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JW381 弭と手末
【崇神改革編】エピソード8 弭と手末
第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。
ここは、吉備国(きび・のくに)。
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大吉備津日子(おおきびつひこ)(以下、芹彦(せりひこ))と高田姫(たかだひめ)(以下、たか)夫妻の元に、一人の女人が来訪していた。
その人物とは、芹彦の娘、包媛(かねひめ)(以下、カネ)である。
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たか「カネ様。前回、人と人とのつながり・・・と語っておられましたが、他にも有りまするか?」
カネ「そうですねぇ。エピソード318にて、大彦(おおひこ)殿が拾った、捨て子の得彦(えひこ)を存じ上げておられますか?」
芹彦「得彦か・・・。拾われて、最後まで同道しておったのう・・・。」
カネ「あれも、伝承では、拾ったと書かれているだけなのですよ。」
たか「えっ? あれも、伝承を越えた、人のつながりにござりまするか?」
カネ「それだけではありませんよ。彦坐王(ひこいます・のきみ)こと『イマス』殿が、出雲(いずも)に赴(おもむ)かれた話に、御子息の丹波道主王(たにわのみちぬし・のきみ)こと『ミッチー』殿が同道したことになっておりますが・・・。」
たか「それも、伝承を越えた、つながりなのですね・・・。」
芹彦「もう、良いではないか! それより、前々回、詔(みことのり)を発しておったであろう?! 戸口(ここう)を調べよというヤツじゃ! 他の国も捗(はかど)っておるのか?!」
カネ「はい。つつがなく進み、天神地祇(てんじんちぎ)は柔和(にゅうわ)となり、風雨は時に順(したが)い、百穀(ひゃっこく)は成熟(せいじゅく)しました。」
芹彦「ん? 要するに、どういうことじゃ?」
するとそこに、若日子建吉備津日子(わかひこたけ・きびつひこ)(以下、タケ)と、タケの子、武彦(たけひこ)(以下、たっちゃん)が乱入してきた。
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タケ「家々には物が満ち、人々も満たされ、天下は平穏となった・・・ということじゃ。」
たっちゃん「丸く収まったということにござりまするな。」
カネ「伯父上! お久しゅうございます! たっちゃん! 久しぶりですね!」
タケ「うむ。カネも、息災(そくさい)のようで、なによりじゃ。」
たっちゃん「まさか、吉備まで来られるとは・・・相変わらずの行動力にござるな。」
カネ「えっ? 行動力とは?」
たっちゃん「昔は『ピッピ様ぁぁ』『ピッピ様ぁぁ』と走り回っておったではないか。」
カネ「たっちゃん・・・。それ・・・ほとんど悪口だから・・・。」
タケ「ま・・・まあ、とにかく、調(みつき:税のこと)を取るようになったわけじゃが、オノコ(男)については、弭調(ゆはず・のみつき)を取るようになったぞ。」
カネ「獣の肉や皮など、狩りで得た物にございますね。」
たか「オナゴ(女)については、手末調(たなすえ・のみつき)を取るようになりました。」
たっちゃん「絹や布など、手作業で得た物にござりまするな。」
芹彦「そして、天下泰平というわけじゃな?! 良きかな!」
とにもかくにも、疫病は収まり、天下は落ち着いたのであった。
つづく