舌力、鍛えてみました。
「舌力」←これ、何て読むか分かりますか?
正解は「ぜつりょく」です。
朗読にしろナレーションにしろ、スラスラと言葉を喋れるようになるには滑舌を良くしなければなりません。声読みに関する専門教育を受けたことがある方なら当たり前と考えるでしょう。そのくらい、滑舌は基本中の基本です。
毎週やっている発声練習配信では「日本語の発声レッスン」という本を使って基礎練習を行っています。以前の記事でご紹介させていただいたのですが、この本には基礎的な発声練習をやりたい方にうってつけの内容が書かれています。
ぶっちゃけ言うと、自主練習の教材に持って来いなんですよね。なんたって「あめんぼあかいなあいうえお(北原白秋五十音)」や「外郎売」が全文収録されているので、どこから取り組めば良いか分からない方は一冊丸々やればいいとさえ考えています。
サムネ画像は、今回ご紹介する本のタイトル。
基礎練習をやってもなんか上手くいかない方向けの内容です。
声に携わっている方なら誰でも知っている超人気講師・篠原さなえさん
著者の篠原さなえさんは声のプロであれば誰もが知っているナレーション講師。「物書きナレーターの朗読解釈」の記事で少し触れさせていただきましたが、さなえさんは日本語音声表現の謎に挑み続けているお方なんです!
タイトルにある「舌力」も、さなえさんが長年の経験と研究の末に辿り着いた理論。舌を形成する7つの筋力を総称した造語だとか。
「舌を鍛える」といっても、身体の状況によっては舌以外に問題がある場合もありますよね。この本の凄いところは、舌力を鍛える方法の前に舌・口・鼻・歯の問題についてもきちんと解説しているんです。
パターン①舌
舌の位置が悪いとポカン口(口が常に開いている状態)になることがあります。よくあるのが「低位舌(舌の全体が下顎まで下がっている)」と「前位舌(舌が前や横に出過ぎてしまっている)」。舌の位置が正常じゃないと声が通りにくくなります。
また、舌の裏についている筋(舌小帯)があると思うように舌を動かすことができません。
パターン②口
舌の位置が悪ければ当然口もだらけきってしまいます。パターン①で触れたポカン口がそうです。
口呼吸が癖になるだけでなく顎の変形を許してしまい、鼻声の要因になります。
パターン③鼻
本書でさなえさんは「鼻の問題を直すのは親の責任」とかなり強く訴えていらっしゃいます。それもそのはず、鼻の通りが悪いと空気の取り込み口が小さくなりますから思うように息を大きく吸えません。
アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などがありますが、声出しに支障が出る症状別の解説と改善方法(医療の力に頼るので専ら手術です!)が書かれています。
パターン④歯
意外だったのが歯並びが関係するということ。特に噛み合わせが悪いとポカン口になったり舌の位置がおかしくなったりするそうです。
噛み合わせが深すぎる「ディープバイト」という症状もあります。ちなみに、噛み合わせに詳しい歯医者さんでないと即座に診断できないパターンがあるらしいです。
アレルギー性鼻炎・慢性副鼻腔炎持ちの私、鼻の手術をしないとダメらしい…
仲良くさせていただいているナレーターさんで実際にさなえさんのレッスンを受けた方が数人いらっしゃいます。
基礎理論を深く教えていただけるので非常に収穫が多いレッスンと伺っております。「鼻をなんとかしなさい!」というありがたいお言葉を直接いただいた方もおりました(笑)
呼吸法は腹式呼吸が基本です。鼻から吸った空気をお腹に貯めて、吐く時に声と一緒に出します。
実は私…ロングトーン(一息で「アー」と言い続けるやつ)をしていると、すごく大きく吸っているはずなのに入ってくる空気が異常に少ないように感じるんです。
原因は言わずもがな、20年強患っているアレルギー性鼻炎とそれに伴って併発した慢性副鼻腔炎。さなえさんがおっしゃるように、鼻の手術をしたほうがいいってのは分かりきっているのですが、青森県内でやってくれる耳鼻科が少なすぎることとお金と時間が圧倒的になさすぎるのがネックなんですよね…
ですが実際に鼻の手術を受けた方が言うには「鼻の通りが良くなって声の響きが変わった!」とのことですから、自分自身のためにも将来的には受けたいと考えています。
現状からもがくためにストロー吸い運動やってみた
舌が悪かろうと口が悪かろうと鼻が悪かろうと歯が悪かろうと言えど、自分でできることがないわけではありません。後半では「舌力トレーニング」の具体的方法が示されていました。
その中で最も簡単にできる方法が「ストロー吸い運動」です。
やり方については割愛しますが、いざやってみると舌とほっぺたが痛いことったらありゃしません。
慣れていないと最初は口周りが痛くなりますが、トレーニング後に収録してみたらリップノイズが激減していました!(note朗読収録時に音声チェックしてみたらマジで減っててびっくりしました)
コツを覚えるとストロー無しでもできるので、発声練習前の準備運動に最適です♪
舌を鍛えるは自分自身を鍛える
さなえさんの本を読んで感じたのは「舌を鍛えることは自分に自信を付けるための第一歩」ということです。
自主練としての発声練習を続けていると、どうしても現状メニューで声と滑舌を鍛え抜けるのか不安になることがあります。ましてや外部レッスンを受けていないと悪い意味で我流の形が出来上がってしまいかねないからです。
私が外部レッスンを受けるのは朗読検定の通信教育くらいです。経済的な余裕があればめちゃくちゃ受けたいんです。
これ以上言うとキリが無くなるのでここまでにしますが、基本的な発声をするための土台作りにはさなえさんが提唱する「舌力」が必要不可欠になるのは言うまでもありません。
しかし、本書で紹介されていた舌力トレーニングであれば、自主練の段階でもすぐに導入することができます。口と頬の痛みを感じれば感じるほど自分に伸びしろがあると捉えることができますし、何より収穫できるものが多すぎます。
舌力は滑舌だけに飽き足らず二重顎の改善や表情筋の刺激にも効果的なので、なりたい自分になるためのトレーニングでもあるんだと感じました!
裏表紙にこんな文言があります。
声ひとつで世界が変わるなら、コンプレックスだらけの自分から脱却したい―その思いを胸に、これからも「意思を持つ声」で何かしらのお手伝いができるように力を蓄えようと改めて確認することができました。
声表現に力を入れている方であれば原点回帰になる一冊。声の仕事に就きたいと考えている方にもオススメです。