2019年本ランキング
2019年の本ランキングを発表いたします。
例によって2019年に出版されたものではなくて、「2019年にわたしが読んだ本」なので悪しからず。
11. 靴のおはなし1/いしいしんじ、大竹昭子、近藤良平、千葉聡、広瀬裕子
スニーカー文化研究家としてはこれは読んでおかねばとおもって手に入れたのですが、とてもおもしろかったです。 なによりもこの本をつくったのが靴屋さんという成り立ち自体がね、もうほんとうに素敵。
つぎ奈良に行くときはかならずループ舎さんの靴屋さんに行こうとおもってそのまま行けずにいるのですが、NAOTのおみせのとこだったのね! 納得!
10. ムービーマヨネーズ 第2号/Gucchi's Free School
ずーっと欲しくて、ずーっと買えなかったのですが、ついに手にいれました。
こんなにも一特集一特集がとても濃いというか(パーソナルというか)な映画本もめずらしいというか、特集も結構バラバラだし、しかし故に映画愛に溢れ映画愛によってのみ成立しているアンバランス感がとてつもなく好き。
このランキングの3位にSick in the Head/Jadd Apatowを選んでいるくらいなので、コメディの部分が個人的にはとても好き。 1号が入手できなかったことが悔やまれる。。。
9. 読みたいことを、書けばいい。人生が変わるシンプルな文章術/田中泰延
なんでSNSとか、noteとかでスニーカーのことをせっせと書いているかと聞かれてもぜんぜん答えられなかったのですが、この本を読んで、「そうか、いま自分が書いていることは「自分がこういうものが読みたいから書いてる」のか!」と納得させられてしまった本。 それこそ誰かに頼まれてもいないのに笑
そしてこの本はシンプルにおもしろい、まるでご本人のおはなしを目の前で聞いているかのような、距離感の近い文章。
8. 日本発酵紀行/小倉ヒラク
発酵という視点の旅、という時点でもう期待しかなかったのですが、予想通りのおもしろさ。 本当、この視点で旅に出てみたいくらい。
d47での展示もおもしろかったし。 なによりも香りだけで、子供のころ妙にすきだった漬け物がすんき漬けだとわかったり、へしこのにおいを嗅いだら口のなかがへしこになっちゃったり、食もそうだけど、発酵ってなんか五感が覚えてる感じがあるのがとても新鮮でした(おばあちゃんの漬け物の味とかね)。
「大事なのは『どうつくるか』ではなく『どうしてつくったか』だと思うんです」って、本当にそうだよなぁ。。。
7. ネンドノオンド/佐藤オオキ
デザイナーの英語のインタビューとか読むとおもうのだけど、日本のデザイナーの記事も、なんか英語になると口調違くない?っておもうことがたまにあって、それを上手く逆手にとった意訳ならぬ人格訳が非常におもしろかった。
ジャーナリスティックなインタビューだとたぶんNGなんだけど、読みものとしてはアリ、というかその人となりを理解できる結構おもしろい手段なのではないかとおもった。
6. 西欧の東/ミロスラフ・ペンコフ
海外文学に触れたくて、海外文学に詳しい友人にオススメしてもらって読んだのですが、すばらしかったです。
ブルガリアって、存在は知っていてもイメージがわかないというか、こんなにも世界が狭くなったのにちょっと遠い存在というか、そんな認識を持っていました。
しかしこの本で描かれるそれらは存在している、あるいは存在していた近しい存在として感じられる、文化がまったく異なるのにも関わらず。 全体として暗い色調を感じるのはイメージの問題だけではないはず。
5. 父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。/ヤニス・バルファキス
4. サードドア: 精神的資産のふやし方/アレックス・バナヤン
なにがキッカケでこの本を手に取ったのかは思い出せないのだけど、手に取って正解だったなといまではおもいます。
この本はとてもビジネス書のような体裁をし、ビジネス書のような売られ方をしているから、ビジネス書のほうに見られがちだけど、中身は物語であります。
だから読者のミスマッチが起こってしまっているのは、売りだした側の問題だなとおもうのですが、それでもこれをオススメしたいのはいわゆる昨年のシュードッグのように(あれもビジネス書のように売られてたな。。。)「語られるすべてのエピソードは情熱がすべてを動かしていくということだけ。この本はそれをする勇気をくれる一冊。」という点につきます。 この本はシュードッグよりももうちょっとロジカルかな。
3. Sick in the Head: Conversations About Life and Comedy/Jadd Apatow
10位 ムービーマヨネーズ 第2号でも触れたとおり、なんせコメディ、コメディアンが好きなのです。
もっと言うと、政治、宗教、人種といったセンシティブな内容に切り込んでいくアメリカのコメディアンが、それらをとてもウィットに富んだかたちで語るのを観るのがとても好きなのです。 これって日本だとまず観れません。
だから初めて海外で生活したときに、テレビでこんな内容を日常的にやってるもんだから、もう本当にカルチャーショックというか、大好きになりましたよね。 日本に帰ってきてから現在に至るまで、好きあらばトークショーを流して観て(聴いて)います。
上記に触れたひと以外だと、ジミーキンメルとかジェームズコーデンとかエレンデジェネレスとかティグノタロとかが好きです。
2. カステラ/パク・ミンギュ
単純なおもしろさだけだったら近年で一番おもしろかったです。
もう超ナンセンス。 村上春樹のナンセンスなショートショートを更にナンセンスにして短編にした、みたいな(わたしは村上春樹のナンセンスなショートショートが好きなのです)。
海外文学ってそのおもしろみの方向性の見えなさに躊躇しがちだったりするとおもうのですが、だからこそはじめての海外文学にオススメしたい。
またその軽さもオススメしたい理由のひとつ。 海外文学って結構重いものが多くなりがちだとおもうのですが、これむちゃくちゃ軽やかなんです。 割とヘビーな内容を扱ってても軽い。
いやぁ、見事でしたね。 近年韓国文学がヤバいとは聴いていましたけど、ここまでとは。。。 ほかの韓国文学にも触れていきたい。。。
1. ストーナー/ジョン・ウィリアムズ
2019年のベストではありません、生涯ベストです。
もう本当にすばらしいのひとこと。 ただこんなにもすばらしさを伝えるのがむずかしい本もめずらしい。
特別なことなんてなにも起きない、ただひとりの男の生涯を、ただただ淡々と丁寧に描いたという、ただそれだけの物語が、なぜこんなにも心を打つのか。
読了後しばらく考えてみたけど、「特別ではないただの男の物語」だったからじゃないかと、そうおもいました。 つまり、それは読んでいる我々、普通に日常を送り、たまたまこの本を手に取った我々こそが、「その男」に成り得るし、我々はその男に自分を写して読んでしまうからなのかもしれない、と。
またどんな仕事にも背景があるとおり、この本の成り立ちにも物語がありました。 詳しくはまず物語を読んでほしいし、そのあとに訳者あとがきを読んでほしいのでここには記しませんが、まさにこの物語を地で行くような背景が、この物語の翻訳を巡って起きていたとは。
もうこの本の成り立ちも含め、すばらしいのひとことです。
2019年も割とバタバタしてたわりに色々読めててよかったです。 2020年はひきつづき海外文学とその都度気になった本を手にする好奇心(と余裕)を持ち続けていきたいですね。
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