JW304 蟻道の戦い
【丹波平定編】エピソード11 蟻道の戦い
第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。
彦坐王(ひこいます・のきみ)(以下、イマス)は、丹波(たにわ)の平定に赴いていた。
従うのは、副将の尾張倭得玉彦(おわり・の・やまとえたまひこ)(以下、玉彦)。
そして、サムとジェフである。
ヤマト勢は、加佐(かさ)の陸耳御笠(くがみみのみかさ)(以下、みかさ)と匹女(ひきめ)を追いかける。
そんな中、「みかさ」勢は、稲が生い茂る中に身を潜めるのであった。
玉彦「徹底的に探(さが)すがや!」
ヤマト勢「御意!」×多数
サム「わてらも手伝うでぇ。」
ジェフ「なんやねん。『追いかけっこ』の次は『かくれんぼ』かいなぁ・・・(*´Д`*)。」
イマス「必ずや、見つけ出すのじゃ!」
懸命な捜索がおこなわれた。
そして・・・。
玉彦「あっ! あそこにいるのは!」
イマス「敵将、見つけたりぃぃ! 『みかさ』よ、匹女よ! 観念(かんねん)せいっ。」
みかさ「ちっ! 見つかってもうたか!」
匹女「ちょっと! どないすんの!?」
みかさ「わてに任せときっ。」
そう言うと「みかさ」は、たちまちに雲を発生させた。
サム「えっ? そんなん出来るんですか?」
ジェフ「嘘やろっ?!」
みかさ「それが出来んねん。この雲に乗って、ひとっ飛びやがな! ほな、さいなら!」
匹女「南に向かって、飛び去る、アタシらの雄姿! 篤(とく)と、拝(おが)みなはれやっ。」
みかさ勢「さいならぁぁ。」×多数
イマス「い・・・行ってしまった・・・。」
玉彦「飛ぶっちゅうのは、無しだでぇ・・・(*´Д`*)。」
サム「いやぁ。ええモン見せてもろた。」
ジェフ「感心して、どないすんねん!?」
イマス「くっ・・・くそっ! このようなことが・・・。」
とても悔しかったのであろう。
イマスは、周囲を滅茶苦茶に荒蕪(したき)なした。
サム「荒蕪(したき)なす・・・って、どういう意味やねん?」
玉彦「まあ、分かりやすく言えば『荒らす』とか『乱す』っちゅうことだに。『踏みしだく』とか聞いたことないきゃ? あの『しだく』は『荒蕪(したき)なす』から、来とるんだがや。」
ジェフ「このことから、この地は荒蕪(したき)と呼ばれるようになったんやでぇ。」
玉彦「その通り! その後、志託(したく)となり、二千年後は、京都府舞鶴市(まいづるし)の志高(しだか)となっとるでよ。」
サム「なるほどぉぉぉ。『丹後国風土記逸文(たんご・のくに・ふどき・いつぶん)』に、そう書かれてるなぁ。」
イマス「汝(いまし)ら、よく解説など出来るな。悔しくはないのか?」
玉彦「皇子(みこ)? なんで、そんなに悔しがっとるんだ?」
イマス「雲に乗ったことは、ともかく、南に逃げたことを懸念(けねん)しておるのじゃ。」
サム「南に?」
イマス「作者の考えではあるが、ここより南の地には、ヤマトに与(くみ)しておらぬ豪族が、数多(あまた)おると思われる。この者らを集め、再起(さいき)を図るのではないかと・・・。」
ジェフ「そう言われると・・・。こ・・・こりゃぁ、大きな戦(いくさ)になるでぇ!」
イマス「その通りじゃ。早く決着を付けたかったが・・・。」
イマスの不安は的中した。
作者の思惑通り、「みかさ」たちは軍勢を整え、再び現れたのである。
玉彦「皇子! 『みかさ』勢が、蟻道(ありじ)に布陣(ふじん)しとるみたいだで!」
イマス「ついに現れたか・・・。」
サム「蟻道・・・。二千年後の京都府福知山市大江町(ふくちやまし・おおえちょう)の北有路(きたありじ)と南有路(みなみありじ)のことやね?」
玉彦「その通りだがや。ついに、大掛かりな戦になってもうたでよ。」
イマス「よしっ。我(われ)らも出るぞっ!」
こうして、蟻道の地で、両軍は対峙(たいじ)することとなった。
みかさ「夜麻登人(やまとびと)よ! ここが汝(なびと)らの墓場やっ! 攻めかかれぇぇ!」
みかさ勢「おお!」×多数
イマス「遅れをとるなっ。攻め立てぃ!」
ヤマト勢「おお!」×多数
サム「わてら加佐(かさ)勢も気張って行くでぇ!」
加佐勢「おお!」×多数
激しくぶつかる両軍。
刃と刃が重なる。
血霧が舞う。
一進一退の攻防。
傷つき倒れて逝く者たち。
阿鼻叫喚(あびきょうかん)が、蟻道に広がる。
しかし最後は、数がモノを言った。
ヤマト勢が「みかさ」勢を押し始めたのである。
みかさ「汝(いまし)ら、何をしてんのやっ! もうちょっと踏ん張れっ!」
匹女「あかんっ。このままやったら、押し切られてまうでぇ。」
そのとき、川の方から喚声(かんせい)が沸き起こった。
みかさ「ん? なんや? 由良川(ゆらがわ)の方から声?」
匹女「ちょっと! 『みかさ』はん?! ヤマトの船団が、川を遡(さかのぼ)って来たで!」
みかさ「なんやてぇぇ?! 伏兵(ふくへい)っちゅうことか?! おのれ孔明(こうめい)!!」
玉彦「誰が、孔明だがや! 我(われ)は、尾張倭得玉彦なりっ。」
ジェフ「ちなみに、孔明は、まだ生まれてないでぇ。気を付けなはれやっ。」
みかさ「ぐぬぬぬ・・・。このまま、わてらの後ろに回りこまれたら・・・。」
匹女「どないすんの!?」
玉彦「皆の衆! 射かけよぉ!」
ヤマト勢(伏兵)「おお!」×多数
「みかさ」たちの頭上に、矢の雨が降り注ぐ。
一体どうなってしまうのか。
次回につづく
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