JW251 選ばれし皇女
【疫病混乱編】エピソード3 選ばれし皇女
第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。
ここは磯城瑞籬宮(しきのみずかき・のみや)。
疫病の大流行に心を痛める、崇神天皇こと、御間城入彦五十瓊殖尊(みまきいりひこいにえ・のみこと)(以下、ミマキ)は、神々と対話をおこなうため、寝たのであった。
夢の中に現れたのは、天照大神(あまてらすおおみかみ)(以下、アマ)であった。
アマ「ミマキ・・・ようやく寝る決意が出来たのじゃな・・・。」
ミマキ「お・・・お初にお目にかかりまする。ミマキにござる。」
アマ「知っておる。目的は、此度(こたび)の疫(やく)についてであろう?」
ミマキ「は・・・話が早い。如何(いか)にすれば良いのでしょうか?」
アマ「わらわと、もう一柱(ひとはしら)の神を別々に祀(まつ)るのじゃ。」
ミマキ「もう一柱の神とは?」
アマ「日本大国魂神(やまとのおおくにたま・のかみ)じゃ。」
ミマキ「宮中にて、アマ様と一緒に祀っている神様ですな?」
アマ「その通りじゃ。エピソード122にて、五代目が共に祀り始めたが、先方は、わらわと共にいるのが、気に入らぬそうじゃ。」
ミマキ「ご・・・五代目様の頃から祀っているというに、なにゆえ、今頃になって?」
アマ「堪忍袋の緒が切れたのであろうな・・・。」
ミマキ「さ・・・されど、なにゆえ、アマ様と一緒が嫌(いや)などと・・・。」
アマ「わらわが、高千穂(たかちほ)からやって来た部外者だからであろう。」
ミマキ「ぶ・・・部外者?」
アマ「日本大国魂神(やまとのおおくにたま・のかみ)は、元から、中つ国に鎮(しず)まっていた神。それに引き換え、わらわは、遠い高千穂からやって来た、よそ者・・・というわけじゃ。」
ミマキ「なっ!? なんという了見の狭い・・・。」
アマ「迂闊(うかつ)なことを申すでない! 聞いておるかもしれぬぞ。」
ミマキ「と・・・ところで、その日本大国魂神(やまとのおおくにたま・のかみ)は、なにゆえ出て来ぬのですか?」
アマ「顔も見たくないということであろう。」
ミマキ「ひ・・・ひどい・・・(´;ω;`)ウッ…。」
アマ「では、別々に祀るのじゃぞ。」
ミマキ「それで、疫は収まるのですな?」
アマ「そればかりは分からぬ。」
ミマキ「えっ?!」
アマ「ただ、やってみる価値は有ると思うぞ・・・。」
ここで、ミマキは目が覚めた。
傍らには、心配そうに眺める、大后(おおきさき)の御間城姫(みまきひめ)(以下、みぃ)がいる。
みぃ「大王(おおきみ)・・・。如何(いかが)でした?」
ミマキ「う・・・うむ。天照大神(あまてらすおおみかみ)と日本大国魂神(やまとのおおくにたま・のかみ)を別々に祀れとのことであった・・・。」
みぃ「それで、疫は収まるのですね?」
ミマキ「そうであってほしいが・・・。」
こうして、二柱(ふたはしら)の神は、別々に祀られることとなった。
まず、ミマキは、二人の皇女(ひめみこ)を呼び出した。
豊鍬入姫(とよすきいりひめ)(以下、きぃ)と渟名城入姫(ぬなきいりひめ)(以下、ナッキー)である。
きぃ「大王・・・。ただいま参上致しました。」
ナッキー「何事にございますか?」
ミマキ「うむ。神々を祀ってほしいのじゃ?」
きぃ「神々を祀る?」
ナッキー「それは大王の務めでは?」
ミマキ「うむ。本来ならば、そうなのじゃが、此度は疫に関わることでな・・・。」
きぃ「疫を収めるためなのですね?」
ナッキー「そ・・・それって、超重要案件ってことよね?」
ミマキ「その通りじゃ。そこで、『きぃ』はアマ様を祀ってくれ。そして、『ナッキー』は日本大国魂神(やまとのおおくにたま・のかみ)を祀ってくれ。」
きぃ・ナッキー「えっ?」×2
ナッキー「大王・・・。言ってる意味が分かんないんだけど・・・。」
きぃ「そうです。その二柱は、宮中で祀られているではありませぬか。父上と同じ床(とこ)に?」
ナッキー「父上が、そんな御方だったとは・・・。娘として、ショックです!」
ミマキ「呆(ほう)けたことを申すでない。祀る場所は、変える。安心致せ。」
ナッキー「心から安心しました。」
きぃ「とにかく、これで疫が収まるのですね。そのためならば、何でも致しまする。」
ミマキ「よくぞ申した。古来より、神々に仕えるは、オミナ(女)の務め。原点回帰というわけではないが、汝(いまし)らに、この国の行く末を託す。頼んだぞ!」
きぃ・ナッキー「御意!」×2
こうして、二人の皇女は、神々を祀る役目に任じられたのであるが、それからしばらくして・・・。
日本大国魂神(やまとのおおくにたま・のかみ)を祀る係の「ナッキー」が、泣きながら帰ってきた。
髪は抜け落ち、身体は瘦(や)せ細っている。
祭祀(さいし)の継続が困難であるのは、誰の目にも明らかであった。
ナッキー「お・・・大王・・・。も・・・申し訳ありません・・・。」
ミマキ「な・・・なんということじゃ・・・。『ナッキー』? 大事ないか?」
ナッキー「大王・・・。父上・・・。ご・・・ごめん・・・。私・・・私・・・(´;ω;`)ウッ…。」
ミマキ「もう良い。何も申すな。よう頑張った。汝(いまし)は、よう頑張ったのじゃ。」
ナッキー「父上ぇぇ!!・・・( ノД`)シクシク…」
ミマキ「許せ! 『ナッキー』! わしの所為(せい)じゃ! わしに徳が無いばかりに、汝(いまし)を、そのような目に・・・(´;ω;`)ウッ…」
未だ収まらぬ疫病。
一体どうなってしまうのか・・・。
次回につづく
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