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2021年9月の記事一覧
【児童文学】どんぶりこがやってきた(終)
9.どんぶりこ?!
あっという間に春休みが終わり、五年生になって、やっと夏休みがやってきた。
また、ひめの世話をしてほしいとたのまれて、久しぶりに愛ちゃんの家にやって来た。
「ひかる、いらっしゃい。ひかるが帰ってから、ひめがすごくさびしがってたのよ」
「そっか、ごめんごめん」
ひめって、やっぱり見ているだけでいやされる。
「でもだいじょうぶ。もう一頭飼うことにしたから」
「え、そうなの?
【児童文学】どんぶりこがやってきた⑦
7.黒天女のこうげき
「ワンワン! ワンワン!」
ひめが、庭の方ではげしくほえている。
「テンションマックスじゃん。あいつ、かっこよくなったのがよほどうれしいんだなあ」
「いやちがう。ひかる、来るのじゃ」
どんぶりこが、急いで庭にむかった。どうしたっていうんだ。
外にでると、ひめが屋根にむかってほえていた。屋根にずらっとならんだカラスが、声も立てずにじっとこっちを見おろしている。
「いつ
【児童文学】どんぶりこがやってきた⑥
6.特別な実
あしたは、愛ちゃんが帰ってくる日。ぼくは、どんぶりことすっかりなかよくなっていた。
どんぶりこが床の間で、小銭を入れたつぼの中をのぞいていた。そんなの見るとやっぱり気になる。
「なあどんぶりこ、その小銭どうするのか、ぼちぼち教えてくれよ」
「よかろう、教えてやろう。小銭もこれだけあればじゅうぶんじゃ。この小銭はな、願いがかなう実を作る時の肥料にするのじゃ。ひかる、こっちに来る
【児童文学】どんぶりこがやってきた⑤
5.ガチャマシンで金もうけ
久しぶりに、ひめとぼくだけでまったりした時間をすごす。が、そんな時間は長くはつづかなかった。やっぱり。
昼前には、どんぶりこが帰って来た。どうやってかせいだのか、ふところから百円玉をだし、床の間にあるつぼの中にジャラジャラと入れた。
「ひかる、おまえにも小銭のかせぎ方を教えてやろう」
「別にいいよ」
「おもしろいぞ」
「いいってば」
「そうか、おまえは疲れて帰っ
【児童文学】どんぶりこがやってきた④
4.カプセルの実
トイレからでてくると、ひめがどんぶりことじゃれあっていた。もう手なずけたのか。どんぶりこおそるべし。
「さてと、種も見つかったし、わしは帰ることにする。あとはひめと仲よくやってくれ」
どんぶりこは、着ているパーカーのポケットからカプセルを取りだして、すきっ歯まるだしで笑った。
「え、種? カプセルの中にあったのか?」
「それがの、このフードの中にあったのじゃ」
どんぶり
【児童文学】どんぶりこがやってきた③
3.どんぶりこ、いすわる
「おい、坊主。おまえ、いつまでいるんだ? ジュース飲んだら気がすんだだろ」
「坊主? わしのことか?」
「他にいないだろ」
「わしには、曇天鰤太古(どんてんぶりたいこ)という立派な名前がある。ひとよんで『どんぶりこ』じゃ。最初に名のったであろう」
「うそだ、聞いてないよ」
「『どんぶりこー、誰かおるかのう』と言うた」
そんなのわかるわけない。
「そういうおまえは誰じ
【児童文学】どんぶりこがやってきた②
2.あやしい坊主
愛ちゃんはかあさんの妹だけど、愛ちゃんってよばないといけない。おばちゃんって言うと、きげんが悪くなる。
夕べぼくは、その愛ちゃんが持って帰って来た、ごうか弁当をお腹いっぱい食べて、朝はササッと焼いてくれたトーストを食べた。それから愛ちゃんは、ぼくの昼ごはんのお金をおいて、バタバタとでかけて行った。ふう……、急にガランとする。
ふた間つづきの広い客間に納戸、ほとんど使って
【児童文学】どんぶりこがやってきた①
1.愛ちゃんの家へ行く
春休み最初の日、朝ねぼうをしても怒られないはずの日に、いきなりかあさんに起こされた。
「ひかる、起きなさい。あんた春休みに何もやることないんでしょ。愛ちゃんがひめの世話をしてほしいんだって」
「愛ちゃんが?」
「そう、なぜかひかるによくなついているからって」
「えー、どうしようかなあ」
ひめは、ブルテリアっていう種類のメス犬。短い毛でがっちりした体に、のっぺりした