警戒してくる5人の子どもに、ド肝の抜き方おしえちゃる!
そりゃ私にだって、いとこがいる。
彼は私の一歳上で、北海道の港町で漁師をやっている。若くして結婚し、北海道の田舎に戸建て住宅を建て、5人の子宝に恵まれている。
子どもが5人だ。
1番上のタローは、男の子で12歳。
2番目のジローも、男の子で11歳。
3番目のサブローは、男の子で9歳。
末っ子のハナコとキョウコは、
双子の女の子で6歳。
末っ子が一卵性の双子だと分かったときは、いとこ夫妻で頭を抱えたらしい。ただでさえ3人の男の子の育児で大変なのに、そこにまた2人同時に女の子。
いとことは、小さなころによく会っていた。
歳がひとつしか変わらないから、兄弟のような感覚で、離れた場所に住んでいたけど、たまに会えばよく遊ぶ。
…
30歳になったとき、ヘタをすると十数年ぶりくらいに、そのいとこに会う機会があった。
保険の提案のためだ。
私の仕事は、生命保険外交員。これは保険業界の悪しき風習。親類縁者、友人知人、今まで出会ってきたすべての人をリストアップして、絨毯爆撃をしていく。
当時の私はこの風習がイヤで、本当に近しい友人には連絡をすることもなかった。が、このいとこには連絡をした。
いとこは5人のかわいい子どもたちを育てる真っ最中。
その途中で万が一があったときに
路頭に迷うのは奥さんだし、
他ならぬこの子たちである。
うん、これは行くべきだ。
売上がどうとかは関係ない。
使命感の押し付け。
私が学んだ知識を伝えて、彼らに判断してもらえればいい。そう思って会いに行った。約十数年ぶりだ。
いとこ夫妻は私をこころよく受け入れてくれて、ほぼ初めましての奥さんもニコニコしている。5人の子どもたちはリビングでワーキャー騒ぐ。この子たちに会うのも、初めてだった。
漁師のいとこが子どもたちに説明する。
子どもたち5人は、初めて会う私に警戒しきりだったけど、いとこのその説明に合点がいったのか、
と言って、次第にニコニコとし出す。が、
それほど私に話しかけてくることもなかった。
結局、いとこ夫妻の保険は私が預かることになった。これで何が起きても大丈夫。夫妻もニコニコして、私は家路についた。
…
2年後。
保険のメンテナンスのために、再度いとこの家に行った。先日のことだ。この記事はなにも悲しい話ではない。
約2年ぶりにいとこに会う。
奥さんも変わらない。
子どもたち5人は?
2階でゲームをしているようだった。
ひと通りのお話が終わって、いとこが子どもたちを呼んだ。「ダーキが来てるから、顔を見せにおいで」と呼びかける。
すると、5人がリビングにズダダダ〜!っとなだれ込んできた。
約2年ぶり。
きっと彼らは私を覚えてない。
ここは1発、ド肝を抜こうと思って、私は事前に覚えてきた5人全員の名前と生年月日を順番に言う。2年前に全て聞いてメモして覚えるだけ。
「君はタローで、何月何日うまれ」
「君はジローで、何月何日うまれだね」
「君はサブローで、何月何日うまれだ」
「で、ツインズの2人はハナコとキョウコで、
何月何日うまれだもんね」
「みーんな、ずいぶんおっきくなったじゃん!」
久しぶりに現れた謎のおじさんが、知るはずもない自分たちの名前と誕生日を、すべて言ってくるもんだから驚いたようだったけど、私がずっとニコニコしていたもんだから、次第に打ち解ける。
矢継ぎ早に話しかけてくる。子どもたちのために事前にたくさんのお菓子を買って行ったから、それを渡す。みんなピカピカだ。
いとこは言う。
元来、私は子どもが苦手だった。話が通じないから。が、血のつながりを感じると、大好きになる。姪っ子とよく会うようになったから、少しはわかる。
たくさん話を聞いて、疑問をもたせて考えさせて、あはは、と心から笑って褒める。大人と同じ。もちろん、それが全てではないし、きっと毎日はできないけれど。
うん、いまこの記事をここまで書いて確信する。
子どもって、なんて可愛いんだろう。
可能性のかたまりだ。
目の前には、私と血のつながった5人の可能性のかたまりが、ワキャワキャしている。
それが愛しい。
そうか、親せきのおじさんは、
こんな気持ちだったんだ。
父さんと母さんは、
どんなに大変だっただろう。
私もずいぶん変わったものだね。
私に子どもがいたら、
毎日どんなに楽しいだろうか。
…
そのうち、サブローがポケモンカードを見せてきた。ポケモンカードの束だ。「これはディアルガで、これは〇〇、これはレアなやつで〜」と語ってくる。
ほえ〜、と話を聞いていた私だが、
ピコーンとひらめいた。
よし、マジックを見せてあげよう。
…
中学2年のとき、手品にハマった。
見る人にびっくりしてもらいたくて、カードマジックやコインマジック、古典的なものから当時の最新のものまで、自分で鏡を見ながら研究して、そうして手品を習得した。
むかし取ったキネヅカってやつである。
この日、この子たちに見せたマジックはいくつかあるが、その中で最も彼らが驚いたのは、
アンビシャスカード。
…
「よ〜し、君たち、手品は見たいかい?」
「じゃあ、このポケモンカードを使おう」
「じゃあ、どのポケモンとも被ってない、この家に1枚だけのカードはあるかい?」
「じゃあ、これね。
みんな、俺の前に来てごらん」
5人の子どもたちが、すっとぼけた可愛らしい顔で私の前に座る。これからどんな手品が見られるんだろう? という期待が、むくむくとリビングに立ち込める。
(よし、久しぶりだけど、やってみっか)
というわけでやってみた。
いとこ夫妻もしげしげと見ている。
カードを山札の中に入れて指をパチンと鳴らす。
すると、不思議なことにカードが上にくる。
また山札の中に入れて、指をパチン。
キミョウキテレツ、カードはまた上にくる。
5人の子どもたちはどう反応したか。
ぎょえええええええええええええ!?
…なんだろう。
BTSがライブで浴びる歓声って、これなんだろうな、と思うほどの歓声だった。いとこ夫妻も口をあんぐりしている。
ジローが言う。
そんな可愛いこと言うもんだから、
私はニヤニヤしながら、
「君たち、驚くのはまだ早い」
「ジロー、本当に100円を俺にくれるのかい?
いま君は、冷静さを欠いているぞ?」
「じゃあ、もしこれで上にきてなかったら、
俺はジローに100万円あげよう」
するとジローは、
と反応してたから、また指を鳴らす。
パチンと。
するとあら不思議、
カードはまた山札の上にきた。
ジローは飛び跳ねて「すげー!すげー!」と大はしゃぎ。末っ子の双子はおんなじ顔をして、ギャーギャー騒いでる。
続けてコインマジックをして、
みんなの100円玉を次々と消し去った。
と言ってるタローに「自分のポケットを見てみたまえ」と言うと、タローはポケットに手を入れて「ぎゃあああああああ!!!」と楽しそう。
…
帰り際、子どもたちは揃いも揃って、
と言っていたから、帰るのが辛かったけど、
「また必ず来るから。パパとママの言うことをよく聞いて、仲良くするんだよ。次は手品のタネ明かしをしてあげるから。これは約束だぜ」
と言ったら、全員が、
とリビングを走り回っていた。
いとこからは、海の幸と山の幸をたくさんもらった。家を出て車に乗って、じゃあね、と手を振った。
家族みんなが外に出てきて叫んでて、あぁこの光景はどこかで見たことがあるな、と思いながら帰る。
帰りの車の中、私がニコニコしていたのは、
わざわざここに書くまでもない。
◾️おんなじ光景は、この記事のエピソード!
【絶対聴いて!】今夜9時からライブで文章談義!