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静 霧一/小説
2021年8月9日 21:25
健康診断の帰り道。渋谷駅から少しばかり離れた場所に足を進める。喧噪の街並みの音が次第に消えていき、古い民家を吹き抜ける風の音が、昔ながらの趣の音を心地よく鳴らしている。そんな宮益坂の路地裏にひっそりと佇むのが、珈琲店『茶亭 羽當』である。①茶亭 羽當1989年9月に渋谷の宮益坂下に誕生した『茶亭 羽當』は、30年以上営む老舗の珈琲店だ。昔ながらの趣をそのまま閉じ込めたようなお店からは
2021年4月7日 21:19
「文字は人格を表す」そんな言葉を久しく感じるほどに、私たちは文字を打つことに慣れすぎてしまった。誰かに向けたメッセージさえ、私たちは無表情で文字を打つ。ビックリマークやはてなマーク、絵文字やスタンプと、文字を装飾する煌びやかな表現は発展しつつあるが、画面に映る顔は果たしてその装飾と釣り合う表情をしているのだろうか。私はテクノロジーの発展による筆記の利便性向上には大いに賛成である。第一に
2021年3月29日 22:26
私は昔から「将来のこと」を考えることが苦手な子供であった。当然、将来の夢なんてものも考えたこともなかった。「10年先のことを考えろ」「未来の自分のなりたい姿に向かって行動を変えなさい」私は、未だにそんな言葉たちを許容することが出来ない。言いたいことはわかる。目標を立て、それに向かって計画的に行動していくのは、子供の夏休みの宿題でも言われていることだし、なんとなくは理解できる。だが