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JW349 届かぬ矢

【桃太郎編】エピソード19 届かぬ矢


第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。

吉備(きび:現在の岡山県と広島県東部)では、温羅(うら)が暴れまわっていた。

地図(吉備)

鎮圧の使命を受けたのは、彦五十狭芹彦(ひこいさせりひこ)(以下、芹彦)と稚武彦(わかたけひこ)(以下、タケ)。

夜襲は成功したものの、温羅を討ち取ることは出来なかったのであった。

一覧(吉備の一行)

犬「皇子(みこ)! 温羅は、城に籠(こも)りもうした。如何(いかが)なされまする?」

芹彦「二度も夜攻め(よぜめ)が通じるとは思えんっ。ここは、矢攻めしかあるまい!」

タケ「敵の矢が尽きるまで、矢を放つのじゃ!」

こうして、両軍による矢の応酬(おうしゅう)がおこなわれた。

地図(矢の応酬)

芹彦「どういうことじゃ!? それがしの矢が、城まで届かず、皆、途中で落ちておるぞ!」

トメ「あっ! 皇子の放った矢が、温羅の矢と、空中で噛(か)み合ってます!」

芹彦「なんじゃと!?」

温羅「その通りニダ。芹彦の矢に、ウリの矢をぶつけているハセヨ!」

サモリ「そうなんですよねぇ。そして、矢の落ちたところが、矢喰天神社(やぐいてんじんじゃ)になったんですよ。この時の矢が、祀(まつ)られてるんですよねぇ。」

ジュリアン「矢喰宮(やぐいのみや)とも呼ばれとるぞ。」

矢喰天神社(鳥居)
矢喰天神社(拝殿)

ジョン「おい! ジュリアン! 鎮座地(ちんざち)は?」

ジュリアン「岡山市の北区高塚(きたく・たかつか)じゃ。」

地図(矢喰天神社)

ショーン「父ちゃん! それだけじゃないで! 小さな鳥居の右側には、巨石が大小合わせて五個並んどって、矢喰の岩(やぐいのいわ)と呼ばれとるんじゃ。」

温羅「それだけじゃないニダ! ウリが放り投げた岩とぶつかって、矢が落ちたとも言われているニダ!」

矢喰の岩
矢喰の岩

芹彦「どちらにせよ、それがしの矢が届いておらぬのじゃな?!」

温羅「そういうことハセヨ!」

芹彦「じゃが、それがしは諦(あきら)めぬぞ! とぉ!」

温羅「ムダ、ムダ、ムダ! 全て落としてやるニダ!」

しかし、今回は、芹彦の闘志が乗り移っていたのであろうか、矢は落とされず、鬼ノ城(きのじょう)の麓(ふもと)にある、蛇高(じゃこう? へびたか?)の岩に当たった。

温羅「アイゴー(うわぁ)! 読み方の分からない岩に、当たってしまったハセヨ!」

芹彦「い・・・岩が砕け散ったぞ!」

オーイナ「その一部が、二十キロも離れたところに、飛んでいったんじゃ。」

犬「二十キロじゃと?!」

ヨーコ「その通りよ! それが、明剱神社(みょうけんじんじゃ)の磐座(いわくら)と言われてるわ。岩そのものが、神様になっちゃったのね!」

たか「岡山県矢掛町下高末(やかげちょう・しもこうずえ)に鎮座しておりまする。」

地図(明剱神社)
明剱神社(鳥居と拝殿)
明剱神社(磐座)

芹彦「戦いながら、社(やしろ)の解説をすることになろうとは!」

矢の応酬は続くのであった。

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