JW380 義母と娘の邂逅
【崇神改革編】エピソード7 義母と娘の邂逅
第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。
紀元前86年、皇紀575年(崇神天皇12)。
ここは吉備国(きび・のくに)。
大吉備津日子(おおきびつひこ)(以下、芹彦(せりひこ))と高田姫(たかだひめ)(以下、たか)夫妻の元に、一人の女人が来訪していた。
その人物とは、芹彦の娘、包媛(かねひめ)(以下、カネ)である。
芹彦「なにゆえ、吉備まで参ったのじゃ!?」
カネ「新しい母上に、御挨拶(ごあいさつ)をば・・・と思いまして・・・。」
たか「あ・・・あなた様が、カネ様にござりまするか?」
カネ「はい・・・。お会いしとうございました。義母上様。」
芹彦「このような話、どの伝承にも『記紀(きき)』にも書かれておらぬぞ!」
カネ「存じております。されど、どうしても、会っておきたかったのです。」
たか「それは、なにゆえにござりまする?」
カネ「私と義母上様は、別々の伝承に登場致します。そして、一切の絡(から)みが無いのです。口惜しいとは、お思いになりませんか?」
芹彦「別々の伝承なのじゃ! 仕方あるまい!」
カネ「そうは思いません。伝承は違えど、同じ時代を生きた者同士・・・。人と人とのつながりが有ったはずと、作者は考えております。」
たか「たしかに・・・。義母と娘が会わない道理は有りませぬ。」
カネ「そうなのです。なのに、男たちは、人を記号のように扱って、全く関わりが無かったかのように書き記すのです。会ったことも、言の葉を交わしたことも有るはずですのに・・・。」
芹彦「言われてみると、鶯王(うぐいすおう)の兄上や、妹の福姫(ふくひめ)こと『ふぅ』も、別々の伝承に出て来る人物じゃが、しっかりと絡んでおるのう・・・。」
カネ「伯父の鶯王殿は、エピソード194で亡くなられ、叔母の『ふぅ』殿は、エピソード183で亡くなられましたが、本来の伝承では、お二人とも、口を交わしてはいないのですよ。」
たか「されど、そのようなことは有り得ぬと?」
カネ「その通りです。私の母、百田弓矢姫(ももたのゆみやひめ)こと『ユミ』に至っては、エピソード258にて、作者の陰謀により亡くなりましたが、本来の伝承に登場するのは、父上が、義母上を妻に迎えた件(くだり)だけなのです。名のみの登場なのですよ!」
たか「そ・・・そんな・・・。酷い・・・酷うござりまする!」
カネ「そうなのです。酷いのです。更には、義母上の方が、私より若いかもしれぬのですよ!」
たか「えっ? そうなりまするか?」
カネ「私は、先代の大王(おおきみ)、九代目、開化天皇(かいかてんのう)こと『ピッピ』様の妃にございます。婚姻(こんいん)の時期から考えると、それが自然ではありませんか?」
たか「そ・・・そんな・・・。では、カネ様は、年上の娘ということにござりまするか?」
カネ「伝承に、齢(よわい)は書かれておりませんが、否(いな)とは申せませんでしょう?」
芹彦「しばし待て! 此度(こたび)は、作者の設定解説で終わってしまうのか!?」
終わってしまうのであった。
つづく
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