JW229 そして狩人は泣いた
【開化天皇編】エピソード14 そして狩人は泣いた
第九代天皇、開化天皇(かいかてんのう)の御世。
開化天皇こと、稚日本根子彦大日日尊(わかやまとねこひこおおひひ・のみこと)(以下、ピッピ)の子供たち(四兄弟)は、オリジナル設定の旅に出ることとなった。
四兄弟は、下記の通り。
長男、彦湯産隅(ひこゆむすみ)(以下、ムッシュ)。
次男、御間城入彦五十瓊殖尊(みまきいりひこいにえ・のみこと)(以下、ミマキ)。
三男、彦坐王(ひこいます・のきみ)(以下、イマス)。
四男、建豊波豆羅和気王(たけとよはづらわけ・のきみ)(以下、ヅラ)。
一行は、旅の仲間に、従兄弟の武渟川別(たけぬなかわわけ)(以下、カーケ)を迎え入れ、淡道(あわじ)に辿り着いたのであった。
淡道とは、現在の淡路島(あわじしま)のことである。
そして、一行は、旅の途次、大伯父の稚武彦(わかたけひこ)(以下、タケ)に遭遇。
タケの先導のもと、探し人の狩人(かりゅうど)がいる場所へと向かったのであった。
ミマキ「・・・ということで、ここは、どこにござりまするか?」
タケ「兵庫県南あわじ市の灘(なだ)という地域じゃ。」
ムッシュ「灘? それで、件(くだん)の狩人はどちらに?」
タケ「あそこにおる御仁(ごじん)じゃ。おぉぉい! マルセロっ!」
マルセロ「ん? おお! タケ様! どうしたんです? 戻って来られたんですか?」
タケ「いや、実はな・・・。汝(いまし)の話を聞きたいという若人(わこうど)がおってな・・・。」
マルセロ「ほう・・・。それは、それは、殊勝(しゅしょう)な事で・・・。」
イマス「して、一つ、尋ねたいのじゃが・・・。」
マルセロ「なんでしょか?」
イマス「マルセロ・・・とは、まことの名か?」
マルセロ「いえいえ、名前が残っとらんので、作者に付けてもろたんや。」
イマス「やはりな・・・。」
ヅラ「されど、なにゆえ、マルセロという名前になったんずらか?」
マルセロ「その辺は、作者の気分やな。」
カーケ「そんなことより、面妖(めんよう)なモノを見たとか、見なかったとか・・・の話が聞きたいんだぜ。」
マルセロ「せやったな。実は、わしが狩りに行っていた時のことや・・・。」
ヅラ「狩人が、狩りに行くのは、当たり前ずら!」
マルセロ「ま・・・まあ、そこで、鶴に乗って遊んでいる、変な夫婦らしき男女を見てしまったんやなぁ。」
ミマキ「つ・・・鶴に乗った?!」
マルセロ「これは、物の怪の仕業(しわざ)に違いないと思うた、わしは、矢を放ったっ!」
ムッシュ「矢は・・・刺さったのか?」
マルセロ「当然やがな! わしは、狩人やで! そして、羽に矢を受けた鶴は、そのまま東方の峰に飛んでいってしもうたんや。」
イマス「逃してしまったと?」
マルセロ「いやいや、逃してなるものかと、わしは、一所懸命に追い駆けたっ! そして、峰を登っていったんやっ!」
ヅラ「かなりの健脚(けんきゃく)ずら!」
マルセロ「そして、ついに峰の頂上に辿り着いたっ! せやけど、鶴は、どこにもおらん。その代わりとでも言うかのように、大きい榧(かや)の木が立ってたんや。」
カーケ「鶴が木になったのかね?」
マルセロ「まあまあ、最後まで聞いてくれ。その梢(こずえ)に、突然、日光と月光が現れたんやっ! そして、日光と月光は、こんなことを言いよった!」
マルセロが、内容を伝えようと、大きく手を振り上げた時、一行の前に、まばゆい光が起こり、二柱(ふたはしら)の神様が現れた。
伊弉諾神(いざなぎのかみ)(以下、なぎ)と伊弉冉神(いざなみのかみ)(以下、なみ)である。
なぎ「俺は、伊弉諾(いざなぎ)! 『なぎ』と呼んでくれ!」
なみ「私は、伊弉冉(いざなみ)! 『なみ』と呼んでね!」
ムッシュ・ミマキ・イマス・ヅラ・カーケ「ええぇぇぇ!!」×5
マルセロ「ま・・・また、現れたんですか?」
タケ「毎回、現れる仕組みになっておるのですか?」
ムッシュ「えっ? で・・・では、タケ伯父上が来た時も、出て来られたのですか?」
なぎ「仕方ないじゃないか! 家族が来店したら、特別サービスしたくなるだろ?」
なみ「今度は、ピッピも連れてきなさいっ!」
ミマキ「し・・・して、何と仰(おっしゃ)られたのでござりまするか?」
なぎ「仕方ないな・・・。今回だけ、特別だぞ! 国土安寧、五穀豊穣を守るため、この山に留まろうと思う。」
なみ「そういうことで、これからは『諭鶴羽権現(ゆづるは・ごんげん)』と名乗ることにするから! よろしくね!」
マルセロ「それを聞いて、わしは、泣いた。そして、矢を放ったことを悔(く)いて、許してくださいと叫んだやっ!」
なぎ「カッコ良かったぞ! マルセロッ!」
マルセロ「そして、わしは、狩人をやめて、この地を清め、大工(だいく)を招き、社(やしろ)を建てることにしたんやっ!」
なみ「立派な心掛けですよ! マルセロッ!」
マルセロ「こうして、ただいま建造中の神社が、二千年後の諭鶴羽神社(ゆづるはじんじゃ)になるんやで! 住所は、兵庫県南あわじ市の灘黒岩(なだ・くろいわ)やで!」
なぎ「その通り! 祭神は、俺の愛しい妻、伊弉冉と、熊野神(くまの・のかみ)だ!」
イマス「えっ? なぎ様は?」
なぎ「ま・・・まあ、熊野神は、俺とも言われてるんで、その辺は、問題ないと思ってるぜ。」
マルセロ「そして、わしが登った峰は、諭鶴羽山(ゆづるはさん)と呼ばれてるんやで!」
なぎ・なみ「以上! 諭鶴羽神社の解説でした! それじゃあ、またねぇぇ。」×2
こうして、二柱の大神は、去って行ったのであった。
つづく
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