JW428 二つの鏡
【崇神経綸編】エピソード3 二つの鏡
第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。
紀元前47年、皇紀614年(崇神天皇51)4月8日。
天照大神(あまてらすおおみかみ)(以下、アマ)の新たな鎮座地(ちんざち)を求める旅が再開した。
御杖代(みつえしろ)の豊鍬入姫(とよすきいりひめ)(以下、きぃ)は、木国(き・のくに:現在の和歌山県)にて、奈久佐浜宮(なぐさの・はまのみや)の解説をおこなう。
そして、候補地の一つ、濱宮(はまのみや)の鎮座地(ちんざち)が、和歌山県和歌山市の毛見(けみ)であると語る。
それを聞き、母親の遠津年魚眼眼妙媛(とおつあゆめまぐわしひめ)(以下、アユ)が、過敏に反応した。
初代、神武天皇(じんむてんのう)が上陸した地だったからである。
アユ「・・・ということで、所縁(ゆかり)の地である、濱宮で決定ね!」
きぃ「母上? 他にも、候補が有ると申したではありませぬか。」
アユ「えっ? そうだっけ?」
ここで「アユ」の従兄弟で、木国造(き・のくに・のみやつこ)の大名草彦(おおなくさひこ)(以下、草彦)と、その子、菟道彦(うぢひこ)(以下、うぢお)と影媛(かげひめ)が反応した。
草彦「もう一つ、候補地が有るのじゃ。その名も、日前宮(にちぜんぐう)じゃ。」
うぢお「和歌山市の秋月(あきづき)に鎮座しておりまする。エピソード28,29、30で解説されておりまするぞ。『アマ』様が岩戸隠れ(いわとがくれ)をなさった折、石凝姥(いしこりどめ)が鋳造(ちゅうぞう)した、二つの鏡を祀(まつ)っているのでござる。」
影媛「日像鏡(ひがた・のかがみ)と日矛鏡(ひぼこ・のかがみ)にござりまする。」
アユ「ちょっと! 私だって、木国の女よ! それくらい知ってるわよ! 日像鏡が日前神宮(ひのくまじんぐう)で、日矛鏡が國懸神宮(くにかかすじんぐう)なのよ!」
草彦「その通り! 二つ合わせて、日前宮じゃ。『アマ』様に所縁の有る社(やしろ)なのじゃ。」
アマ「汝(なびと)ら・・・まだまだじゃのう。汝らの時代は、琴の浦(ことのうら)の海上の岩に鎮座しておるのじゃぞ? 和歌山市秋月などと・・・片腹痛いわ!」
草彦・うぢお・影媛・アユ・きぃ「えっ?」×5
きぃ「さ・・・されど、エピソード28から30までの解説で、そのようなことは語られておりませぬが? 御初代様が、忘れておられたということですか?」
アマ「いや、忘れていたというより、神武東征(じんむとうせい)の、その後を語る予定ではなかったのでな・・・。それゆえ、最終鎮座地の説明で終わってしもうたというわけじゃ。」
草彦「で・・・では、いつ遷座(せんざ)したのでしょうか? お教えくださりませ。」
アマ「うむ。良かろう。まず、日前宮は、前回紹介した、濱宮に遷(うつ)っておるぞ。」
うぢお「濱宮が創建された折に『アマ』様と共に、二つの鏡が祀られたと?」
アマ「その通りじゃ。その後・・・あっ・・・。」
きぃ「ん? アマ様? 如何(いかが)なされました?」
アマ「フ・・・フライングになるのじゃが、わらわは、その後、別の地に遷るのじゃ。」
アユ「はぁぁ? 何、言ってんのよ! なんで、遷っちゃうのよ!」
アマ「し・・・仕方なかろう!」
日前宮と濱宮についての解説はつづく。