JW505 伊久良河宮
【垂仁天皇編】エピソード34 伊久良河宮
第十一代天皇、垂仁天皇(すいにんてんのう)の御世。
年が明け、紀元前20年、皇紀641年(垂仁天皇10)となった。
ここは、淡海国(おうみ・のくに:現在の滋賀県)の坂田宮(さかた・のみや)。
天照大神(あまてらすおおみかみ)(以下、アマ)の御杖代(みつえしろ)、倭姫(やまとひめ)(以下、ワッコ)は、粛々(しゅくしゅく)と答えるのであった。
ワッコ「遷座(せんざ)にござりまするな? 次は何処(いずこ)に遷(うつ)られまする?」
アマ「うむ。此度(こたび)は、三野国(みの・のくに)に遷ろうと思う。二千年後の岐阜県南部じゃ。」
そこに、三人の人物がやって来た。
采女(うねめ)の香刀比売(かとひめ)(以下、カット)。
大称奈(おおねな)(以下、ねな)。
「ねな」の弟、大荒(おおあら)(以下、アララ)である。
カット「此度の宮の名は、伊久良河宮(いくらがわ・のみや)にござりまする。」
ねな「そして、候補地についてだけど、とりあえず、三つ有るのよ。」
ワッコ「とりあえず? それは、どういうことじゃ?」
ねな「そういう無粋(ぶすい)なことは、聞いちゃダメなのよ!」
アララ「あらら・・・。そういうことになっちゃった。」
ワッコ「と・・・とにかく、解説を始めようぞ・・・。」
カット「で・・・では、解説を始めまする。まず一つ目が、天神神社(てんじんじんじゃ)にござりまする。鎮座地(ちんざち)は、岐阜県瑞穂市(みずほし)の居倉(いくら)となっておりまする。」
ねな「でも、祭神(さいじん)が、高御産巣日神(たかみむすひのかみ)と神産巣日神(かみむすひのかみ)になってるわよ?」
カット「それでも候補地なのじゃ。『伊久良河宮跡』と書かれた石碑も有るしな・・・。」
アララ「あらら・・・。そういうことになっちゃった。」
カット「ちなみに、本殿の右側には『ワッコ』様の神輿(みこし)を安置したという、御船代石(みふなしろいし)も有りまする。」
ねな「じゃあ、二つ目ね。その名も、宇波刀神社(うばとじんじゃ)よ。岐阜県安八町(あんぱちちょう)の森部(もりべ)に鎮座してるわ。」
ワッコ「こちらの祭神は『アマ』様と豊受大神(とようけのおおかみ)となっておるゆえ、問題は無さそうじゃな・・・。」
カット「ちなみに『ワッコ』様も祀(まつ)られておりまするぞ。」
ねな「でもね・・・。ちょっと問題が有るのよ。」
ワッコ「えっ? それは、どういうことじゃ?」
ねな「実はね・・・。宇波刀神社(うばとじんじゃ)には、もう一つの説が有るの。それが、岐阜県神戸町(ごうどちょう)の神戸(ごうど)に鎮座する、宇波刀神社(うわとじんじゃ)よ。」
ワッコ「字は同じじゃが、読み方が違うのじゃな・・・。それに、祭神が、宇波刀大神(うわとのおおかみ)となっておるぞ。これは、どういうことじゃ?」
ねな「よく分からないけど、西暦927年(延長5)に作成された『延喜式神名帳(えんぎしき・じんみょうちょう)』っていう、神社のリストに『宇波刀神社』と書かれてるんだけど、こっちが本物だ、いや、こっちが本物だ・・・って、主張し合ってるのよね。まあ、ロマンってことね。」
アララ「あらら・・・。そういうことになっちゃった。」
ねな「あと、安八町の宇波刀神社は、伊久良河宮の候補地なのに、神戸町の宇波刀神社は、候補地じゃないのよ。可笑しいでしょ?」
ワッコ「や・・・ややこしい話になっておるが、伊久良河宮の候補地は、安八町の宇波刀神社だけなのじゃな?」
ねな「そういうことね。」
ワッコ「で・・・では、最後の三つ目に参ろうぞ・・・。」
カット「か・・・かしこまりました。三つ目は、名木林神社(なぎばやしじんじゃ)にござりまする。」
解説は続くのであった。
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