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戦地からの便り(14)
ああ同期の桜‥‥特攻隊員の手記‥‥
昭和二十年二月二十二日、元山航空隊にて
遂に特別攻撃隊神風特攻隊員となる。
来るべき三十日間、余の真の人生なるか。
時機到る焉。
死ぬる為の訓練が待つてゐる。
美しく死ぬる為の猛訓練が。
悲壮なる祖国の姿を眺めつつ余は行く。
全青春を三十日間にこめて、人生駈け足に入る。
われらは喜んで国家の苦難の真ッ只中に飛込むであらう。
われらは常に偉大な祖国、美しい故郷、強い日本女性、美しい友情のみ存在する日本を、理想の中に堅持して敵艦に粉砕する。
今日の務は何ぞ、戦ふことなり。
明日の務は何ぞ、勝つことなり。
すべての日の務は何ぞ、死ぬことなり。
われらが黙つて死んで行くやうに、科学者も黙つて科学戦線に死んで戴きたい。
その時はじめて日本は戦争に勝ち得るであらう。
若し万一日本が今ただちに勝つたら、それは民族にとつて致命的な不幸といはねばならない。
生易しい試練では民族は弱められるばかりである。
海軍大尉 岡部平一命
昭和二十年(1945)四月十二日
南西諸島方面にて戦死
福岡県糸島郡芥屋村出身
二十二歳