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2018年本ランキング

いま活字欲がすごくて、
じぶんでもよくわからないくらい「読みたい!」という状態にありまして、せっかくなのでとりあえず昨年読んだ本でよかったものをまとめておこうかとおもいました。

例によって昨年出版されたものではなくて、「昨年わたしが読んだ本」なので悪しからず。


10. 今日の宿題 / Rethink Books

一発目から借りた本です笑 たしかBooks Majolieさんから「これおもしろいですよ」とお借りしたんでした。 フィジカルな本て気軽に貸し借りができるからいいですよね。

B&Bさんが福岡で1年間限定でされていたRethink Booksさんの壁面に、日々展示されていた320人それぞれから出題される「宿題」。 Rethinkのなまえのとおり、これがまた改めて考えさせれるような宿題ばかりで、「内容は同一なのに読み手の受け取り方が100%異なる」読書の楽しみ自体みたいなもの目一杯たのしめる本でした。 これ数人で読んでもおもしろいよね、きっと。

読了直後のわたしはこんなことを投稿していました。

感想替わりに宿題を考えてみた。
「あなたはこれからの人生を一足の靴のみで生きていかなければならなくなりました。
どんな靴を選びますか?
またその靴を履いてどんなところへ行きますか?
最後にその靴はどんな状態になっていますか?」


9. 極北へ / 石川直樹

ことあるごとに「ここではないどこか」に行ってしまいたい衝動に駆られるわたしです。 そのキッカケが、わたしの場合は本であることが多いようにおもいます。 旅に出たくなってから本を手に取っているのか、はたまた逆か、よくわからないのだけど(たぶん両方だとおもう)。

このときは知人の本屋さんが石川さんご本人を招いたトークショーをやるので来ませんかとお誘いいただいたのがキッカケでした。 もとより写真のことは好きでよく見させていただいていたけど、旅のお話を聞けるということだったので即「行きます!」と返事をしたのを覚えています。

トークの内容も含めて、最高に刺激的でした。 内容は本を読んでほしいので伏せますが、実際に行って(しかも何度も)その目で見て来たひと特有の臨場感というか、リアリティを含んだことばたちがわすれられません。

しかしわたしに一番響いたのは先人たちの存在と、先人たちが残したものに触れ、それに触発されるという構図そのものでした。 ああ、そうか、こうやってわたしも、誰しも誰かの影響を受けて、なにかをはじめようとおもうんだなと、改めておもいましたよね。

当時旅のZINEを作っている真っ最中だったわたしは、そのトークを聴いて帰ったあとに、ZINEのあとがきとなる文章を一気に書き上げました。 このあとがきはこの旅のZINEが目指す方向の指針となる一文となりました。 


8. 観察の練習 / 菅俊一

同僚とベトナムの都市を散歩していたときにふと道端に止まっている原チャリのヘルメットのカラーリングが気になって写真を撮りました。 「なに撮ったの?」「ヘルメット」「なんで?」「え、だってこの色の組み合わせ日本じゃ見なくない?」「あー、ほんとだ。」「でしょ?」「いやでも、そんなこと全然気にしてなかった。」というやりとりを、この本を読んで思い出しました。

こういったことが結構あるので、この現象はなんなのだろうとずっとおもっていたのですが、この本が具体的な解説と共にわたしがなにに「?」とおもっていたのかをおしえてくれました。 その意味でわたしにとってはこの本は解説の本であり、以降わたしはわたしの抱く「?」をひとに説明しやすくなりました。

一方でこの本はキッカケづくりの本でもあるとおもいます。 なにか行き詰まっているときや、考えすぎているときなど、パラパラとめくってみる。 すると凝り固まった頭がすこしやわらかくなり、目の前の世界の解像度がすこし上がったように感じられる。 本当はどこかで感じている違和感に、ちゃんと目を向けられるようになってくる。 そういった視点を「どんなひとでもこんな風に世界を見つめることができるんですよ」とおしえてくれる。


7. ボクたちはみんな大人になれなかった / 燃え殻

今年はどうも実用に伴った乾いた読書が多かったので、年末に差し掛かって急にしっとり豊かな読書がしたい欲に駆られて思わず手に取りました。 結果、この本を読んだことを全く後悔していません。

燃え殻さんとは世代がちょっとちがうので、出てくる固有名詞はど真ん中の世代ではありません(知ってはいるけど)。 しかし読んだひと誰しもがそう感じるように、わたしも御多分にもれず、「わたしにとってのそれら」に変換して読んでしまっているようにおもいます。 これはふしぎ。 結果として号泣であります。

過去の輝きに懐かしみの眩しさを見いだすとき、ひとはどうしても悲しみを滲ませざるおえないようにおもうのです。 そのつらみから逃れるように思い出はたのしかったことばかりが溢れ、そのときに起こっていた具体的な問題とかはすこしだけ姿を消す。 でもそのときにその問題は確実に起こっていたし、結果としてどうしてこうなったんだろう?という問いだけが残りつづける。

この本を読み進めるのは、正直辛かったです。

わたしもこの主人公と同じように、
「〇〇は大丈夫だよ。」
って言われつづけていたんですよね。


6. わざわざの働きかた / 平田はる香

ことしはどうも自分の働きかたを見つめ、再考せざる負えない心境になっていたようで、振り返ってみるとそんなようなことにばかり興味を示していたようでした。 ただどうも周りのひとも結構仕事をやめたり、あたらしいことをはじめたり、環境を変えたりしているひとが多くて、世間も含めてそんな雰囲気なのかもしれないなともおもいました。

そのなかで一番響いたのがわざわざさんの取り組み、という仕組みでした。 もともと存在自体は気になっていたのだけど、今年から平田さんご自身がnoteなどで発信されはじめた内容を見て、実は想像していた以上に考え抜かれて構築されたシステムなのでは?と、より興味を持ったのがキッカケでした。

結果、この本に書かれているのは実際に試して、検証して、改善したり止めたり新しくしたり、といったプロセスの足跡が残った先に提示された「いまはこういう考え方でやってます」という現在進行形且つ、いまはこれがベストという宣言にも読めました。 これからもきっといろいろな試行錯誤を経て、どんどん進化していくのであろうことも透けて見えるようでした。

一番響いたのは丸い組織図。 これ、ひとつの理想形に見えるものの、実際に運用するにはすごい高密度で柔軟な連携が必要で、それができてる時点ですでに別のロジックが働く組織であることがわかる。 しかしそのシステム自体はものすごく現実的且つ合理的に重なりあう有機的なひとと仕事の繋がりかたで、これこそがわたしの求めている働きかたのひとつの回答だよなぁとおもいました。


5. ATLANTIS / 加藤直徳

中川正子さんにつくっているZINEのお話をしたときに、ZINEという形態にポジティブではないが唯一たのしみなのがATLANTIS ZINE、と伺ったことをキッカケに、ATLANTIS ZINEからずっと楽しみに追いかけて来ました。 旅、それもわたしのような旅行者とは異なる、もっとディープな旅。 その強度をそのままに閉じ込めて体感できるなんて、まさに夢のような雑誌が生まれたものだとおもいました。

TRANSITで展開されていた「文化」の切り口から、よりディープな「思想」のようなところまで切り口が及んでいて、こんなにも読んでてハラハラする旅雑誌もなかなかない。 だからこそ、濃度と強度。

山西崇文さんと加藤直徳さんが実際にお話されるイベントにも参加したのだけれども、エリトリアのお話がめちゃくちゃおもしろかったです。 旅というものは本来的には見たいものを見にくのではなく、未知のものに触れに行くことであること。を、まさに体現したようなおふたりでした。


4. すいません、ほぼ日の経営。 / 川島蓉子, 糸井重里

読了後、真っ先に思い出したのはmina perhonenの20周年の展示「ミナカケル」の本のことでした。

同ブランドにかかわるひとびとへのインタビューのことばを元に構成されたその本は、minaで働くということがどういうことであるのか、その覚悟、その姿勢をあぶり出しており、ものづくりに携わるものとしてはまさに理想的な集団であることを認識させられた本でした。

ほぼ日はちょっとminaに似ているのではないかとおもっていたのですが、ミナカケルで感じた印象を「実際にどのように具体的に会社の文化として根付かせるか」を意識的に行っていらっしゃったような印象を受けました。 つまりそれこそが「すいません、ほぼ日の経営。」の仕方なのではないかとおもいました。

ただ当然、ほぼ日もminaも(先に触れたわざわざも)、それが理想的な状態のひとつであることがわかっていても、真似をしてできるようなものではないのも、この本を読んで受けた印象のひとつです。

言語化が難しい内容をとてもわかりやすく説明する糸井さんはやはりすごかったし、対する川島さんはあくまでもほぼ日を知らないひとが聞きそうな質問に終始しているところに好感をもちました。 もし仮に次作があるようであれば、もっともっと突っ込んだ質問を投げかけてほしいとおもいました。


3. SHOE DOG / PHIL KNIGHT

NIKEの創設者Phil Knightの自伝。 読んだひとの多くがそう感じるように、ナイキがこんなにも日本(日本人)と関係していたとはおもわなかった。

もちろん歴史は知っている、しかしそこに入れ替わり立ち替わり登場してくる人物たち。 彼を浮上させたのも、彼を窮地に陥れたのも、彼を救ったのも、すべて日本のひとたちだった。

ここで語られるすべてのエピソードは結局、情熱がすべてを動かしていくということだけが繰り返し形を変えて語られているに過ぎません。 でも結局、実際のところはそういうものなのかもしれない。 そしてこの本はそれをする勇気をくれる一冊でした。

この本には書かれていないエピソードとして有名なお話をひとつ。

彼が日本に通う際に同行したのが、彼の息子であるトラヴィスナイトであり、後のスタジオライカの社長です。 彼は子供の頃から通っていた日本の文化に興味を持ち、2016年にKUBO/クボ 二本の弦の秘密というすばらしい作品を生み出すことになります。

フィルナイトの情熱は息子のトラヴィスにも伝播し、すばらしい映画作品の誕生にも寄与することになりました。


2. 新しい分かり方 / 佐藤雅彦

佐藤雅彦さんのお仕事はずーっと好きで、本も好きでほぼ読んでるとおもうのですが、たぶん一番おもしろかったんじゃないかとおもいます。 もう最初の8ページくらいの写真で、その独特なテンポ、独特なトーンで持って行かれるとおもうので、ぜひペラペラとページをめくっていただきたいです。

この本は、「分かる」という漠然とした状態に対して、「これも分かるってこと? これも?」と、どんどん「分かる」の一言で片付けられていた「分かる」を具体的な事例によって分類し、実感させていきます。

そしてひととおり実感をさせたあとで、解説を重ねられます。 わたしたちは一体なにをどう「分かって」いたのか、そしてそれを分かったことによってどう考えていたのか、あるいはどう「分かっていなかった」のか、を。

つまりこの本は、読み進めていくことでさまざまな「分かる」という「体験」をさせているのです。 これがとてもおもしろく、不思議と心地いい。 結果的になんどもランダムにページをめくることになります。

そして結果的に、「分かる」ということを知るということは「分からなさ」を知ることであり、もっと言うとこの本で提示されていたのは「新しい分からない方」でもあったというね。 もうなに言ってるか全然わかりませんよね、そうですよね。 でもおもしろいので、ぜひ一度読んでみてほしいです。


1. さよなら未来−−エディターズ・クロニクル 2010-2017 / 若林恵

もとからWIREDは出たらチェックするというレベルでは目を通していました。 しかし、ある時期を境に急におもしろくなりはじめ、ある特集を見たときに初めて雑誌の特集に感心するということがあった直後くらいに休刊、というなんだか不思議な関わり方をしている雑誌です。 いま再度復活してて、目を通してみたんですが、わるくなかった。 でもなんかが足りない。 その理由は明らかで、この本を読めばわかるようにおもいます。 

こういうテクノロジーや科学についてのコラムは切り口と切れ味が重要だとおもっています。 各紙、元ネタとなる素材は同じ、もしくは近しいもので、それらをどのように切り取って見せるかが面白味のポイントだとおもいます。

でも若林さんはきっとそのときに(正確に言うとそのまえに)「なんで? え?なんで?」という問いを何度も突き詰めているようにおもうのです(ご本人が序文でも書かれているように)。 それがなにを生み出したかというと、切り口や切れ味とはちがった、もっと本質的ななにかをえぐりだす行為であって、それによって、言うなれば論としての強度が付加されている文章を生み出してこられたのだという風に捉えられたのです。 それを証拠に流れの早いテクノロジー界隈のエッセイであるにも関わらず、8年前の文章がいまもフレッシュにおもしろい。 そして結果的に昨年読んだ本のなかで、個人的に一番おもしろかった一冊になりました。

昨年はいろいろな試みを行われていらっしゃった模様で、その様子がとてもおもしろそうだったので、頼むから今年は関西でもやってくれ、と強く願っています。


0. 3月のライオン 14 / 羽海野チカ

マンガは買わないと決めたものの、「羽海野チカさんは例外」とあとから自分ルールに追加してしまったほど、好きな作品です。 (ちなみにオノナツメさんの作品は作品によっては買っていいというルールも追加されました。)

全体的に幸福感で満たされている本巻ですら、最後に「いや、でもここに至るまでにいろいろあったじゃないか!」と主人公に、そしてわれわれ読者にも気づかせ走らせる構成に、まんまと涙してしまいました。 家に帰ってから読んで本当によかった。。。

他にも後半に出てくるあのひとたちとのクロスオーバーに関しては、涙無しでは読むことができませんでした。 こんなにも程よい距離感で、こんなにも愛のあるクロスオーバーはじめて見ました。 他の作品のひとびとが、本作のひとびとと関わりあう。 そして止まっていた時間は、止まっていたのではなく、この世界と地続きのどこかで続いており、同じ時を刻み続けていた。 それによって変わった関係性や、距離感が現在の彼らの表情や言動ににじみ出ていて、もう本当に素晴らしい出し方だなとおもいました。

そしてこの作品を見て、結局下記2作も買ってしまいましよね。 うーん、よかった。。。



昨年もバタバタしてたわりに色々読めてたのがランキングにまとめてわかったけど、今年はもうちょっと物語的なものを読んでいきたいなぁ。。。

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足下研/スニーカー文化研究家
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