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JW300 羽衣を隠した翁
【丹波平定編】エピソード7 羽衣を隠した翁
第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。
丹波道主王(たにわのみちぬし・のきみ)(以下、ミッチー)は、但馬五社(たじまごしゃ)を創建した。
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そして今は、結婚の許しをもらうため、川上郷(かわかみ・のさと)の須田(すだ)に来ているのであった。
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河上摩須郎女(かわかみのます・のいらつめ)(以下、マス子)が寄り添う中、「ミッチー」は、彼女の父に語り掛けるのであった。
ミッチー「そういうわけで、それがしは『マス子』殿を妻に迎えたいと思うておりまする。どうか、御願い致しまする。父上殿!」
懇願する「ミッチー」に「マス子」の父、尾張建諸隅(おわり・の・たけもろすみ)(以下、ケモロー)が吼える。
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ケモロー「とろくしゃぁ(馬鹿げた)こと、言わんでちょうだゃぁ(ください)! 『ミッチー』様と、我(われ)の娘が夫婦(めおと)になるんは、台本通りだがや!」
マス子「では、お父様? 許してくださりますの?」
ケモロー「たぁけぇ! だだくさに(無駄に)紙面を使うて、どうするがや。それより、尾張氏が治める、久美浜(くみはま)にも神社を建ててちょうだゃぁ(ください)。」
ミッチー「か・・・かしこまりもうした。」
ケモロー「これが、初の夫婦共同作業だがや。」
マス子「お・・・お父様・・・(´∀`*)。」
ミッチー「では、社(やしろ)を建てる前に、それがしたちの新居を建てようぞ。」
マス子「えっ? 新居?」
ミッチー「そうじゃ。比治(ひじ)の真名井(まない)に館(やかた)を構えたのじゃ。」
マス子「ええぇぇ!! ホンマですか!?」
ミッチー「何を驚いておるのじゃ?」
マス子「旦那様? 比治、言うたら、比治山(ひじやま)のことなんですよ?」
ミッチー「比治山?」
マス子「二千年後の磯砂山(いさなごやま)のことですぅ。」
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ミッチー「よ・・・良いではないか。見晴らしも良いぞ。」
マス子「何を言うてはりますの?! 不便極まりないやないですか! スーパーに買い物へ行くにも、車が無いとキツいですよぉ?」
ミッチー「心配致すな。車も無ければ、スーパーも無い。」
ケモロー「でもよぉ。なんで、真名井(まない)の傍に館を建てたんだ? 天女の羽衣伝説(はごろもでんせつ)が気に入ったんきゃ?」
ミッチー「羽衣伝説? 父上殿。それは如何様(いかよう)な伝説にござりまするか?」
ケモロー「知らずに建てたんきゃ?」
マス子「では、神社創建の前に、羽衣伝説について解説致しましょう。それは遠い昔のこと・・・。八人の天女が、真名井で水浴びをしてはったんですぅ。」
ミッチー「ん? 真名井で水浴び?」
ケモロー「真名井っちゅうのは、池の名前だで。」
ミッチー「井戸ではなく、池だったのか・・・。」
マス子「そうですぅ。それを、麓(ふもと)に住む、和奈佐(わなさ)という翁(おきな)が見てはったんですけど、和奈佐は、何を思ったのか、羽衣を隠して、帰られへんようにして、自分の娘にしてしまったですよ。どう思います? 旦那様。」
ミッチー「けしからんっ! されど、どこかで聞いたことの有る話じゃ。」
ケモロー「中臣伊香津臣(なかとみ・の・いかつおみ)こと『イカ』殿の話でないきゃ?」
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ミッチー「そうであった。エピソード221じゃ。たしか、あの話も八人の天女だったような・・・。」
ケモロー「その通りだがや! ただ、よう似た話だけどよぉ。あっちは、嫁にしとっただろ?」
ミッチー「ああ・・・。こちらでは、娘になっておるのですな。」
マス子「ええっと、それで、ですねぇ。帰れなくなった天女は、稲作をおこない、万病を癒(いや)す酒を造ったそうなんですよ。おかげで、翁の家も裕福になったみたいですねぇ。」
ミッチー「それで、めでたしめでたし・・・というわけか。」
マス子「旦那様? そないな話や有りませんよ。こっからが酷(ひど)いんです。」
ミッチー「酷い?」
マス子「裕福になった翁は、天女に対して、こう言ったんですよ。『汝(なびと)は、我(われ)の子にあらず。』とっ! そして、家から追い出してしもたんです!」
ミッチー「なんじゃとぉぉ!! けしからんっ! 叩(たた)っ斬ってくれるわ! すぐに和奈佐を召し連れて参れっ!」
マス子「旦那様? 遠い昔の話って言うたでしょ?」
ミッチー「あっ! そうであった・・・。す・・・すまぬ。」
ケモロー「まあ、腹が立つんも分かるがや。」
ミッチー「して、天女は、どうなったのじゃ?」
マス子「天女は・・・(´;ω;`)ウッ…。泣く泣く放浪し、ついには、竹野(たかの)の舟木郷(ふなき・のさと)で亡くなりはったんですぅ・・・( ノД`)。」
ケモロー「舟木郷は、京都府京丹後市(きょうたんごし)の弥栄町船木(やさかちょう・ふなき)のことだで。」
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ミッチー「なんと悲しい物語じゃ・・・。そして、事件現場の傍に、館を建ててしもうたのか・・・。」
マス子「そうですぅ。ちなみに、二千年後は、女池(めいけ)と呼ばれてます。諸説有るみたいですけど、ここが一番有名みたいですねぇ。」
ミッチー「磯砂山(いさなごやま)の頂(いただき)から、少し下ったところなのじゃな・・・。」
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ケモロー「それで・・・。なんで、ここに建てたんだ?」
ミッチー「えっ?」
ケモロー「我(われ)の館から、離れたところに建てんといかん訳(わけ)でも?」
ミッチー「ええ・・・。あのう・・・。あっ! 神社の創建が、まだであった!」
ケモロー「あっ! 逃げるんきゃ?!」
こうして、羽衣伝説に紙面を割かれ、神社創建については、何も語れなかったのであった。
つづく