連載「菌活ボーイがゆく」⑧
⑧アヒージョへの道(下)
さっちー師匠から託されたキジトラ流「ニンニク塩こうじ」奥義書。
アヒージョの作り方まで伝えていた。
分量を厳密に計測し、塩こうじを完成させた僕。
アヒージョまであと一歩の段階にたどり着いていた。
魚介類を買った経験なし。
朝昼晩3食とも食べねばならなくなるかもしれない。
一瞬ひるんだ。
だが、アヒージョ愛はくじけなかった。
スーパーに全力疾走しよう。
あとは小鍋で煮込むだけ。
「油は高温になるから、アルミ鍋だと変形するにゃん」
その時、師匠の声が聞こえた。
知らなかったあ。
「じゃあ、フライパン」
「油に厚みが必要だから、油が大量にいるにゃ~」
知らなかったああ。
アヒージョ鍋の形には意味があったのだ。
厚くて、小ぶり。
奇妙だとは思っていた。
アヒージョには、鍋も必要だったのか。
知らなかったあああ。
塩こうじのボトルを持ち、立ち尽くす僕。
さっちー師匠が、ビシッと指さした。
「甘~い」
(続く)