【どうぶつほらばなし】ねこだまりの猫(『ねこにまつわる10のはなし』より)
ねこだまりの猫
ひげが根本からもぎとられそうな氷風の吹いた日、どん詰まりにある空き家の壁と塀とに挟まれた隙間に、どこからか猫が集まりいつもより大きな「ねこだまり」ができた。
暖を取ろうと身を押し付け合い隙間の形にびっしり埋まる、互いの境も見えないさまは、長方形に広がった、毛皮のプールのようだった。
どれだけの時間まどろんでいただろう。
差し込む細い月明かりが醸す薄い温度にねこだまりの猫は目を覚ます。
不思議と寒さは感じない。それどころか体の奥から熱が、力が溢れだし、じっと