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違いがわかる大人になる方法

まずは、一つの違いだけで試してみてください。

昨日、珈琲豆屋さんで豆を買ったのだが、その時に店長さんに言われた言葉。
珈琲豆には詳しくないので、毎月その店が推している目玉商品を毎回買うようにしているのだが、今月はエルサルバドルの豆が出ていた。

いつも通り、その目玉商品を注文したが、すかさず店長さんからは、「2種類の焙煎がありますが、どちらにしますか?」との質問。
違いもわからないし、前回は1種類だけだったようなと思っていると、店長さんが丁寧に説明してくれた。
どうやら、1種類目はハイロースト(中煎り)といって、今回の豆では酸味が出てオレンジのような風味があるとのこと。2種類目はフレンチロースト(深煎り)といって、苦味が出るのに加えてオレンジの皮に近い風味があるとのこと。

パッと聞いた感じでは、これまでの自分の経験から酸味のある珈琲にあまり良い印象がなかったので、「フレンチロースト(苦味のある方)」を注文した。
そしたら何を察したのか、店長さんから、
「ハイロースト(酸味のある方)が試飲できるので、それを飲んでからでも遅くないですよ」と紙コップに入ったハイローストの珈琲を渡してくれた。

実際に飲んでみると、これまで飲んだことがないような美味しさで、教えていただいたような酸味も感じられる味わいだった。

結局、1種類に決めることができず、両方買ってしまった。

違いを見るときは、1つの要因だけに絞る

珈琲豆を焙煎してもらっている間、せっかく2種類も購入したので、何か知識を持って帰ろうと思ったのか、店長さんに「この2種類の珈琲豆それぞれで淹れ方とか変えたほうがいいんですか?」と聞いてみたところ、

同じ淹れ方にしてください

と即答された。

あれ、豆や焙煎によって淹れ方を変えた方がいいって本には書いてあったけど、と思っていたが、

「まずは、同じ淹れ方をして、2種類の焙煎の違いを味わってみてください。その後は、それぞれの種類の豆の挽きの荒さを変えてみて、どういった変化があるか順番に試してみてください。
よく初心者の方で、焙煎を変えて、挽き方を変えて、お湯の温度を変えて、と同時に色々試す方がいますが、結局どの要因が影響して味が変わったのか分からなくなり、沼にハマったようになってしまうんです。
まず、違いを試すのであれば、変える要因は1つだけにしてしてください。
豆の挽きの荒さを変えたり、お湯の温度を変えることで、苦味や酸味も変化しますが、方法によって変わり方が違います。
最初は、淹れ方は変えずに同じ淹れ方を繰り返すことで、淹れ方の練習にもなります。」

これぞまさに研究だなと思った。

自分は本から知識として得ていただけで、実際にそれを体験していないまま知った気になっていた。このまま、知らない間に本で読んだことを他人に説明さえしていたかもしれない。

すでに本に書かれていることを実際に確認する行為というのは、一見時間の無駄なような思えるが、初心者にとっては、先人が通った道を通ることは、基礎や本質を掴むためにも必要なことかもしれないと思った。

その基礎の部分を知らないまま、いろいろなものに手を出そうとしているのを店長さんは止めてくれたのかもしれない。

いろいろなものに手を出すのが良いと言われる風潮

今回の店長さんの言葉は、珈琲に限らず他の日常生活にも当てはまっていることがあった。
自分はここ数年で勉強しないと世の中の流れについていけないと危機感を持っていたことがあり、色々な分野の勉強をしようと手を出してきた。

英語や会計やプログラミングなど、自分の興味を持ったものを買っていたのだが、実際には読み進められていない本が増えていったり、進捗のないオンライン教材が増えていく一方だった。

全てが終わる気配もなく、ただただお金だけが減っていく。

あらゆる広告の中で行動力という言葉が流れているが、その言葉を鵜呑みにして結局何も行動できずにいる。これでは以前の自分から何も違わない。

これまでの自分から変わろうとするには、まずは1つずつ行動を変えないといけないのかもしれない。同時に色々試すのではなく、まず興味のあること1つを試してみて、それがこれまでの自分とどう変わるのか、研究することが必要かもしれない。

一つの違いをじっくりと味わい、基礎を磨くには時間がかかる。すぐに投げ出すのではなく、違いがわかるまで試してみて、自分に合わないとわかってからやめるのでも遅くない。

違いを知ることは本質につながる

そうやって違いを知っていくことで、自分に合うものは何なのかを知ることにもつながるので、違いを知るということは本質を知ることかもしれないと思った。

「本質を知る」というと、砂場の中から何かを探し当てるような感覚があるが、
「違いを知る」ことは、砂から何か枠組みが形作られるような感覚があり、地道だがこちらの方が現実的なんじゃないかと感じる。

楽な道を選ぶのではなく、地道でも一つずつ違いを楽しみ、本質に近づいていく、そんな心の持ち方も必要なんじゃないかと思った。

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