【保存版】等級制度 設計方法(後編)
今回も等級制度策定の後編として、実際に運用され続ける等級定義となるような定義表の作成ポイントなどを詳細に説明して参ります!
①等級定義表の活用方法(概要)
等級定義表の詳細を設計していく前に、どういった形でこの表を利用していくのか、簡単な活用イメージを先にご共有できればと思います。
◆使用タイミング
主に昇格/降格の判定の際に活用する想定です。
◆使用方法
弊社では『等級スコアリング』と呼称していますが、等級の各項目毎にその基準を満たしているかどうかを確認していきます。そのため、判定の際の全社一貫のチェックリストのような役割としてこちらの等級定義表を活用する想定です。
※具体的な昇降格のプロセスについては後ほどご紹介いたします!
②等級定義表の作成
それでは、等級定義表の詳細部分を作成していきます。
詳細設計にあたり、特に重要なのが「どういったメッセージをメンバーに伝えたいのか」を明確にすることです。
メッセージが明確でないとメンバーは取るべき行動をイメージすることができず、各々が好きな解釈をし、等級定義評価が守られなくなっていき、運用の形骸化へと繋がっていきます。
内容が複雑である場合も同様です。メンバーからの理解が得られなければ独自の解釈が蔓延し、運用の形骸化へと至ります。
そのため、等級定義表作成のポイントは、いかに各メンバーが記載内容やそこで受け取るべきメッセージを「正しくイメージできるか」にかかっています。
運用され続ける制度とするためにも、この「正しくイメージできる」ような定義表を作成するためのポイントは以下の3つです。
1つめの、差分を明確につけるための尺度となるのが、この後検討する等級定義の要素(横軸)になります。
1,要素の策定
まずは、下記の赤枠部分(要素)について設計を行っていきます。
判定の対象として何を要素に含めるかは、まさに社員の方々に対してどんな働きを求めたいのかといった「期待値」や「メッセージ」に直接関わるものになります。
そのため、「○○ができるような人材に成長してほしい」など、求めたい要素を言語化し、リストアップするところから始めます。
※どういった要素を含めるべきか思いつかない場合のご参考として、弊社でも活用している定義要素が下記の表になります。
こちらは、弊社がご支援する中で各社でご設定いただいている要素を集約したものになります。
定義要素を大分類でまとめると、「専門性」「コミュニケーション」「問題解決」「責任範囲」におおよそ切り分けることができます。
ここから実際に自社に込めたい要素として何を選択するかですが、それを検討するためには、記載する粒度と要素数を設定する必要があります。
というのも、あまりにも細かく沢山設定してしまうとメッセージが分散してしまいますし、少なく粗く設定してしまうとメッセージが抽象的で解像度が粗くやや伝わりにくくなってしまいます。
そのため、適度な塩梅で、漏れなく伝えられるような最適な粒度/要素数を設定する必要があります。
補足:等級定義に最適な粒度や要素数は?
まず、粒度ですが、大きく先の①大項目単位で記載する方法と、②「専門ノウハウ」「交渉」「マネジメント」といった小項目単位で記載する方法の2つのパターンがございます。
メリットとデメリットは記載の通りで、要素数をまとめるほどシンプルさ(複雑性)は改善されますが、メッセージ性が薄れてしまいます。
一方、細かく設定するほど、要素数が増え、チェック項目が多くなり、何が一番重要な要素か不明瞭となり、この場合でも全体的なメッセージが伝わりにくくなってしまうといったデメリットが生じてしまいます。
そのため、最善としては大項目単位で設定し、メッセージをより強く伝えたい部分を詳細に分類し、4〜5個程度で要素を設定することをオススメしております。
※メッセージの分散以外にも、評価の工数を抑えるといった観点からも、多すぎない要素数で設定されることを推奨いたします。
2,シンプルかつ受け入れやすい記載とする
どういった要素で記載するかを確定したら、実際に等級の段階数(等級Ⅰ、等級Ⅱ、、、)毎にそれぞれの要素に沿って定義内容を記載していきます。
記載の一例としては下記の通りです。
繰り返しになりますが、等級定義の浸透には、それを読んだ方が自身の行動に照らして内省し、自身の言葉で語れるようになることが理想です。
そのため、定義を事細かに記載し過ぎてしまうと、意識しながら行動するにしても覚えておくことが難しくなります。(読むこと自体の工数もかかり、定義の理解も後回しになっていく可能性があります)
そのため、なるべく箇条書きで、短文で記載することを推奨しております。
3,文字だけで伝えようとしない
ここで、「文を短くしてしまっては解釈のブレが生じ、冒頭の通り運用の形骸化へと繋がってしまうのではないか?」といった懸念が生じているのではないかと思います。
もちろんその通りです。では、それをどのように対処するかですが、一番はやはり「口頭で伝える」「コミュニケーションを取り伝える」といった事が必要だと考えています。
具体的には、経営層および評価者となるマネジャーが、それぞれの意図を理解し、認識をすり合わせ、具体的な事例に当てはめつつ伝えて行くのが一番だと考えております。
というのも、事細かに記載しても伝わるとは限りませんし、人が行動できるようになるにはそれぞれの立場に当てはめて伝える必要があり、全員の業務内容に即して記載していては際限がありません。
(特にスタートアップにおいては、各人が担う業務内容はもちろん、全社として取り組んでいく内容も変化が激しい傾向にありますので、それを全て記載していくのはとても現実的な手段とは言えません。)
また、行動基準まで事細かに記載してしまうとその定義をそのまま受け取ってしまい、 自身の行動を内省するきっかけを作りづらくなってしまうといった弊害も出てきます。
したがって、全てを文字で語ろうとするのではなく本質のみ記載し、コミュニケーションによって、適宜その時の状況に当てはめつつ各自が自分の言葉で語れるようにされることが等級定義の活用には必須であると考えています。
そのため、作成時にも全てを事細かに記載する必要は無いといったことを念頭に置いてご作成いただければと思います。
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ここまでで、等級定義表の作成は以上となります。
作成が整いましたら、いよいよ活用方法について詳細に紹介して参ります。
③等級定義表の活用方法(詳細)
作成した等級に各メンバーが割り当てられている状態から話を進めていきます。
会社で定めた昇格頻度に基づき、昇降格の対象となるかを確認する際に、こちらの作成した等級定義表を活用していきます。
判定基準には大きく「入学要件」と「卒業要件」の2つの方法がございます。
主に、スピード/チャレンジ昇格ができるようにされたい場合には「卒業要件」、昇格後の能力や役割の不一致が無いようにされたい場合には「入学要件」を設定するといった形での運用が一般的です。
そのため、昇格スピードを早くしてモチベーションを高めたい非管理職メンバーには卒業要件を設定し、責任範囲や業績への影響度の大きい管理職メンバーには入学要件を適用する等、等級の段階数によって異なる要件を設定される会社さまが多い印象です。
(弊社としてもそうした運用を推奨しています。)
また、各要件の内容を見てわかる通り、現在の等級だけでなく移行先の等級とも照らし合わせて判定を行います。
そのため、下記図の通り基本的には『現在の等級』と『移行先の等級』の2軸から判定を行う運用方法となります。
スコアリングは、各等級ごとの定義を満たしていれば2点を基準とし、上位等級相当のレベルであれば3点・下位等級レベル相当の役割であれば1点として採点し、各社事前に設定いただいた昇降格基準に基づいて最終判定が行われます。
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以上が、等級制度の設計方法と運用イメージになります!
昇降格の判定方法や管理監督者についての論点など、等級制度についても補足論点がありますので、次回はそちらの補足論点について記載できればと思います。
それではまた次回もよろしくお願いいたします!
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ハイマネージャー
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