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圧倒的な世界観!壮大で緻密なおすすめ小説8選

時々、圧倒的な情報量のある小説に出会います。キャラクターの造形も深いですが、設定や世界観が緻密かつ壮大で、ぐいぐいと読ませるような小説です。

映画化しても2時間の枠にはおさまりづらく、そもそも映像化が難しいような作品です。世の中の大きなうねりや背景の書き込みが濃密な一方で、世界を股にかけるくらい大きな展開があったりします。SF小説とも、冒険小説とも、ハードボイルド小説ともいえそうです。

自分では変えられない大きなうねりの中で、何か小さな灯から大きな希望をつかもうとする熱を感じられるようなところが魅力です。ページ数が多く難しい設定もあって読書に馴染みのない人に紹介しづらいですが、どこかに同士がいると信じて世界観が壮大で緻密な物語を紹介していきます。

①『Ank : a mirroring ape (講談社文庫)』

あらすじ
2026年、京都で大暴動が起きる。「京都暴動=キョート・ライオット」だ。人々は自分の目の前にいる人間を殺し合い、未曽有の大惨劇が繰り広げられた。事件の発端になったのは、「鏡=アンク」という名のたった1頭のチンパンジーだった。霊長類研究施設に勤める研究者・鈴木望は、世界に広がらんとする災厄にたった1人で立ち向かった……。

出典:Amazon

人類の進化の謎に迫るサスペンス小説です。
霊長類研究のために引き取った1頭の「特別な」チンパンジーが物語の鍵を握るのも大胆ですが、大規模な暴動を描くのも大胆です。そして、大胆さだけでなく、緻密さも際立ちます。資金だったり名声であったり研究者としての苦悩も詳細に語られます。この詳細さが光ります。

人類史、進化論という話が入り難解テーマですが、最後まで楽しく読めたのは、物語としての納得感があったからです。大胆さを緻密さが論理的に支えていて、「そういうことか!」と気づきが読み進める原動力となりました。

②『熱源 (文春文庫)』

あらすじ
樺太(サハリン)で生まれたアイヌ、ヤヨマネクフ。開拓使たちに故郷を奪われ、集団移住を強いられたのち、天然痘やコレラの流行で妻や多くの友人たちを亡くした彼は、やがて山辺安之助と名前を変え、ふたたび樺太に戻ることを志す。一方、ブロニスワフ・ピウスツキは、リトアニアに生まれた。ロシアの強烈な同化政策により母語であるポーランド語を話すことも許されなかった彼は、皇帝の暗殺計画に巻き込まれ、苦役囚として樺太に送られる。日本人にされそうになったアイヌと、ロシア人にされそうになったポーランド人。文明を押し付けられ、それによってアイデンティティを揺るがされた経験を持つ二人が、樺太で出会い、自らが守り継ぎたいものの正体に辿り着く。
樺太の厳しい風土やアイヌの風俗が鮮やかに描き出され、国家や民族、思想を超え、人と人が共に生きる姿が示される。金田一京助がその半生を「あいぬ物語」としてまとめた山辺安之助の生涯を軸に描かれた、読者の心に「熱」を残さずにはおかない書き下ろし歴史大作。

出典:Amazon

明治期のアイヌを描く熱いお話です。
自分は一体何者なのか、自分たらしめる何か苦悩し、それでも「僕はここで必死に生きているんだ!」という姿をみせてくれます。アイヌを描きながら、ポーランドの話も展開されて意外性があります。

アイヌの生活感や文化、価値観が丁寧に描かれています。日本行政のもとで生活する息苦しさがいつもつきまといます。そして、病気で人の命が簡単に吹き飛んでしまうような環境でもあります。何も悪くないのに何でこんなに苦しいのだろうかと思うほどです。しかし、歩みを止めることなく、「守りたいもの」のために必死になれる姿は感動でした。

③『海賊とよばれた男(上)(下) (講談社文庫)』

あらすじ
一九四五年八月十五日、敗戦で全てを失った日本で一人の男が立ち上がる。男の名は国岡鐡造。出勤簿もなく、定年もない、異端の石油会社「国岡商店」の店主だ。一代かけて築き上げた会社資産の殆どを失い、借金を負いつつも、店員の一人も馘首せず、再起を図る。石油を武器に世界との新たな戦いが始まる。

石油は庶民の暮らしに明かりを灯し、国すらも動かす。
「第二の敗戦」を目前に、日本人の強さと誇りを示した男。

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戦後日本で活躍したカリスマを描くお話です。
戦争が終わりGHQが日本統治し、あらゆるモノが足りなくなるような時代に、思い切りのいい判断と度胸で石油で商売していきます。この小説が面白いのは、時代背景が細かく描かれなぜ石油が重要なのか描かれていること、人間関係や戦略など主人公にとっての障害物がわかりやすいことです。

難攻不落な障害が次々に現れては、なんとかクリアしていくので、中だるみせずサクサク読み進められます。戦後という時代に生きた、大器を持つ主人公の熱と世界情勢も踏まえた背景が面白い作品でした。

④『ワイルド・ソウル(上)(下)(新潮文庫)』

あらすじ
その地に着いた時から、地獄が始まった――。1961年、日本政府の募集でブラジルに渡った衛藤。だが入植地は密林で、移民らは病で次々と命を落とした。絶望と貧困の長い放浪生活の末、身を立てた衛藤はかつての入植地に戻る。そこには仲間の幼い息子、ケイが一人残されていた。そして現代の東京。ケイと仲間たちは、政府の裏切りへの復讐計画を実行に移す! 歴史の闇を暴く傑作小説。

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数十年の復讐に奔走するハードボイルド小説です。
1960年代に外務省主導で行われた移民政策が本作の背景にあります。この政策で4万人を超える人たちがブラジルに移住することになります。テーマが重厚で、緻密な説明には説得力がありました。「憎む」という感情やそれに近い感情がふってくるあたり、小説としての醍醐味があります。

歴史や実体験が個性として魅力を持ち、仲間を作るのりしろにもなります。復讐計画を実行するにあたり、何人かキャラクターが登場しますが、似た経験でも、一人ひとりキャラクターが違って生き生きとしていたのが印象的です。

⑤『百年法 上 ・下(角川文庫)』

あらすじ
不老不死が実現した日本。しかし、法律により百年後に死ななければならない――西暦2048年。百年の生と引き替えに、不老処置を受けた人々の100年目の死の強制が目前に迫っていた。その時人々の選択は――!?

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SF小説×社会派小説です。
不老不死が現代において実現したという設定が秀逸です。生活や冠婚葬祭まで不老不死を想定された内容で、リアリティが光る作品です。100年後に死ぬことを強制されることで、なんとか逃れようとする人、受け入れる人など様々な選択をみせてくれます。

上巻は100年法に対する様々な人の考え方の違いが表現されますが、下巻は怒涛の展開が続きます。「死から逃れたい」という願いから、大きな権力にすがったり、小さな反発集団が行動を起こしたりします。「生き延びたい」という説明不要な欲求から、社会が大きく変わる様子は圧巻でした。

⑥『オリンピックの身代金(上) (講談社文庫)』

あらすじ
小生、東京オリンピックのカイサイをボウガイします――兄の死を契機に、社会の底辺というべき過酷な労働現場を知った東大生・島崎国男。彼にとって、五輪開催に沸く東京は、富と繁栄を独占する諸悪の根源でしかなかった。爆破テロをほのめかし、国家に挑んだ青年の行き着く先は? 吉川英治文学賞受賞作

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1964年の1回目の東京オリンピックをテーマにした作品です。
太平洋戦争が終わって行動経済成長期の日本で、富めるものも多くいる一方、時代の繁栄をなかなか享受できず、豊かさにありつけない人もいます。東大生というエリートがなぜ爆破を企てるのか、どう実行するのか、見ごたえがあります。資本主義とは何か考えさせられます。

また、警察VS爆弾魔というサスペンス的な対比も興味を引きます。少しずつ追い詰める警察、行動が制限された中でも強い意志をもつ爆弾魔の対比です。小説としては2つの時間軸でストーリが進むのですが、時間軸がだんだん1つに追いついていく展開も緊張感があって楽しく読めました。

⑦『ジェノサイド 上 下(角川文庫)』

あらすじ
イラクで戦うアメリカ人傭兵と日本で薬学を専攻する大学院生。二人の運命が交錯する時、全世界を舞台にした大冒険の幕が開く。アメリカの情報機関が察知した人類絶滅の危機とは何か。一気読み必至の超弩級エンタメ!

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人類の絶滅をテーマにした壮大なサスペンスです。
アメリカ人傭兵と日本の大学院という、一見関係なさそうな2人が軸となって話が進みます。背景には、国家とか、新人類とか大きなテーマが見え隠れし、大きな渦に巻き込まれていきます。

面白いのは、新しいものに出会った時の「リアルさ」です。興味を抱く物、拒絶するもの様々です。拒絶を選択するものに権力があった場合さらに複雑になります。不本意な形で巻き込まれる動機や、入り組んだ設定と、大きなテーマが魅力で、ぐいぐいと読ませていきます。

⑧『虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)』

あらすじ
9・11以降の“テロとの戦い"は転機を迎えていた。 先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、 後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。 米軍大尉クラヴィス・シェパードは、 その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、 ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう…… 彼の目的とはいったいなにか? 大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官"とは? 現代の罪と罰を描破する、ゼロ年代最高のフィクション

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SF×軍事サスペンスの傑作です。
軍の特殊部隊に所属する主人公は、世界各地で要人の暗殺任務を請け負います。暗殺任務で名前があがりつつ、いつも逃げられてしまう人物がいます。途上国で発生している大規模虐殺と関係がある人物のようです。科学が今より進みSFとしてのディールの高さも、リアリティ、キャラクターの個性、物語の展開もどれも一級品です。

SF作品の艇をなしているにも関わらず、人の内面にも切り込んだ描写が目を引き、難解な表現もあるものの、どんどん引き込まれてしまいます。文学おたくの主人公の会話には知性があり、ターゲットのジョン・ポールには信念がありました。私にとっては、最初に読んだ時の衝撃をいまだに覚えている唯一作品でした。

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話が壮大でとっつきにくいかもしれないですが、はまった瞬間、一瞬で読める作品が多いです。読書の楽しさを広げてくれました。手に取ってもらえたらうれしいです。

最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました。

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