False personality(偽りの人格)理論
あなたは就転職の際、自分を偽っている感覚に陥った経験がありますか?
履歴書や職務経歴書、エントリーシートなどに自分の過去を棚卸ししていく過程で、自分の過去であるのに虚無感に襲われたり、まるで他人事のように感じたことはないでしょうか?
これらの感覚は、就転職において目指すべき自己理解の境地から、自我を大きく遠ざけてしまう感覚です。
「自分は本当に、このような考えなのだろうか?」
「今書いている志望動機は、取ってつけた言葉ではないだろうか?」
自分の思考と就転職を果たすというミッションを遂行するための行為の狭間で、「本当の自分の気持ちって何だろう?」と戸惑うことがあると思います。
少なくとも私はありました。
なかなか内定が出ないと、それなりの量の履歴書を書き綴ります。
面接を行う企業ごとに志望動機や自己PRなどの言葉や書く内容を変えていくのですが、そんなことをしているうちに、就職することがゴールとなってしまい、自分のやりたかったことが頭から消えていく感覚を何度も味わいました。
キャリア形成において、就転職時に自分を客観視して自己理解できている状態であることが望ましいのは、誰もが理解していることだと思います。
それでも、就転職活動の中で揺れてしまう自我もあると思うのです。
今回は、そんな自分を見失ってしまいそうな状況で自我を保つ方法について、一緒に考えて行きたいと思います。
最後までお付き合いいただけると幸いです。
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最初に断っておきますが、タイトルの「False personality(偽りの人格)理論」という理論は、検索しても出てきません。
近いものとして、「True self and false self」という心理学における言葉を掲載しておきます。
興味のある方は、読んでみてください。英語ですが…。
さて、検索しても出てこない理論なんてあるのか?という問いに対する答えは一つです。
それは、提唱者が私ということです(笑)。
多くのキャリアコンサルタントや教育心理学、キャリア心理学のカウンセラーは、他人を対象物として、統計学的に理論を構築していきます。
この作業により、多くの方にとって「なんとなく理解できる」理論が完成します。
つまり、「自分のための話ではない」と感じる方もいるということです。
もちろん、私のこれから記事にする話も、多くの人にとって「自分のための話ではない」と感じることでしょう。
ですが、私という個人の実例をもとに展開していくので、何らかの形で、届くモノがあればと思います。
どのような話なのか?
さっそく進めていこうと思います。
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理論などと言っていますが、非常に簡単です。
それは「メタ認知による自我の保護」を行うことであり、理性で思考と感情を別個のモノとして捉えよう、という概念です。
メタ認知について、出典元を引いてみましょう。
【メタ認知】
メタ認知は「客観的な自己」「もうひとりの自分」などと形容されるように、現在進行中の自分の思考や行動そのものを対象化して認識することにより、自分自身の認知行動を把握することができる能力である。
(Wikipediaより抜粋)
キャリアとは、職業人生…社会生活を営む上での社会へ還元するべき対価となる労働に費やす時間と、語源となった「車道」から連想されるように、人生そのものを指す言葉です。
どちらのキャリアの意味でも、このメタ思考は重要な役目を持っています。
メタ認知によって、自己の状態を知覚することで、社会生活での規律を遵守することができます。
「人の振り見て我が振り直せ」とは、他人の振りだけでなく、自分自身をメタの視点で改めることも指しているのだと私は考えています。
「ハイコンテキスト文化=空気を読む文化」に特化している日本においては、尚のことメタ認知は必要です。
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さらに、メタ認知はメンタルケアの領域でも効果を発揮します。
例えば、採用面接試験で、面接官から心無い言葉を投げかけられたとします。
「あなたが、ウチで働けると思ってるの?」とかですね。
履歴書やエントリーシートに頭を悩ませ、何度も書き直し、友人などの協力で面接対策まで行って臨んだ本面接で、このような言葉を浴びせられたら、多くの人は大なり小なり、メンタル不調になりかねません。
しかし、メタ認知を修得していると「なぜ、この面接官はこのような言葉を投げかけたのか?」と、俯瞰して冷静に現状を把握しようと試みることができます。
この「俯瞰して冷静に」という感覚を知覚することがポイントです。
人間は、感情に支配されると思考が低下します。
ですが、感情は刹那的に働くモノなので、メタ認知によって自分の認知を認知することで、感情コントロールが可能となり、結果としてメンタルケアに繋がります。
この特性を用いたものが「アンガーマネジメント」で、関連書籍は一時期ベストセラーにもなりました。
「怒りの感情が湧いたら、頭の中で6秒数える」
怒っている自分を認知する感覚、これもメタ認知です。
以上のように、メタ認知という概念を取り入れることは「もうひとりの自分」を感じられるメンタル訓練となり、今回の「False personality(偽りの人格)理論」の肝となる部分です。
キャリアにおいて、自分ではどうにもできない「社会と相対する自分像」を、自分でありながら「偽りの人格」だと認知することで、多くのメリットを享受できると、私は感じています。
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先ほどのメンタルケアもメリットの一つですが、他にも「自分を演じることへの心理的ハードルの低下」や「悲観主義との決別」、「状況把握能力の向上」などが挙げられます。
「自分を演じることへの心理的ハードルの低下」とは、言葉は悪いですが、就転職時の対外的な面談では、なかなかに重要な考え方です。
あなたの周りにも、面接に絶対的な自信がある友人などいませんか?
彼ら彼女らの話には共通点があります。
それは「面接官の求めている人物像になりきる」というものです。
大抵の人は、面接対策として企業のホームページやSNSなどをリサーチをして面接に臨むと思います。
それでも採用される人と採用されない人がいる大きな理由の一つには、面接に受かる人物像を演じられるかどうか?という要素があるのです。
「本当の自分で臨まなければ、相手に失礼だし入社後にボロが出る」
…そんな風に思っていませんか?
ハッキリ言ってしまうと、採用されなければ先へは進めないのですから、まずは通過してしまうこと。アフターフォローは二の次です。
…キャリアコンサルタントとしてあるまじき発言かもしれませんが(笑)。
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「悲観主義との決別」とは、「自分は受からないかもしれない」とか「どうせ落ちる」といった感情に支配されることから脱するということです。
これは、メタ認知が自分の状態を把握するための手法であるため、感情と思考を切り分けて考えられるようになる、という意味でもあります。
「どうせ落ちる」と考えている自分を認知できれば、面接までに「落ちない自分とはどういった状態なのか?」を突き詰めていけます。
「なぜ?」や「どうすれば?」という問いかけを続けることで、いくつもの修正点が浮かんでくるでしょうが、一つひとつ潰す行為は自信にもつながります。
また「状況把握能力の向上」とは、面接会場に限らずですが、自分を俯瞰することで、緊張状態を軽減できる作用です。
あなたは、簡単に緊張をほぐす方法を知っていますか?
それは深呼吸をすることです。
緊張状態とは、呼吸が浅くなり、脳に酸素が供給されなくなることで思考が低下する状態でもあります。
深呼吸をすることで、十分な酸素が脳に供給され、あなたの能力はいかんなく発揮されることでしょう。
この深呼吸をする行為も、メタ認知だと言えるでしょう。
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結論ですが、キャリアにおいて自我を保つことが難しい状況は、何度となく訪れます。
「自分とは?」と考えるほどに、自分の本質を見失ってしまうこともあるでしょう。
ですから、そんな状況に陥ってしまったのなら、本当の自分を探すことも大切ですが、状況を切り抜ける偽りの自分を創り出すことも、現実問題として必要だと思います。
たとえそれが「偽りの人格」であったのだとしても、あなたのキャリア形成上、乗り越えるべき障壁をクリアするためには、もう一人の自分に助けてもらってもいいのではないでしょうか?
また、余談になりますが、人間はなりたい自分になるものです。
役者の方が、役にのめり込み過ぎて人格や生活が変化してしまった…という話を聞いたことがないでしょうか?
「偽りの人格」は、必ずしも悪ではありません。
理想の自分を「偽りの人格」として演じることで、成長することもあるのです。
キャリアとは、長く険しい道のりでもあるでしょう。
今回のような視点も、きっとどこかで必要になると思いますので、記憶のどこかに留めていただけると幸いです。
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ということで、最後までお読みいただきありがとうございました。
今回の投稿は以上です。