〈旅と食〉フィンランド・ヘルシンキ乗り継ぎ時間の市内散策
3年ほど暮らしたロンドンを離れる日、ロンドン・ヒースロー空港から東京・羽田空港への移動に利用したのは、フィンエアー・ヘルシンキ経由の乗り継ぎ便。この記事では、5時間の乗り継ぎ時間を利用して、ヘルシンキ市内を散策した時の様子を紹介します。
ちなみにこの〈旅と食〉シリーズでは、訪れた場所についての内容とあわせて、ふだんグルテンフリーかつマクロビオティック(プラントベース)という、自分のカラダに一番合うと感じている食生活を中心に過ごす私の目線で、旅先の食事情についても触れています。
フィンランドに到着。空港で過ごすか?街へ出るか?
ロンドンからヘルシンキまでの飛行時間は2時間50分。時差は2時間なので(フィンランドはイギリスより進んでいる)朝早めの便で出発すると、昼ごろ到着します。
この日の乗り継ぎ時間は5時間。空港でゆっくり過ごすか、ヘルシンキ市内へ出かけ散策するか、とても悩みました。
ヘルシンキ・ヴァンター国際空は、飲食店やショッピングのエリア以外に、無料で使える休憩エリアなど快適に過ごせそうなサービスも充実しています(空港案内 Services & Facilities の項目「Art and attraction」を活用)。
また、機内から空港内へ移動すると、すっきりと洗練された印象の中に木の温もりを感じる空間が広がり、一気にフィンランドへ降り立ったことを実感!さすがデザイン大国そして世界の幸福度ランキング1位常連国なのだなぁと感じる要素は、空港のサービスや環境からも味わえるような気がします。そのため、短い散策時間のために街まで移動するのは勿体無いようにも思えてくる。
しかし市内行きを決定づけたのは、この日の到着時間と天候でした。
飛行機に遅延はつきものですから、この日も40分ほど遅れてロンドンを出発。しかし、意外にも到着はほぼ定刻通りだったのです♪
5時間の乗り継ぎ時間から、ヘルシンキ中心部までの往復移動と次便の搭乗準備を除くと、散策時間は1時間半以内が無難(念のため余裕ある時間設定)。もしヘルシンキ到着が15分以上遅れたら、空港で過ごそうと考えていました。
また、北国フィンランドの冬は長いので、3月下旬でも氷点下になることを予想し、服装は念のため真冬仕様で搭乗。この日は到着すると、ラッキーなことに青空が見えるし最高気温は5℃の予報です。寒過ぎずお天気も良いならチャンス!とばかりに街を目指す。
出国手続きを済ませ向かったのは、空港内にある手荷物を預けられるお店「Excess Baggage Company」です。街では効率よく動きたいので、こちらで身軽に。
短時間利用の料金設定もあって、少々割高だけれどありがたい。
⚠︎空港内の移動・出国手続き・荷物預け・公共交通機関での移動にかかる時間は、フィンランドの繁忙期には状況が異なる可能性大です
ヘルシンキ散策は1時間半!市内へ移動
空港からヘルシンキ市内への移動は、バス・電車・タクシー3つの方法があります。この時は、バスが電車より早く着到着する検索結果だったので、バス乗り場へ向かいました。
10番乗り場から発つ600番バスが、ヘルシンキ中央駅行き。所要時間は約40分です。
乗車券の入手方法を調べると、券売機・キオスク・HSLアプリと3パターンあるよう。それぞれ、使い方が異なるので(打刻・有効時間など)一番シンプルに感じた「券売機」パターンを選択してみました。なお乗車時にバスの運転手さんから買うことは出来ないそうで、事前に購入する必要があるとのこと。
乗車前、バス停近くにある券売機を利用しました。レシート状の乗車券が出てきます。※券売機で買う場合、購入時点から有効時間がスタートするので、乗車する直前の購入が◎
レシート状乗車券の場合は、運転手さんに見せ乗車。もしチケットコントロールがあれば提示する必要があるので、目的地へ着くまで紛失しないよう慎重に取り扱います。
路線バスなので停留所ごとに止まります。大きな荷物を持って乗る場合は、混み合う時間帯を避けると利用しやすそう。
車窓の景色を楽しんでいると、ヘルシンキ中央駅に隣接する広場「Rautatientori」へ到着。
ヘルシンキ中央駅に寄り道
最初の目的地へ徒歩で向かいつつ、ヘルシンキ中央駅に寄り道してみます。
とても重厚感ある建物で、正面の両側に立つランプを持った大きな石像がインパクト大。この街には2010年に一度訪れたことがあって、中央駅は強く印象に残っている場所のひとつです。中へ入るとアーチ型の天井は高く、広い窓から柔らかな光が差し込む開放感ある空間。目を引かれる美しい照明。初めて歩み入った時「わぁ、素敵!」と感じた記憶のままで嬉しくなる。少しの間ノスタルジーに浸ります。
ヘルシンキ中央図書館Oodi(オーディ)へ
今回、短い散策時間の中でもぜひ訪れてみたかったのが、2018年にオープンし、翌年には国際図書館連盟(IFLA)の 「Public Library of the year award(公共図書館賞)」に選ばれた、ヘルシンキ中央図書館 Oodi。ヘルシンキ中央駅から5分ほど歩いて到着です。
1階にはギャラリー、映画館、イベントホール、カフェ&レストランなどがあります。見通しよい空間が優しい光で満ちている。波打つ木の天井も印象的。
Oodi(オーディ)の螺旋階段は「Omistuskirjoitus(奉納)」というタイトルのインスタレーション・アート。内側には、「図書館を誰のために捧げるべきか」をテーマに市民から集められた様々な言葉が描かれています。(どんな言葉の内容かこちらで紹介されていて、このページは日本語訳で見られる)
このアートは「図書館はすべての人のものであること」「基本的人権は誰にでも平等に適用されるものであること」などを表現しているのだそう。
2階の仕事・学びにまつわるフロアへ移動。
この階では撮影禁止マークをいくつか見かけたので画像はありませんが、デスクにPCが並び(Adobeなどソフトウェアはインストール済みらしい!)、大型のプリンタ、レーザーカッター、3Dプリンタまで設置されていることに驚く。
他にも会議室、個室、写真・ビデオの撮影専用スタジオ、レコーディング機材が揃った音楽スタジオ、料理教室や会食ができるキッチン、ゲーム部屋など、公共の施設とは思えないレベルの充実ぶりです!
向こう側には、階段状のワークスペースでくつろぎながら作業する人々の姿。もしこの街の学生なら、この図書館には毎日でも通いたいなぁ♪
3階は「本の楽園」をイメージしたフロア。訪れた人が好みの態勢でくつろぎながら読書や作業できるよう、工夫が散りばめられていて……魅力的すぎる!
誰でも本を取り出しやすく視界を遮らない高さの棚が並び、約10万冊の本・資料が収められています。
夏季に解放されるバルコニーでは、街の景色を楽しみながらカフェタイムもよさそう。この場所で多くの人たちがデッキチェアを並べくつろぎながら、北国の短く貴重な夏を楽しむのでしょう。向かい側にはフィンランドの国会議事堂 Eduskuntatalo が見えます。
曲線が美しい天井。床には高低差があり、場所により景色の印象も変化します。この図書館なら仕事や勉強中の気分転換もしやすそう。
時間が足りずじっくり見学はできなかったけれど、向こう側には子どもエリアもあって、読書に適した環境はもちろん遊び場も整っている。また、子ども向けイベントも充実しているようです。(子どもエリア詳細はこちら)
そろそろ出ようと思ったところに、お仕事中のロボットさんがやって来ました。返却後の本を3階まで運んでくるのだとか♪
地下にあるジェンダーフリートイレも素敵と聞くし、レストランで食事もしてみたかった。あと、国会議事堂側からの建物フォルムも見たかったのだけれど、別の場所へも行きたいし時間切れ。心の「再訪予定リスト」に追加し、ここを後にしました。次回はサマーシーズンに来てゆっくり過ごしてみたい!
基本情報
ヘルシンキ中央図書館Oodi
公式サイト(英語ページ):https://oodihelsinki.fi/en/
所在地:Töölönlahdenkatu 4, 00100 Helsinki
アカデミア書店とカフェ・アアルトへ
ヘルシンキ中央図書館から徒歩で約10分移動し、ヘルシンキの中心部にあるAkateeminen Kirjakauppa(アカデミア書店)ヘルシンキ店にやって来ました。フィンランドが生んだ、20世紀を代表する近代建築の巨匠 Alvar Aalto(アルヴァ・アアルト)によって設計され完成したのは1969年。
私にとっては念願の再訪。過去の滞在時、店内に入ってすぐ体調が悪くなりじっくり見学できなかったでの、今度こそ!建築好きな夫は、初上陸のフィンランドでアアルト作品を体験できることに期待を膨らませている様子。
建物の外観とは異なる印象の書店内部。開放感ある吹き抜けのセンターホールに、3つ並んだ特徴あるカタチの天窓から自然光が入り、明るく心地よい空間です。ホールを囲む白い大理石も美しい。
書店の2階部分にCafé Aalto(カフェ・アアルト)があります。
このカフェ誕生のルーツは、アアルトが設計し1955年に完成したラウタタロ(Rautatalo)というオフィスビルの中にあった人気カフェ。しかしラウタタロの経営悪化によりカフェも惜しまれつつ閉店したのだそう。後に建てられた書店の中にカフェを開くことになった際、ラウタタロのカフェで使っていたアアルト家具も使用できることとなり、アアルトの名が付いたカフェは1986年にオープン。今に至るわけです。このカフェのインテリアには、アルネ・ヤコブセン作の椅子も使われていて、フィンランドとデンマークの巨匠夢のコラボも魅力的。
まだお昼ご飯を食べておらずお腹ぺこぺこ(まもなく15時)、ですが店内でゆっくり過ごす時間はなさそうだったので、持ち帰りをオーダーすることにしました。せっかくフィンランドに来たのですから、ご当地グルメをいただきたい!
過去のおいしい記憶から、国民食とも言われるお米のパイ「karjalanpiirakka(カルヤランピーラッカ)」はぜひまた食べたいなぁ。店員さんに尋ねると、嬉しいことにグルテンフリー仕様と通常仕様の2種類あるとのこと!自分用にグルテンフリー、夫用に通常のを1つずつ。もっと食べたいと言う夫は、北欧らしくシナモンロールも追加。
ドリンクはコーヒー。尋ねると植物性ミルクのオプションがあったので、私はオーツミルクでカプチーノを作ってもらうことにしました。夫はアメリカンで。
定員さんたちは優しく英語で丁寧に対応してくれたし、カフェ・アアルト公式サイトにはメニューの日本語ページがありました(下へスクロールすると出てきます)。メニューに書かれていない情報もあるので、グルテンフリーやプラントベースの食生活をしている人は、注文時に尋ねてみるのがよいでしょう。
店舗情報
Akateeminen Kirjakauppa アカデミア書店ヘルシンキ店
公式サイト(英語ページ):https://www.akateeminen.com/en/
所在地:Keskuskatu 1, Pohjoisesplanadi 39, 00100 Helsinki
Café Aalto カフェアアルト
公式サイト(日本語ページ):https://www.cafeaalto.fi/home-jp
所在地:アカデミア書店ヘルシンキ店内
空港へ戻る
書店ではついゆっくり本を眺めたくなるので、あっという間に時間が過ぎてしまいました。ヘルシンキ大聖堂へも行く予定だったけれど断念。屋内マーケットも訪れたかったな。でも、飛行機に乗り遅れては本末転倒なので、後ろ髪を引かれつつヘルシンキ中央駅のバス乗り場へ向かいます。
散策スタート地点、Rautatientori 広場へ戻って来ました。空港行きのバスは、中央駅の建物側にたくさんのバス停が集まっているエリアがあり、そこから出ています。600番バスを探す。
乗車前、また乗車券を購入します。が!ここで予想外のハプニング。バス停近くの券売機が故障しており買えないではないか。周辺をウロウロし別の券売機を探してみる。設置されている券売機が意外と少なくて、中央駅建物の西側にあるバス停付近でやっと機能している券売機を見つけ、無事に購入できたのでした。
あとで冷静になってから考えると、中央駅構内のキオスクでも乗車券を買えたことに気付く。
⚠︎ただし、キオスクで買えるのは券売機のレシート状乗車券とは使い方が異なる別仕様のものです
思わぬところでタイムロス。なお、夕方の路線バスは帰宅時間と重なり道が混むと、空港までの所要時間が40分以上かかる可能性もあります。あらためて、余裕ある時間設定で散策してよかったと感じました。
無事にバスに乗り、空港へ向かいます。途中の橋を渡る際、窓の外を見ると入江全体が凍結していて驚く。フィンランドに春が訪れるのは、まだまだ先のようです。
フィンランドの国民食カルヤランピーラッカをグルテンフリーでいただく
とってもお行儀が悪くて申し訳ないのですが、お腹が空き過ぎてもう耐えられないので、バスの中でスナックタイム。笑
先ほどCafé Aaltoで購入した、グルテンフリー仕様のカルヤランピーラッカをいただきます。
カルヤランピーラッカ(カレリアンピーラッカ/カレリアパイ)は、カレリア地方のパイという意味で、ライ麦粉と小麦粉で作った生地を薄くのばして、ミルク粥を包み焼いたパイのこと。元々はカレリア地方の伝統料理だったようですが、現在はフィンランド全域・ロシア北部・エストニアなどで食べられているのだそう。
グルテンフリー仕様の場合は、生地作りに使う粉を変更して焼き上げたのでしょう。お店の人に何の粉で代替したのか聞いてくればよかったと後悔。通常仕様と大差ないように感じます。この素朴な味わいで空腹が満たされシアワセ♪
夫もフィンランドらしいおやつタイムを楽しんでおりました。
予定通り空港へ戻ってくることができ安堵。市内散策前に預けた荷物を受け取りに行って、出発ロビーへ向かいます。
もう一度保安検査を通過し、日本行きの搭乗口へ移動。
空港内のショップを見たり、カフェでひと休みする時間は無かったものの、搭乗前に荷物を整えたりトイレへ行く時間の余裕はありました。
呼吸も整えてから搭乗し、いよいよ日本へ向けて北欧の空へ旅立ちます!短時間ではありましたが、ヘルシンキの街を散策できてよかった。新しい体験・発見そして思い出との再会。いつかまた、この街へ戻ってこようと思います。
※この記事は2024年3月27日訪れた当時の情報です。
それでは、また!
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