JW299 但馬五社
【丹波平定編】エピソード6 但馬五社
第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。
黄沼前来日(きぬさき・の・くるひ)(以下、クール)は、許しを頂くため、三輪山(みわやま)の麓、磯城瑞籬宮(しきのみずかき・のみや)に来ていた。
紀元前87年、皇紀574年(崇神天皇11)3月14日のことである。
クール「ええっ!! 知らんうちに、年を越しとったんかいや!?」
そこへ、崇神天皇こと、御間城入彦五十瓊殖尊(みまきいりひこいにえ・のみこと)(以下、ミマキ)が、お出ましになった。
ミマキ「おお! クールか・・・。久方ぶりじゃのう。」
クール「本日は、御目通り叶(かな)い、恐悦至極(きょうえつ・しごく)に存じ申し上げ奉(たてまつ)りまする。」
ミマキ「堅苦しい挨拶は抜きじゃ。して、此度(こたび)は何用(なによう)で参った? 良き報(しら)せか? 悪い報せか?」
クール「此度は、御願いに罷(まか)り越(こ)しましたる次第にて・・・。」
ミマキ「願いじゃと? どのような願いじゃ?」
クール「小田井県主(おだい・の・あがたぬし)が、社(やしろ)を建てる許しを頂きたいと言うとりまして・・・。」
ミマキ「ん? その儀(ぎ)については、丹波道主王(たにわのみちぬし・のきみ)こと『ミッチー』に任せてある。それがための四道将軍(しどうしょうぐん)ぞ?」
クール「仰(おお)せは、重々承知しとります。されど、小田井県主は、大王(おおきみ)の許しが欲しいと・・・。大王の許し無く、建てるわけにはいかんと・・・。」
ミマキ「め・・・面倒な奴じゃのう。分かった。許そう。それで良いな?」
クール「かたじけのうござりまする。」
こうして、クールは、急ぎ帰国したのであった。
小田井県主「ピット」が喜んだのは、言うまでもない。
ピット「何と、ありがたきことかな! 大王に、謝(しゃ)し奉らばやっ!」
ミッチー「大儀(たいぎ)であった。」
クール「いかさま(本当に)くたぶれたわいや(くたびれたよ)。」
ミッチー「そう言うな・・・。これも多遅摩(たじま)の安寧(あんねい)がためぞ・・・。」
するとそこに、河上摩須郎女(かわかみのます・のいらつめ)(以下、マス子)がやって来た。
マス子「こうして創建されたのが、小田井縣神社(おだいあがたじんじゃ)にございますよ!」
ミッチー「祭神は、当然、大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)じゃな?」
マス子「その通りにございます。旦那様!」
クール「まだ、続いとったんかいや?」
マス子「こういうのは、形から入らんとあかんのです!」
ピット「さて、鎮座地(ちんざち)について語らねばなるまい。それは、小田井である!」
マス子「二千年後の兵庫県豊岡市(とよおかし)の小田井町(おだいちょう)になりますぅ。」
ミッチー「これで・・・。これで、ようやく、五つ揃(そろ)ったのじゃな・・・。」
クール「五つ? 何だいや?」
ミッチー「エピソード297から紹介してきた、五つの社を但馬五社(たじまごしゃ)と呼ぶのじゃ。多遅摩の安寧を願い、それがしが建てたと伝わっておる。」
クール「は? ちょっと待ちにゃぁ! 創建年代が、バラバラだったわいや! ホンマかいや?」
ピット「小田井縣神社(おだいあがたじんじゃ)については、吾輩(わがはい)の発願(ほつがん)によるモノと伝承が残っているのである。」
クール「名無しの県主だけどなぁ・・・。」
ピット「それとこれとは、別儀(べつぎ)である!」
マス子「まぁ、ええやないですか。人生いろいろ、伝承もいろいろ・・・って言うでしょ?」
クール・ピット「言わん!」×2
ミッチー「仕方あるまい。伝承とは、様々な切り口で語られるモノなのじゃ。」
クール「そんでも・・・。」
ミッチー「彦五十狭芹彦(ひこいさせりひこ)こと、芹彦(せりひこ)先生が言っておった。分からぬからこそ、ロマンが有る・・・と。人々から、ロマンを奪ってはならぬ・・・とも・・・。」
ピット「格好よく言っているが、結局、言い訳なのである。」
マス子「まぁ、ええやないですか。それより、但馬五社の『まとめ』に入りましょ。」
ミッチー「そうじゃな。粟鹿神社(あわがじんじゃ)、養父神社(やぶじんじゃ)、出石神社(いずしじんじゃ)、絹巻神社(きぬまきじんじゃ)・・・。」
ピット「そして、小田井縣神社(おだいあがたじんじゃ)の五つである。」
ミッチー「その通りじゃ。」
クール「おお! 神々よ! 多遅摩を守りたまえ!」
ミッチー「幾久(いくひさ)しく、多遅摩を御守りくださるであろう。」
ピット「では、一段落ついたので、吾輩は、館(やかた)に戻ろうと思うのである。」
ミッチー「左様か・・・。大儀であった。では、それがしたちも戻ろうぞ。」
クール「戻るって、どこに?」
ミッチー「決まっておろう。川上郷(かわかみ・のさと)の須田(すだ)じゃ。」
クール「は? なんで?」
ミッチー「そ・・・それは、父上殿に、お許しを頂くためじゃ。」
ピット「何の許しか、全く分からないのである。」
ミッチー「そ・・・それは、夫婦(めおと)となる許しじゃ・・・。」
マス子「えっ? 旦那様?」
ミッチー「マ・・・マス子。いついつまでも、それがしの傍(そば)にいてくれぬか?」
マス子「旦那様ぁぁ!(⋈◍>◡<◍)。✧♡ 当たり前やないですかぁ! 幾久しくぅぅ!!(〃▽〃)」
ピット「たいへん、御見苦しいところを見せてしまったのである!」
クール「こ・・・こげな展開になるとは・・・。」
こうして、但馬五社が創建され、多遅摩は、神々の力によって守られることとなった。
そして「ミッチー」は、結婚の許しをもらえるのであろうか?
次回につづく
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