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BtoBマーケティングの価値は売上で測るべきと思うわけ

BtoBマーケティングのあるあるとして、経営や営業と目線が合わない問題があります。マーケティング部門の立場ってなんか弱いよねという声をよく聞きます。

何でそうなってしまうんでしょう。その理由を考えてみました。




マーケティングでアウトプットするのは"顧客価値"

BtoBマーケティングで必要な役割は広いです。その活動全体を通じてアウトプットされるのは顧客にとっての価値です。顧客価値を最大化するために必要な役割を組み合わせて活動する、それがマーケティング活動と言えます。


ここで問うべきは、"顧客にとっての価値"を定量的に測る指標は何か?ということです。結論からいうと売上で測るべき、それはBtoBマーケティングの役割を担う全部門で向き合うべきと考えています。

なぜか。

いったん定義に立ち返ると、マーケティングの定義は以下です。

マーケティングの定義(2024年制定)
(マーケティングとは)顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させることによって、ステークホルダーとの関係性を醸成し、より豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセスである。

※主体は企業のみならず、個人や非営利組織等がなり得る。
※関係性の醸成には、新たな価値創造のプロセスも含まれている。
※構想にはイニシアティブがイメージされており、戦略・仕組み・活動を含んでいる。

公益社団法人日本マーケティング協会
https://www.jma2-jp.org/home/news/916-marketing


ここで重要なのが「顧客や社会と共に価値を創造し」という部分です。価値とは自社だけで創造するものではありません。顧客と共に創造するものです。なので顧客の意思決定が深く関わる指標で測るべきです。

Webのページビュー、メールの開封率、セミナーの満足度、リードの獲得数などはあくまで中間指標なわけです。顧客価値からみたら遠くに位置するケースが多いです。


事業成果=時間軸×評価軸で測るもの。 評価軸は統一すべき

部門・役割によって短期 or 中長期、どの時間軸で評価すべきか異なります。事業成果の評価とは時間軸×評価軸で測るものです。

時間軸は部門の役割によって変わります。短期的に成果を追う、中長期的に成果を追う、そのミックスで事業を成り立たせるものです。

一方で評価軸は部門の役割問わず統一すべきです。組織目標がブレるからです。では何で評価すべきか?それは売上です。

BtoBビジネスにおいて顧客とは、組織としての企業 or 個人としての担当者、2階層あります。より大きな意思決定は組織レベルで行われます。そしてその代表的なものが契約、価値提供側からみた売上です。

だから大きな顧客価値をアウトプットできたか?は売上で測るべきです。そしてBtoBマーケティングに関わる全部門で向き合うべきです。

どこまでの時間軸を許容できるか、それは役割&権限の範囲によって決まります。

  • 社長 ➡ 就任期間の中で売上成果を上げる必要があります。何年も試行錯誤&投資してようやく何年後かに芽が出て大成功、、実はそれは社長プロジェクトだったという話をtoCマーケでは聞きます。会社として長期投資するにはそのための役割&権限が必要です。

  • 部長・課長 ➡ 事業フェーズによりますが、1~2年で売上成果の"兆し"を証明する必要があるでしょう。その部や課に継続的に人的・金銭的投資を行うべきと示す必要があるからです。

  • 現場担当 ➡ 短期で成果を示す必要があります。マーケティング活動全体というより、担当役割におけるオペレーションの実行性を示すことが求められます。


小さな指標で測ると、マーケティングの存在価値が小さくなる

Webのページビュー、メールの開封率、セミナーの満足度、リードの獲得数、、BtoBマーケティングではいろいろな数字が拾えてしまいます。人間は数字が見えるとそこに意識が向いてしまいがちです。ついその数字でマーケティングの成果を語ってしまいがちです。

しかしそれらは単体で顧客と共に価値を創造し、浸透させているのでしょうか? 答えがNoならば、それ単体でマーケティングの価値を語るのは不適切です。

全体像からみると一部分、下の赤枠についてのみ語っているに過ぎません。


Webのページビュー、メールの開封率、セミナーの満足度、リードの獲得数、これらは個人レベルの意思決定がもとになります。顧客の企業レベルの意思決定とはレベルが違います。

担当役割の中でオペレーションのために向き合うことは必要ですが、BtoBマーケティング全体の価値を測るには適切ではありません。レベル感が小さいので、マーケティングの存在価値を小さくしてしまいます


マーケティングと事業経営の関係性

BtoBマーケティングの役割は大きく3つに分けられます。
・価値の創造
・価値の伝達
・仕組みづくり

会社の部門は大きく2つに分けられます。違いは活動によって利益を産み出すか否かです。
・プロフィットセンター
・コストセンター

事業経営ダッシュボードともいえるP/L(損益計算書)との関係性を整理すると以下のようになります。


価値の創造をする部門はプロフィットセンターといえます。売上を得る一方で原価がかかります。その差が利益です。顧客価値の大きさは売上ではなく利益で測るべきという考え方もあります。

価値の伝達をする部門はプロフィットセンターといえます。売上を得る一方で販売費がかかります。P/Lでは”販売費及び一般管理費”と一括りにされるのが一般的ですが、ここでは便宜上分けています。

仕組みづくりの部門はコストセンターといえます。活動によって直接的には売上や利益を得ません。プロフィットセンターのサポートの位置づけです。業務目標に業務効率化を掲げるケースが多いです。

価値の創造、価値の伝達、両方で計上されるのが売上です。シンプルです。

BtoBマーケでは必須ともいえるSFA・MAで管理しやすいのも売上です。そもそも売上管理の思想が強いSFA・MAもあります。原価や販売費がいくらかかったのか、案件ごとに適切にSFA・MAで管理するのは難しいでが、売上ならシンプルに管理できます。

トータルで考えると、顧客価値を測る指標=売上とするのがシンプルで運用しやすいです。これらがBtoBマーケティングの価値は売上で測るべきと考える理由です。


売上で測るメリット

施策の最適化ができる

SFA・MA・CRMを連携させることで、広告、Webサイト、メール、セミナー、インサイドセールス、営業商談、どのアクションが売上に貢献したか測れます。やりようによってはどの広告バナーが売上に貢献したかのレベルで測れます。

なので売上につながる施策にヒト・モノ・カネの投資を集中させられます。また最適化の試行錯誤の中で、どんな顧客が何に価値を感じて意思決定をしてもらえたのか、顧客理解のための定量データが手に入ります。


経営・営業と目線を合わせられる

経営や営業が使う言葉の1つに「トップライン」があります。その名のとおり事業経営ダッシュボードともいえるP/L(損益計算書)の一番上に計上される数字です。経営や営業が日常的に気にしている指標です。

マーケティングを広義に捉えて事業経営とするならば、マーケティングに関わる全部門が同じく売上と向き合うべきです。BtoBマーケでよくいうリードとはいわば売上のための材料仕入れです。仕入れだけでなく、顧客価値と向き合っていきたいものです。


長期的投資のための原資が確保できる

事業経営を回していくにはプロフィットセンターだけが正義というわけではありません。企業は人なりと言います。人的資本のためにスキル・能力を伸ばしたり社内のコミュニケーションを活発にしたり、仕組みづくりに対する投資も重要です。

とはいえ投資には原資が必要です。なので価値の創造、価値の伝達、仕組みづくり、3つが循環して継続的な活動をすることが求められます。

メリットの1点目、どのアクションが売上に貢献したか測れる、これは将来の売上が確からしく予測できることでもあります。どの施策をやれば、どれくらいの期間を経て、いくらの売上につながる、過去のデータから予測が可能になります

未来が確からしく予測できるから仕組みづくりという直接的に売上を産まないものに投資判断しやすくなる、これも売上と向き合うメリットです。


おわりに

売上はマーケティング活動がうまくいっているかを測る健康診断のようなものと捉えています。振返りのための手段です。

気をつけるべきは、健康診断の数字に踊らされない、目先の売上だけを追いかけないということです。目的は長期的な顧客価値を大きくすること、売上はそのためのモノサシです。

顧客価値の答えは数字の中ではなく顧客の中にあります。顧客価値を数字にして測る、でもその数字にとらわれずクリエイティブな活動をする。

ある意味で矛盾する2つを両立させるのがポイントで、マーケティングの面白いところです。

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