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防災の備え・栄養のお話

はじめに

 9月は防災を意識 することが多くなる時期ではないでしょうか。
防災の日があったり、過去には9.11の事件があったりしたこともあり「備え」について一度考えてみることも大切かと思います。

 ところで皆さんは防災の備えにはどんなものを用意していますか?
お水や食料、ライトやラジオ、携帯トイレやアルミシートなどに加え、最近は感染防止も意識してかアルコール消毒もセットされたキットなども販売されるようになりました。

 私は過去に、熊本地震で災害支援ナースとして被災地に支援をしに行ったのですが、保健指導の観点から少しテーマの栄養のお話をしようと思います。

避難所での実際

 災害が起きると避難施設が設置されます。大抵は学校の体育館や、市町村の多目的ホール等です。こういった避難施設には非常用の設備として食料や水などが保管されていて、避難された方へ備蓄されている食料や水が提供されます。
 また、交通が確保されると様々な物資が運ばれてきます。特に食事面に関して言えば多く見かけるのは個包装のおにぎり、パンなどです。さらに安全が確保された地域にはボランティアの方々が訪れ、炊き出しなどが行われる機会もあるかと思います。

 実際に災害があった時、避難施設へ避難することが出来た場合、食事と水はほぼ確実に手に入ります。ただし、メニューが選べるわけではありません。
 災害の備蓄や被災地への食料の配送で真っ先に配慮されるのは、安全性です。賞味期限が長めであること、腐らない、食品に直に手が触れないよう、個包装になっているなどです。そして、早く大量に準備できる、安価なども考慮されます。
 さて、 こういった条件に当てはまる食べ物とはどのようなものだと思いますか?

 避難所でおにぎりやパンなどの炭水化物はほぼ間違いなく手に入ると考えられます。その為、もし、これから緊急セットなどを自宅に準備しようと考える方がいたら是非、食物繊維、タンパク質が補える工夫をしてみていただけたらと思うのです。例えば、最近では缶詰などの種類も豊富になり、お肉・お魚といったタンパク質も取れるようになっています。また、お野菜はどうしても傷んでしまうことから非常食として持ち運ぶことが出来ず、避難所でも便秘などで悩んでしまわれる方も多くお見掛けしました。そこで青汁の粉末や重くはなってしまいますが野菜ジュースなどを検討されることもお勧めしたいと思います。

 避難所でのお食事は、大勢の方に向けたもの、一般的であるものと捉えて頂くと良いと思います。その為、当然お一人お一人の好みに合わせたものが食べられるわけではありませんが、少なくとも美味しくなかったり、ひどい味付けだったりするお食事が出ることはありません。実際、皆さん、避難所でのお食事のお時間は楽しみにされる様子も見られていました。
 ただし、保存の為に味が濃く調理されたものや、糖質中心のメニューになることはあり得ます。血圧が高い方や糖尿病や腎臓病の方など疾患があってお食事に注意が必要な方へ、疾患が配慮されたお食事が用意できるのは、災害の混乱が落ち着いてからになることもある為、少し時間がかかることが多いです。また、お子さん向けのお食事、アレルギーのある方、高齢で硬いものの摂取が難しい方へのお食事なども同様のケースが多いです。
 私が災害支援活動を担当したのは熊本地震の発生から22~25日目でしたが、この時にはすでに、避難所にいらっしゃる方の基礎疾患やアレルギーのある方の把握は済んでおり、お食事をお渡しするときの注意点やルール作りなども整っていました(少なくとも10日~2週間目には整っていたそうです)。
 ですが、糖質が多くなる傾向は続いていた為、この時も引き続き支援の課題となっていました。

非常食選びのポイント(注意が必要な方)

 さて、そんなことも踏まえて、簡単にですが、非常食選びのポイントをお伝えしたいと思います。

高血圧
水煮など塩分が少ない調理の缶詰、レトルト食品などの準備の際は成分表示のナトリウム(Na)の表示に注目して数値の少ないもの

糖尿病
食物繊維、副菜が大切です。缶詰・レトルト食品では野菜が多いもの、その他、乾物、野菜ジュース、青汁など

腎臓病
主食の米は低たんぱくでエネルギーが取れるアルファ米など、タンパク質調整食品、塩分の少ない水煮など

乳幼児
ミルク、離乳食、年齢に合わせたもの

高齢者

とろみ剤、レトルト介護食

アレルギー
ご自身の体に合わせたものを備えておきます、また、どのようなアレルギーをお持ちかを示したカード等があれば準備を


 治療中など、病院にかかられている方は一度、どういった非常食を備えたらいいのか、医師や栄養士、看護師、保健師などにご相談されるのも良いかと思います。

非常食選びのポイント(疾患のない方)

 因みに、特に疾患などもないといった方にはお食事選びのポイントとして、「重くないもの」という視点でも非常食を選んでみて頂きたいと思います。水分含有量の多いものは荷物が重くなってしまうからです。

 私が支援に行く際、自身の食料として持って行ったものも併せて紹介したいと思います。

・飲み水 
・水又はお湯を入れるタイプのご飯、炊き込みご飯、混ぜご飯
・フリーズドライのスープ・味噌汁(豆腐か卵が入っている)
・粉末青汁
・スポーツドリンクの粉
・チョコレート
・水だしコーヒーパック

 飲み水があるので水分が含まれて荷物が重くなるレトルト類は準備をしませんでした。(同じく支援に行ったメンバーの中にはレトルトを持て来た人もいてとても美味しそうだったので余力があれば選ぶのも良いと思います)
フリーズドライの汁ものは、お湯じゃなくてもなんとか飲めると聞き、たんぱく質の確保を念頭に豆腐、卵のものを選び、野菜不足は青汁の粉末で補うようにしてみました。チョコレートとコーヒーは気分転換用です。

 私の支援期間は4日間と決められていたので、少し我慢した食事になっています。ですが、実際には避難所で過ごす期間はどのくらいになるか分かりません。楽しみのあるメニューも入れた方が、避難所での生活の気分転換になるかと思います。

さいごに

 さて、皆さんは非常用の備えにどんなものを用意されていますか?最近はどんどん便利なものが増えてきています。是非、定期的に非常用の備えを見直してみて頂けたらと思います。

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