期待するから腹が立つ。むしろ、分かり合えたら奇跡。
臨床心理学者の第一人者だった河合隼雄先生の名著「こころの処方箋」の中に、次の内容があります。
男女は協力し合えても理解し合うことは難しい
そして、次のような文章が続きます。
今まで仲良くやっていた夫婦が中年になって、急にギクシャクしだしたり、離婚などということまで出て来そうになるのは、多くの場合、協力から理解へと至る谷間にさしかかっている時である。そして、われわれは男女が互いに他を理解するということは、ほとんど不可能に近く、また、時にそれは命がけの仕事と言っていいほどであることを、よくよく自覚する必要がある。
また、別の講では「人間理解は命がけの仕事である」とまで言っています。
これは、カウンセリング、心理療法の現場での経験や聞いた話から実感されて出てきた言葉ではありますが、なかなか考えさせられる言葉です。
同じく小林正観さんも講演会後の食事後にある男性から「結婚の意味を教えてください」と問われて、次のように答えたそうです。
夫婦で互いに傷つけあい、あちこちに血が飛び散っている状態を結婚(血痕)と言います。
隣で聞いていた男性も「奥が深い」と頷いていたとか(笑)。
まあ、これは半分冗談だとは思いますが、別の本に次のようにも補足されていました。
結婚とは、幼児性と決別するために存在します。
結婚して、自分のわがままを言い合える大人ができたときに、いかに踏みとどまれるか。それが幼児性との決別であり、大人になるということです。
長年研究してきた結果、一番価値の遠い人同士が結婚するようです。「私」の魂を向上させるために、結婚というものがあるのかもしれません。
結婚相手ともめる原因を探っていくと、相手への期待が大きすぎて、自分の期待通りの返事や察した動きが無くて、イライラしてしまうということが多くあります。
しかし、期待をしたのは誰かというと、私自身。
そう、ある意味、独り相撲をして、自分で自分をイライラさせている部分も多くあります。相手を「あきらめる」というと語弊があるかもしれませんが、「あきらめる」とは、「ものの道理をしっかりと捉え、原因、結果を明らかにする事」です。だから、何度言ってもできないとか、期待したことをやってくれないとかは、「この人はこういう人なんだ」と「あきらかに見る」ことをする。そして、長所の部分を見てあげれば、イライラ、腹も立たなくなります。ある意味、よく言われる、「相手を変えようとする」のではなく、「自分(の見方)を変える、自分が受け入れるということです。
ゲシュタルト療法という心理療法があります。
「未完成な問題や悩みに対して、再体験を通しての「今ここ」での「気づき」を得る心理療法」で、その創始者であるフレデリック・パールズの「ゲシュタルトの祈り」とよばれるメッセージに次の内容もあります。
私は私のことをします。
あなたはあなたのことをしてください。
私が生きているのは、あなたの期待に応えるためではありません。
あなたもまた、私の期待に応えるために生きているのではありません。
あなたはあなた、私は私。
もし、私たちの心通じ合わなくてもそれは仕方のないことです。
そして、私たちの心がたまたま触れ合うことがあれば、
それは最高に素晴らしいことです。
こんな話を聞くとジョン・グレイ博士の書いた「ベスト・パートナーになるために~男性は火星から、女性は金星からやってきた」という世界的なベストセラーになった本が思い出されます。
男女の差に生じる認識のズレや誤解。その原因は。両者が別々の星からやってきた異星人のごとく、根本的に異なる「人種」だという点にある。互いの違いを心得て、尊重し合えるようになれば、きっとトラブルも減るはず・・・
といった概要です。
理解し合える、彼(女)ならわかってくれるという期待値が高いからイライラすることが増えます。
こんなにつかれているのだから、お皿を洗ってくれるはず。
雨が降ってきたから、洗濯物を取り込んでくれているだろう。
お茶でも入れてくれないかな。
夜中におなかが空いた時は、ラーメンでも作ってくれてもいいよね。
お祝いとして、ごちそうを作ってくれるだろう・・・。
「人と人は分かり合える、理解し合える」という思いを抱き、自分の思いをくんで、動いてくれると期待しているから、やってもらえいないとよけいイライラを募らせてしまいます。
脳科学的にも男性と女性の性格は、平均して20%ほどしか重なる部分が無いようにできているそうです。そう、20%しか理解し合えない。20%しか分かり合えないということが当たり前ということでもあります。だから、
分かり合えないのは不幸ではなく、むしろ、分かり合えることが奇跡
誰かと21%以上分かり合えたら奇跡
なのかもしれません。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます
皆様の心にのこる一言・学びがあれば幸いです