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江戸川乱歩賞受賞ミステリーおすすめ小説15選|新しい作家との出会いのきっかけに
推理作家への登竜門として知られている「江戸川乱歩賞」。1954年、江戸川乱歩の寄付を基金として、探偵小説を奨励するために制定された文学賞です。第一回の1955年から約70年もの間、さまざまな人気作家を輩出しています。
今回は、この「江戸川乱歩賞」を受賞した作品のうち、ここ20年ほどの特におすすめの作品を15作厳選してご紹介!次に読む一冊に、ぜひ、選んでみてくださいね♪
『此の世の果ての殺人』荒木あかね【第68回】
2022年ミステリランキング席巻中
「王様のブランチ」「ひるおび」「日曜日の初耳学」で紹介されて続々重版!
第68回江戸川乱歩賞受賞作。
史上最年少、選考委員満場一致。
「大新人時代」の超本命!
本格ミステリーの骨法もよく心得ている――綾辻行人
特A、もしくはA+、もしくはAA――月村了衛
二人の女性のバディ感が最高に楽しい――柴田よしき
極限状況で生きてゆくひとが、愛しくなる――新井素子
非日常を日常に落とし込む、その手捌きは実に秀逸である――京極夏彦
―滅びゆく世界に残された、彼女の歪んだ正義と私の希望
正義の消えた街で、悪意の暴走が始まったー
小惑星「テロス」が日本に衝突することが発表され、世界は大混乱に陥った。そんなパニックをよそに、小春は淡々とひとり太宰府で自動車の教習を受け続けている。小さな夢を叶えるために。年末、ある教習車のトランクを開けると、滅多刺しにされた女性の死体を発見する。教官で元刑事のイサガワとともに、地球最後の謎解きを始める――。
第68回江戸川乱歩賞受賞作。本作がデビュー作です。同賞の受賞者としては史上最年少ということでも話題となりました。2022年「週刊文春ミステリーベスト10」第5位にランクインしています。少し変わった特殊設定ミステリーです。「Z世代のアガサ・クリスティー」と呼ばれる荒木さんの作品。テンポ感が良く、さくさく読めますよ。
『脳男』首藤瓜於【第46回】
猟奇的な連続爆弾犯のアジトで発見された、心を持たない男・鈴木一郎。逮捕後、新たな爆弾の在処を警察に告げた、この男は共犯者なのか。男の精神鑑定を担当する医師・鷲谷真梨子は、彼の本性を探ろうとするが……。そして、男が入院する病院に爆弾が仕掛けられた。
あらゆる感情が欠落した男。男の正体の解明に挑む精神科医と共に事件の核心にたどりついた刑事が見たものとは。
全選考委員が絶賛した超絶の江戸川乱歩賞受賞作。2000年週刊文春ミステリーベスト10 第1位。
第46回江戸川乱歩賞受賞作。全選考委員の満場一致で受賞が決定したことでも話題となりました。続編が『指し手の顔 脳男2』、第三作目が『ブックキーパー 脳男』です。2013年に漫画化、生田斗真さん主演で映画化されています。
『QJKJQ』佐藤究【第62回】
市野亜李亜(いちのありあ)は十七歳の女子高生。猟奇殺人鬼の一家で育ち、彼女自身もスタッグナイフで人を刺し殺す。猟奇殺人の秘密を共有しながら一家はひっそりと暮らしていたが、ある日、亜李亜は部屋で惨殺された兄を発見する。その直後、母の姿も消える。亜李亜は残った父に疑いの目を向けるが、一家には更なる秘密があった。
「平成のドグラ・マグラ」
「ものすごい衝撃を受けた」
選考委員たちにそう言わしめた、第62回江戸川乱歩賞受賞作。
『Ank: a mirroring ape』、『テスカトリポカ』などの著者としても人気の佐藤究さんの作品。本作は第62回江戸川乱歩賞を受賞した作品です。帯に書かれた「家族は全員、猟奇殺人鬼」の文字と謎めいた題名が光ります。
『わたしが消える』佐野広実【第66回】
第66回江戸川乱歩賞受賞作!
綾辻行人氏(選考委員)、推薦。
「序盤の地味な謎が、物語の進行とともに厚み・深みを増しながら読み手を引き込んでいく」
元刑事の藤巻は、交通事故に遭い、自分に軽度認知障碍の症状が出ていたことを知り、愕然とする。離婚した妻はすでに亡くなっており、大学生の娘にも迷惑はかけられない。
途方に暮れていると、当の娘が藤巻を訪ね、相談を持ちかけてくる。介護実習で通っている施設に、身元不明の老人がいる、というのだ。その老人は、施設の門の前で放置されていたことから、「門前さん」と呼ばれており、認知症の疑いがあり意思の疎通ができなくなっていた。
これは、自分に課せられた最後の使命なのではないか。そう考えた藤巻は娘の依頼を引き受け、老人の正体を突き止めるためにたった一人で調査に乗り出す。
刻一刻と現れる認知障碍の症状と闘いながら調査を続ける藤巻は、「門前さん」の過去に隠された恐るべき真実に近づいていくーー。
残された時間で、自分に何ができるのか。
「松本清張賞」と「江戸川乱歩賞」を受賞した著者が描く、人間の哀切極まる社会派ミステリー!
文庫化にあたり、受賞作の前日譚にあたる短編「春の旅」も収録。
『誰かがこの町で』の著者としても有名な佐野広美さんの作品。第66回江戸川乱歩賞受賞作です。認知症を真ん中に据えた社会派ミステリー。思わず感情移入してしまう作品です。
『蒼天の鳥』三上幸四郎【第69回】
第69回江戸川乱歩賞受賞作。
『名探偵コナン』『電脳コイル』『特命係長 只野仁』『特捜9』など数多くのテレビドラマ、アニメを手がけてきた、大ベテラン脚本家が、江戸川乱歩賞を受賞!
歴史に埋もれた鳥たちが、いま羽ばたく。
大正十三(1924)年七月、鳥取県鳥取市──。
主人公の田中古代子は、女性の地位向上を目指し「新しい女」の潮流を訴える女流作家である。本格的に作家として活動するため、娘の千鳥と内縁の夫・涌島義博の三人で、鳥取から東京に引っ越しをする予定を立てていた。移住直前のある日、古代子は千鳥と共に、活動写真「兇賊ジゴマ」を観るために鳥取市内の劇場「鳥取座」に向かう。ところが観劇中、場内で火事が発生。取り残された古代子と千鳥が目にしたのは、煙につつまれる舞台上に立つ「本物」の「兇賊ジゴマ」であった。逃げようとする二人の目の前で、ジゴマはひとりの男を刺殺し、逃亡する。命からがら鳥取県気高郡浜村の自宅に逃げ帰った古代子と千鳥であったが、一息つく暇もなく、再び謎の人物に襲われるのだった。
果たしてこの世の中に、本物のジゴマなどいるものだろうか……? 謎は思いがけない事態へと発展していく。
鳥取出身の実在の作家・田中古代子をモデルに、友人の女流作家・尾崎翠や鳥取に流れてきた過激アナキスト集団「露亜党」、関東大震災など、大正期を鮮やかに描く歴史活劇ミステリー!
第69回江戸川乱歩賞受賞作品。『世にも奇妙な物語』、『匿名探偵』なども手掛ける脚本家の三上幸四郎さんの作品です。小説は本作がデビュー作。故郷である鳥取県に実在した作家・田中古代子と、その娘の夭折詩人・田中千鳥を主人公にしています。
『天使のナイフ』薬丸岳【第51回】
犯人は、13歳の少年だった。
娘の目の前で、桧山貴志の妻は殺された。犯人が13歳の少年3人だったため、罪に問われることはなかった。4年後、犯人の1人が殺され、桧山が疑われる。「殺してやりたかった。でも俺は殺していない」。法とは、正義とは。デビュー作にして、少年犯罪小説・唯一無二の金字塔。
第51回江戸川乱歩賞を受賞作。薬丸岳さんのデビュー作です。予備選考の時点から独走状態で、本選でも選考委員の満場一致で受賞が決定したことでも話題となりました。2015年小出恵介さん主演でテレビドラマ化されています。
『フェイク・マッスル』日野瑛太郎【第70回】
独自の世界で勝負できる書き手だと思う。--東野圭吾
頭抜けて面白かった。--綾辻行人
まんまと作者の術中にはまった。ーー有栖川有栖
エンタメとして読ませるテンポの良さも素晴らしい。ーー辻村深月
潜入取材シリーズとなれば喜んで追っていきたいと思います。――湊かなえ
あらすじ
たった3ヵ月のトレーニング期間で、人気アイドル大峰颯太がボディービル大会の上位入賞を果たした。SNS上では「そんな短期間であの筋肉ができるわけがない、あれは偽りの筋肉だ」と、ドーピングを指摘する声が持ち上がり、炎上状態となってしまう。当の大峰は疑惑を完全否定し、騒動を嘲笑うかのように、「会いに行けるパーソナルジム」を六本木にオープンさせるのだった。
文芸編集者を志しながら、『週刊鶏鳴』に配属された新人記者・松村健太郎は、この疑惑についての潜入取材を命じられ、ジムへ入会する。馬場智則というベテラン会員の助力を得て、大峰のパーソナルトレーニングを受講できるまでに成長。ついに得た大峰との一対一のトレーニングの場で、ドーピングを認める発言を引き出そうとするが、のらりくらりと躱されてしまう。あの筋肉は本物か偽物か。松村は、ある大胆な方法で大峰をドーピング検査にかけることを考え付くのだが――?
フェイクが氾濫する時代の、「真実の物語」が始まった。
第70回江戸川乱歩賞を受賞作。日野瑛太郎さんのデビュー作です。ユーモア×スポーツミステリーという珍しいジャンルの作品。さくさく読めるので、ミステリー初心者にもおすすめです。
『北緯43度のコールドケース』伏尾美紀【第67回】
第67回江戸川乱歩賞受賞作
待望の文庫化!
異色の女性エリートノンキャリが、組織の闇に翻弄されながらも、未解決事件(コールドケース)の真相にせまる。
新たなヒロイン、新たな警察小説、ここに誕生!
「読者を翻弄するストーリーテリングの技は新人離れしている」宮部みゆき
(読売新聞2021年11月21日書評)
「ミステリ好きなひとにとって、至福の時だ。ああ、このお話、読んでよかった」新井素子
(解説より)
博士号を持つ異色の警察官・沢村依理子。
北海道警察で現場経験を積む沢村は凍てつく一月、少女死体遺棄事件の捜査に加わる。
発見された少女は五年前に誘拐され行方不明となっていた島崎陽菜だった。
容疑者死亡で未解決だった事件は沢村を呑み込むように意外な展開を見せる。
第67回江戸川乱歩賞受賞作品。伏尾美紀さんのデビュー作です。続編は『数学の女王』。なかなか厳しい選評をもらいながら、人気作となりシリーズ化しているという作品です。
『道徳の時間』呉勝浩【第61回】
連続イタズラ事件が起きている、ビデオジャーナリストの伏見が住む町で、陶芸家が死亡。現場には、『道徳の時間を始めます。殺したのはだれ?』という落書きがあり、イタズラ事件との類似から同一犯という疑いが深まる。同じ頃、伏見にかつて町で起きた殺人事件のドキュメンタリー映画のカメラの仕事が舞い込む。証言者の撮影を続けるうちに、過去と現在の事件との奇妙なリンクに絡め取られていく。第61回江戸川乱歩賞受賞作。
『白い衝動』、『爆弾』の著者としても有名な呉勝浩さんの作品。第61回江戸川乱歩賞受賞作品です。本作がデビュー作。こちらの作品も厳しい選評をもらっていた作品です。「悪い人は誰でしょう?」という帯の文字通り、深く考えさせられます。
『闇に香る嘘』下村敦史【第60回】
村上和久は孫に腎臓を移植しようとするが、検査の結果、適さないことが分かる。和久は兄の竜彦に移植を頼むが、検査さえも頑なに拒絶する兄の態度に違和感を覚える。中国残留孤児の兄が永住帰国をした際、既に失明していた和久は兄の顔を確認していない。27年間、兄だと信じていた男は偽者なのではないか――。全盲の和久が、兄の正体に迫るべく真相を追う。
村上和久は孫に腎臓を移植しようとするが、検査の結果、適さないことが分かる。和久は兄の竜彦に移植を頼むが、検査さえも頑なに拒絶する兄の態度に違和感を覚える。中国残留孤児の兄が永住帰国をした際、既に失明していた和久は兄の顔を確認していない。
27年間、兄だと信じていた男は偽者なのではないか――。
全盲の和久が、兄の正体に迫るべく真相を追う。
第60回江戸川乱歩賞受賞作品。2014年「週刊文春ミステリーベスト10」第2位、2015年「このミステリーがすごい!」第3位にランクイン。『全員犯人、だけど被害者、しかも探偵』』、『そして誰かがいなくなる』などの著者としても有名な下村敦史さんのデビュー作です。江戸川乱歩賞は、9度目で受賞となりました。盲目の主人公、中国残留孤児と重いテーマですが、読後感は爽やかです。
『13階段』高野和明【第47回】
宮部みゆき氏絶賛!!!
手強い商売仇を送り出してしまったものです。――(本書解説より)
犯行時刻の記憶を失った死刑囚。その冤罪を晴らすべく、刑務官・南郷は、前科を背負った青年・三上と共に調査を始める。だが手掛かりは、死刑囚の脳裏に甦った「階段」の記憶のみ。処刑までに残された時間はわずかしかない。2人は、無実の男の命を救うことができるのか。江戸川乱歩賞史上に燦然と輝く傑作長編。
『ジェノサイド』などの著者としても有名な高野和明さんのデビュー作です。第47回江戸川乱歩賞受賞作品。選考委員の満場一致の受賞で話題となりました。2003年に反町隆史さんと山﨑努さん主演で映画化されています。死刑制度、服役者の更生など、重いテーマですが、読みやすい文章と構成で、すいすい読めますよ。
『カラマーゾフの妹』高野史緒【第58回】
カラマーゾフ事件から十三年後。モスクワで内務省未解決事件課の特別捜査官として活躍するカラマーゾフ家の次男、イワンが、事件以来はじめて帰郷した。兄ドミートリーの無罪を証明し、事件の真相を確かめたい――再捜査を開始するイワンの前に新たな事件が起こる。十三年前の真犯人は誰なのか。新たな事件は誰が、何のために起こしているのか、そして、謎解きの向こうに見えてくるものとは。息詰まる展開、そして驚愕の結末!
第58回江戸川乱歩賞受賞作品。『グラーフ・ツェッペリン あの夏の飛行船』、『まぜるな危険』などの著者としても有名な高野史緒さんの作品です。ドフトエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』の描かれなかった13年後の物語というユニークな設定のミステリー。『カラマーゾフの兄弟』を先に読むのがおすすめです。
『よろずのことに気をつけよ』川瀬七緒【第57回】
第57回江戸川乱歩賞受賞作。呪いで人が殺せるか。変死体のそばで見つかった「呪術符」を手がかりに、呪術の研究を専門にする文化人類学者・仲澤大輔が殺人事件の真相に迫る長編ミステリー 。
法医昆虫学捜査官シリーズの著者としても有名な川瀬七緒さんのデビュー作。第57回江戸川乱歩賞受賞作品です。民俗学的要素がぎゅっと詰まった本格ミステリーです。
『老虎残夢』桃野雑派【第67回】
「館」×「孤島」×「特殊設定」×「百合」!
孤絶した楼閣=密室で起きた「絶対不可能殺人」
最侠のヒロインは、最愛の師の「死の謎」を解くことができるのか!?
選考委員絶賛!
第67回江戸川乱歩賞受賞作
綾辻行人「論理的に真相を解き明かしていくスタンスにはブレがなく、スリリングな謎解きの演出も◎」
京極夏彦「南宋の密室という蠱惑。武侠小説としての外連。特殊設定ミステリという挑戦。愉しい」
湖に浮かぶ孤島で、武術の達人・泰隆が遺体となって発見された。三人の武侠を招き、うち一人に「奥義」を授けるとしていた矢先のことだった。孤絶した楼閣は、特殊な武芸を身につけた彼らをもってしても侵入は不可能にみえる。泰隆の愛弟子・紫苑は、姉妹以上の絆で結ばれた恋華とともに、その謎に挑む!
ゲームシナリオライターの桃野雑派さんのデビュー作。第67回江戸川乱歩賞受賞作品です。館、孤島と王道のミステリー世界かと思いきや、武侠までプラスされ、斬新なテイストを楽しめます。中国史が好きな方には特におすすめの作品。
『再会』横関大【第56回】
小学校卒業の直前、悲しい記憶とともに拳銃をタイムカプセルに封じ込めた幼なじみ四人組。23年後、各々の道を歩んでいた彼らはある殺人事件をきっかけに再会する。わかっていることは一つだけ。四人の中に、拳銃を掘り出した人間がいる。繋がった過去と現在の事件の真相とは。<第56回江戸川乱歩賞受賞作>
第56回江戸川乱歩賞受賞作品。「ルパンの娘」シリーズ、「K2 池袋署刑事課 神崎・黒木」シリーズなどの著者としても有名な横関大さんのデビュー作です。2012年に江口洋介さん主演でテレビドラマ化されています。受賞時のタイトルは『再会のタイムカプセル』。まさにタイムカプセルがキーになった物語です。
まとめ|江戸川乱歩賞受賞ミステリーおすすめ小説15選|新しい作家との出会いのきっかけに♪
江戸川乱歩賞を受賞してデビューする作家が多いのも、この文学賞の特徴のひとつです。まだ読んだことのない作家との出会いも期待できますよね。ぜひ、手に取ってみてくださいね。