JW533 部を設置しよう
【垂仁天皇編】エピソード62 部を設置しよう
第十一代天皇、垂仁天皇(すいにんてんのう)の御世。
紀元前7年、皇紀654年(垂仁天皇23)10月。
誉津別(ほむつわけ)(以下、ホームズ)が言葉を発する可能性を秘(ひ)めた、白鳥捕獲大作戦が展開された。
天湯河板挙(あめのゆかわたな)(以下、ゆかわ)と、その子孫である、山辺大鶙(やまのべ・の・おおたか)(以下、オータン)が、白鳥を探し求めたのである。
「ゆかわ」は、多遅摩(たじま:兵庫県北部)とも出雲(いずも:島根県東部)とも言われる地で、白鳥を捕らえたのであったが「オータン」はと言うと・・・。
オータン「高志(こし:北陸地方)で白鳥を捕らえたぞ!」
ゆかわ「罠(わな)の網(あみ)を張って捕らえたのだ。」
オータン「えっ? 御先祖様? どうしてここに?」
ゆかわ「合いの手というヤツだ。ちなみに、捕らえた港は、和那美之水門(わなみ・のみなと)と呼ばれるようになる。」
オータン「その港は、二千年後では、何処(いずこ)になりまするか?」
ゆかわ「分からない。」
オータン「えっ?」
ゆかわ「しかし、作者は、新潟県長岡市(ながおかし)の川口和南津(かわぐち・わなづ)ではないかと考えているようだ。」
オータン「信濃川(しなのがわ)と魚野川(うおのがわ)の合流地点、川の港・・・津(つ)にござりまするな?」
ゆかわ「そういうことだ。では、白鳥を献上するため、宮(みや)に戻ることにしよう。」
こうして、白鳥が献上された。
11月2日のことである。
垂仁天皇こと、活目入彦五十狭茅尊(いくめいりひこいさち・のみこと)(以下、イク)が喜んだのは、言うまでも・・・。
イク「ちょっと待って! 白鳥が二羽って、どういうこと?!」
ゆかわ「仕方がない。私の捕らえた白鳥は『日本書紀(にほんしょき)』バージョンで、子孫が捕らえた白鳥は『古事記(こじき)』バージョンだ。」
ひばり「バージョ?」
ニック「とにかく、皇子(みこ)に白鳥を与えたら、言の葉を発するんやないですかね?」
イク「そ・・・そうだね。『ホームズ』? 白鳥だよ。どう? 言の葉が出て来そう?」
ホームズ「・・・・・・(イクを不思議そうに見つめる)。」
イク「『日本書紀』では話すことになってるんだけど・・・。」
カーケ「『古事記』の方を採用したのではないかね?」
イク「うっ・・・。」
くにお「そ・・・そうであれば、白鳥の件(くだり)とは?」
ちね「意味が無いっちゅうことに・・・。」
イク「と・・・とにかく、これを機(き)に、鳥取部(ととりべ)、鳥養部(とりかいべ)、誉津部(ほむつべ)を設置するよ。」
オーカ「部(べ)とは、エピソード487に登場した、倭文部(しどりべ)のような職人集団を指す言の葉にあらしゃいます。」
イク「倭文部は、絹(きぬ)を織る職人だったよね?」
オーカ「そうですぅ。」
ニック「ほな、鳥取部は?」
イク「鳥を取る職人だね。猟師さんってことだよ。」
カーケ「では、鳥養部は、鳥を飼育する人たちのことかね?」
イク「その通りです。伯父上。」
くにお「では、誉津部は? ホームズ様の名が入っておりまするが?」
イク「この部は、ホームズの暮らしを支える人たちのことだよ。」
ちね「支えるって?」
イク「ホームズの身の回りの世話や、護衛をする人たちのことだよ。元伊勢(もといせ)を紹介している、倭姫(やまとひめ)こと『ワッコ』ちゃんに、舎人(とねり)とか采女(うねめ)という付き人がいるでしょ? あんな感じだね。」
ひばり「大王(おおきみ)? 『古事記』では、その他に、大湯坐(おおゆえ)と若湯坐(わかゆえ)が設置されておりまするが?」
イク「こちらは、幼児(おさなご)の入浴や養育の責任者だよ。詳しいことは分からないんだけど、大湯坐は、若湯坐をまとめる係長みたいなモノじゃないかな。」
ひばり「ホームズ殿は、幼児ではありませんが?」
とにかく、言葉を発しない、ホームズなのであった。
つづく