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「休み」がもたらす成長~不登校、週休3日制、ミセスの活動休止

「行きたくなければ無理せず休んでください」


これは、精神科医の斎藤環さんが休み明けに学校に行き渋る子への助言です。

 特に、不登校というのは「ストレスに対する防衛反応なので、自分を守ろうとする子供達に対して、学校へ行けと言うのは間違っています」とも。

 コロナ禍を経て、小中学校の不登校の人数は、2023年の調査で30万人ほどに増加しています(文部科学省 統計)。
 コロナ禍の中で、外出の自粛やリモートでの活動が要請され、人と直接会わなくてもよい状態に慣れてしまいました。しかし、コロナ禍前の状態に戻った時に、人と対面しながらの活動も再開され、人と直接コミュニケーションを図ることを負担に思う人も出てきました。
 特に夏休みなどの長期休み明けは、そんなコロナ禍と同じで、久しぶりの登校で多くの人と関わり、コミュニケーションを直接とることを大きな負担と感じる子がいてもおかしくありません。そして、そんな心の負担や不安から自分を守ろうとする時、「だるい」「おなかが痛い」など、何となく不調を感じて訴えることで、学校を休みたいという思いが出てくるのだと思います。
 もちろん、数多くいる不登校の人の原因はそれぞれですので、それだけではないと思います。

 ただ、この自分を守る反応に対して、無理解に無理やり学校に行かせようとしたり、厳しくしたりすると、「守り」を壊してしまう分だけ、心を大きく傷つけ、逆に不登校、引きこもりを長引かせてしまう原因にもなってしまいます。そのあたりの気持ちを受け止めつつ、徐々に慣れていく、ただ、「さぼっている」「怠けている」と偏見を持たずに、接していくだけで、救われる人(子供)も多くいるのではないかと思います。
 
斎藤環さんは。

 「ひきこもってけしからん」とか「なまけている」とか、偏見を持たずに若い人たちに接することができれば、ひきこもりは減ると思います。日本は少々のやんちゃをしても、頑張る人が認められる価値観が強い。私は「ヤンキー文化」と呼んでいますが、頑張っていないように見えるひきこもりに対しては無駄に厳しいのではないでしょうか。

とも言っています。
 たしかに、頑張ることを奨励する文化背景はまだまだある気がします。
 その頑張りによって、無理をし続け、心身の負担になり、一線を越えてしまった時、耐えきれなくなった時、うつ病などのメンタル疾患や体の不調につながっている人も多いです。
 でも、頑張り続けたり、休みを無く働いたり、学校に行ったからと言って、それが自分や会社などの成長につながるかは分かりません。むしろ、マイナス面もあるのではないでしょうか?
 
 先日、とあるテレビ番組で、週休3日制を導入した旅館が放送されていました。
 印象的だったのは、その旅館の社長さんの言葉。

「観光業、宿泊業で働く私自身が、ずっと旅行すらしていなかった(できなかった)」

 これまでも週休2日制は導入されていたそうですが、2日の休みだと、例えば、北海道など遠くに旅行へ行こうとしても、日帰りになって、楽しめなかった。その結果、遠くまで出かけられなかったそうです。
 しかし、

3日の休みがあると1泊2日で、ゆっくりと観光もでき、さらに、その休み中に行った旅行の経験が、自分の旅館経営のアイデア、ヒントになっていたり、仕事の質を上げることになったりするとのことでした。

 「休み」というと、仕事をしない時間、働かない時間のイメージが私にはあります。
 働かないことは、「働かざる者、食うべからず」的な、何となく、「いけないこと」のような感覚が今の私自身にはあります。
 それが、休みにくいこと、有給休暇を取りにくい(自分でそうしているだけですが)に、つながっています。
 
 しかし、休みは、何も「仕事をしない時間」と言うわけではありません。
 体を休める、休養の時間になります。
 仕事以外の自分の趣味の時間、好きなことをする時間という意味もあります。

 そして、今回の旅館の社長さんの話から、

「次の仕事のための準備の時間・インプットの時間」でもある

と気付きました。
 職種にもよるでしょうが、仕事と自分の時間がはっきり分かれない場合も多いと思います。
 
 例えば、知り合いの学校の先生の話では、家で行う家事が、そのまま学校で教える家庭科の教材研究になると言っていました。また、家族で出かける旅行で、遠足(校外学習)のヒント、下見になる時もあるとか。
 
 ある作家の方は、取材旅行をするそうですが「趣味」と「仕事」が混ざった内容になるそうです。考えてみれば、物語に出てくる登場人物の職業の仕事内容を知っていないと、話の中で表現できません。ミステリー作家であれば、警察の内部事情や鑑定の仕方、事件に関わる法律についても下調べしておかなくては、「ほんとうらしく」話を書けないのではないかと思います。

 今、人気絶頂のバンド、Mrs.GREENAPPLEは、2020年から2年間、活動休止期間がありました。

 デビューから一気に駆け足できて消耗し、

「消費されてしまう恐怖心があった」

とボーカルの大森元貴さんが告白していました。
 そして、休止期間中をもつことで、ひたすらインプット時間をもちました。それは、自分達を見つめ直し、弱点を知る時間でもありました。
 藤澤さんや岩井さんらは、「0」からのスタートでダンスレッスンを受け、それぞれ、ギタ―やキーボードなどの楽器を全く触り(練習し)ませんでした。。

何かの初心者になる必要がある

と新しい何かを身に付けることが大事で、必ず、次につながるという感覚があったそうです。実際、復活した2022年には、2年ぶりの演奏で、リズムの取り方、グルーヴ感が上がっていたと実感し、演奏が上手になったそうです。
また、「活動休止中」に習得したダンスが、楽曲やコンサートに生かされ、特に「ダンスホール」は、新しいMrs.GREENAPPLEの象徴となる曲になりました。ある意味、

「休み」がもたらした成長ともいえます。

 「休み下手な日本人」と言われることがあります。
 生産性が上がらないと言われるのは、ひょっとしたら、仕事につなげる、上手な休みがとれていなかったからかもしれません。

働き方改革は休み方改革でもある気がします。

同じように、不登校の中で「休む」ことも、必要な事、充電期間としての「休み」ととらえることで、次につながる気がします。
 
 
ここまで読んでいただき、ありがとうございます
皆様の心にのこる一言・学びがあれば幸いです