JW432 祀ってください
【崇神経綸編】エピソード7 祀ってください
第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。
すなわち、紀元前44年、皇紀617年(崇神天皇54)。
ここは、吉備国(きび・のくに:現在の岡山県と広島県東部)。
天照大神(あまてらすおおみかみ)(以下、アマ)が引越を要請。
御杖代(みつえしろ)の豊鍬入姫(とよすきいりひめ)(以下、きぃ)は、この地を訪れていた。
従うのは、舎人(とねり)の紀麻呂良(き・の・まろら)(以下、マロロ)である。
吉備を治めている、若日子建吉備津日子(わかひこたけ・きびつひこ)(以下、タケ)と、タケの子、武彦(たけひこ)(以下、たっちゃん)が出迎えたのは、言うまでもないことであった。
タケ「これは、これは『きぃ』様。遥々のお越し、恐悦至極(きょうえつ・しごく)に存じ申し上げ奉(たてまつ)りまする。『アマ』様、御鎮座(ごちんざ)がこと、聞き及んでおりますれば、如何様(いかよう)にも、仰(おお)せ付けくださりませ。」
きぃ「伯父上・・・。堅苦しい挨拶(あいさつ)は、おやめくださりませ。」
たっちゃん「我(わ)が父に、そのようなことが通じるとでも? 気になさりまするな。」
するとそこに、大吉備津日子(おおきびつひこ)(以下、芹彦(せりひこ))の妻、高田姫(たかだひめ)(以下、たか)がやって来た。
たか「遅れて申し訳ありませぬ。うちの人が、頑(かたく)なで・・・。」
きぃ「伯母上? 頑なとは? 芹彦伯父上は、何をなさっておられるのです?」
たか「吉備津神社(きびつじんじゃ)から出て来ぬのです。何度も、説き伏せようとしておるのですが、解説されるまでは、出て来ぬの一点張りにて・・・。」
きぃ「吉備津神社とは、岡山市北区吉備津(きたく・きびつ)に鎮座(ちんざ)する社(やしろ)にございますね? たしか、祭神は、芹彦伯父上、タケ伯父上、それから、倭迹迹日百襲姫(やまとととひももそひめ)こと、モモ伯母上が祀(まつ)られておられたはず・・・。」
たっちゃん「今は、社(やしろ)ではなく、吉備津宮(きびつみや)という、我(われ)らの住まいなのじゃが・・・。」
タケ「とにかく、エピソード388での解説が気に入らぬと申してな・・・。」
マロロ「気に入らぬとは?」
たか「吉備津神社に、旦那様の兄弟姉妹も祀られていると解説されておりまするが、実は、全員ではなかったのです。鶯王(うぐいすおう)の兄上様、福姫(ふくひめ)こと『ふぅ』様、そして、八代目の孝元天皇(こうげんてんのう)こと『ニクル』様が祀られておらぬと・・・。」
きぃ「伯父の鶯王殿は、エピソード194で亡くなられ、叔母の『ふぅ』殿は、エピソード183で亡くなられておりまするね? 二人は伝承の人物にございますが、まさか、八代目様まで・・・。」
タケ「とにもかくにも、このことを解説せねばならぬと、意気込んでおってな・・・。いつの日か、吉備津神社の神主(かんぬし)に読んでもらい、合祀(ごうし)してもらうのじゃと・・・。」
芹彦「その通り! そうでなくてはならぬのじゃ! それがしたちの父上、孝霊天皇(こうれいてんのう)も祀られておるのじゃぞ! そうでなくては、父上が、悲しまれるではないか!」
きぃ「せ・・・芹彦伯父上! おひさしゅうございます。」
芹彦「うむ。解説されたゆえ、出て来てやったぞ! では、吉備国の元伊勢(もといせ)、紹介しようではないか!」
次回、吉備国の神社が紹介される。
つづく