブロイヒ島美術館での展示に向けて /// 1. 移動や旅をしなくても、季節の変化がつくられていく/// 向井:現在、わたしが試みているのは、毎日刻々と変わってしまう状況の中で、小さな自然を自宅に取り込み、自分の住処を住みやすくすること、自分の住処の空間をお世話するということをやっています。普通は愛でない、目を向けられないようなものを大切なものとして扱うというか、例えば雑草をガラス瓶に入れたり、自分たちが食したタケノコの皮を乾かしたりしたものを玄関のスペースに飾ってい

        • きわダイアローグ14 齋藤彰英×鈴木隆史×向井知子 6/6

          ◀︎◀︎◀︎◀︎◀︎最初から ◀︎◀︎◀︎前へ 6.「これもありだね、あれもありだね」:共通性の感覚のすり合わせ(質疑応答から)/// 来場者③:みなさん、石を「ああでもない、こうでもない」と言いながら置かれたとおっしゃっていましたよね。その「ああでもない、こうでもない」という感覚って、たぶん各々にあると思うんです。制作において、どこを落としどころにしたらいいのか悩まれませんでしたでしょうか。わたし自身はそれで悩むことが多い。わたしはピアノを弾くのですが、好みと全く離れて

          きわダイアローグ14 齋藤彰英×鈴木隆史×向井知子 5/6

          ◀︎◀︎◀︎◀︎◀︎最初から ◀︎◀︎◀︎前へ 5. 水盤に意識を飛ばす(質疑応答より)/// 向井:そろそろ会場にいらっしゃる方々にもお話をお伺いできればと思います。ご質問やご感想などがあれば、ぜひ教えていただけますでしょうか。 来場者①:貴重なおをありがとうございました。すべてはまだ観きれていないのですが、東長寺に来てテキスト読むことで、いろいろ感じたことがありました。新宿という街と四谷という街の間に挟まれているこのお寺が、どこのきわにあるのかなと感じました。なぜこ

          きわダイアローグ14 齋藤彰英×鈴木隆史×向井知子 5/6

          きわダイアローグ14 齋藤彰英×鈴木隆史×向井知子 4/6

          ◀︎◀︎◀︎◀︎◀︎最初から ◀︎◀︎◀︎前へ 4.生態系の中の一部である人間の、生命行為としての制作/// 向井:あるとき、ダイアローグパートナーの自然科学者から「あなたの制作はバイオグラフィーだと思う」と言われて、「そうかな?」と思ったことがあるんです。「bio」には生命や生態という意味もありますが、「biography」は人間の歴史、個人史を指すことが多い。わたしは齋藤さんとは逆で、作品制作に対して個人的な部分とはかなり引き離しています。自分も実は風景の中にいなくて

          きわダイアローグ14 齋藤彰英×鈴木隆史×向井知子 4/6

          きわダイアローグ14 齋藤彰英×鈴木隆史×向井知子 3/6

          ◀︎◀︎◀︎◀︎◀︎最初から ◀︎◀︎◀︎前へ 3.言葉をそのまま、どう空間に転写していくのか:  人々が織りなす風景がすごく演劇的である/// 向井:写真家には、フィールドワークをするなかで撮った写真から選ぶという行為を大切だとする方が多いと思います。齋藤さんもこれだけいろいろ回って、相当数の写真を撮っているので、そこから何かを見つけていくのかなと思っていたのですが、「全部が決まらないと撮れないんです」とおっしゃっていた。すごく真面目で慎重な方なので、少しでも自分の感覚

          きわダイアローグ14 齋藤彰英×鈴木隆史×向井知子 3/6

          きわダイアローグ14 齋藤彰英×鈴木隆史×向井知子 2/6

          ◀︎◀︎◀︎前へ 2. 齋藤彰英の写真行為/// 齋藤:僕は以前からリサーチをして撮影するという方法を取っていたわけではありません。例えば、2012年に制作した「GPS」という作品について。僕は静岡県の出身なのですが、大学院を修了したあとに神奈川県の鴨志田にある横浜美術大学に勤めることになりました。縁もゆかりもないところで働いていくことが決まったとき、「ここで暮らすにあたってもう少し実感をもちたい。どうしたらいいのかな」と考えました。地図を見れば、鴨志田が神奈川県のどこに

          きわダイアローグ14 齋藤彰英×鈴木隆史×向井知子 2/6

          きわダイアローグ14 齋藤彰英×鈴木隆史×向井知子 1/6

          2023年3月3、4、5日、東長寺においてパノラマ映像とインスタレーションによる展示「きわにもぐる、きわにはく」を開催いたしました。その際、展示関係者3名(向井知子、齋藤彰英、鈴木隆史)によって行われた公開トークを編集したものを、全6回の「きわダイアローグ14」として公開いたします。 /// 1.  展示「きわにもぐる、きわにはく」の経緯/// 向井:本日は「きわにもぐる、きわにはく」の公開トークにお越しいただきありがとうございます。本日東長寺・文由閣のパノラマ映像を制

          きわダイアローグ14 齋藤彰英×鈴木隆史×向井知子 1/6

          きわダイアローグ13 齋藤彰英×鈴木隆史×向井知子 3/3

          ◀︎◀︎◀︎◀︎◀︎最初から ◀︎◀︎◀︎前へ 3. 重なりに残る痕跡/// 向井:先日藤井一至 *1 先生(土壌学者)がテレビで、1センチの地層が溜まるのに100年かかるとおっしゃっていたんですね。水場の取り合いで戦争になるというのはよく聞く話ですが、実は土壌の取り合いが戦争になることもあるそうなんです。今戦地になっているウクライナの辺りも、土壌がいいという話があるらしく……。水に視点を置きがちですが、土壌の奪い合いも地球上で起こっているんですって。土壌はなかなか蓄積し

          きわダイアローグ13 齋藤彰英×鈴木隆史×向井知子 3/3

          きわダイアローグ13 齋藤彰英×鈴木隆史×向井知子 2/3

          ◀︎◀︎◀︎前へ 2.デジタルカメラによる撮影行為とイメージの現れ/// 齋藤:僕は作品のためにカメラを扱うようになったのはデジタルから。だから、紙焼きみたいな行為はしていないんです。若い頃は、別に表現者になろうとは思っておらず、むしろ商業的なデザインをやろうかなと思って多摩美術大学を受験しました。でも結局入ったのは、情報デザイン学科の情報芸術コースという、よく分からないところ。ざっくり言うと、既存の他の学科とは違うことをやる学科、といった感じでした。あるいは、やることが

          きわダイアローグ13 齋藤彰英×鈴木隆史×向井知子 2/3

          きわダイアローグ13 齋藤彰英×鈴木隆史×向井知子 1/3

          1. 地層の物語性の紡ぎ方/// 齋藤:今、自分が作品として興味があるのは、夜、川底を長時間露光で撮ることです。川底には意外と地層が露頭しているんです。日中だと太陽光が反射して、水面の動きのほうに意識がいきがちなので、あえて夜に撮る。そうすると、下にある層というか、レイヤーが見えてくるんです。水面のきらめきがなくなって、川底が見えるわけです。そうやって水の中のさらに下のところに触れるように、今回の展示でも何かできるといいなと思っています。 そういえば以前、夜の撮影で少しず

          きわダイアローグ13 齋藤彰英×鈴木隆史×向井知子 1/3

          きわダイアローグ12 齋藤彰英×向井知子 3/3

          ◀◀◀◀◀最初から ◀◀◀前へ 3. 残らないものの美学/// 齋藤:僕が美術に興味をもち始めたきっかけについては話していなかったですよね。まず一つは子どもの頃よくテレビでやっていた「裸の大将」が挙げられます。それからもう一つ、母方の祖父の影響が強くあると思っています。おじいちゃんは体が大きく、よく散歩に行く人でした。彼は散歩から帰ってくると、家にある大きなホワイトボードにその日見た風景をサラサラサラッと描いていました。散歩から帰ってきて絵を描いて、夕飯を食べ終わるともう

          きわダイアローグ12 齋藤彰英×向井知子 3/3

          きわダイアローグ12 齋藤彰英×向井知子 2/3

          ◀◀◀前へ 2. 自分の感覚を想起させるためのスイッチ /// 向井:わたしが大学に入った頃って、美大全盛期だったんです。めちゃくちゃ絵がうまかったり、つくるのが何でも上手だったりする同級生の中にいたからか、わたし自身は手を使わず、目の世界に行ってしまいました。例えばわたしがスタディをすると、立体的なものもできないだろうか、材料を集めて形にできないだろうかなどと思いつつも、出てくるのはきっと視覚的なもの。作品としてつくっているのは空間ですが、出てくるのはイメージばかりです

          きわダイアローグ12 齋藤彰英×向井知子 2/3

          きわダイアローグ12 齋藤彰英×向井知子 1/3

          1. 位相が切り替わる /// 向井:今回、ダイアローグから何か事柄を生み出せるのかということを試してみたくて、齋藤さんをお誘いしました。齋藤さんは以前「自分の中で体を外界に同化させていく、あるいは外界を自分の中に見つけていくという肌触りの実感に対して、写真家(もしくは写真には)テキストが必要なんです」とおっしゃったでしょう。わたしはそれに違和感があったんです。例えば「東京礫層:Tokyo Gravel」の展示では、そこにある写真に対してテキストを書かれていましたよね。でも

          きわダイアローグ12 齋藤彰英×向井知子 1/3

          きわダイアローグ11 齋藤彰英×向井知子 3/3

          ◀︎◀︎◀︎◀◀最初から ◀︎◀︎◀︎前へ 3. 水がつくり出した景色である地形/// 向井:そういえば、先日息子に「猿人に今の知識や技術を教えたらどうなると思う?」と聞かれたんです。「手を使う」テクノロジーに関しては、明らかに昔の人のほうが長けていると思っているので、「彼らの知能は今の人と同じくらいか、むしろもっと優れているかもしれないよ」と答えました。今の人間は、機械を使ったり計算したりすることに関しては進歩しましたが、例えば、今、急に「ここに穴を掘れ」と言われたとし

          きわダイアローグ11 齋藤彰英×向井知子 3/3