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不登校と中学受験(7)

中学受験に合格しても、Tくんのように身動きできなくなり、不登校になったり、ひきこもったりすることがあります。

これは一体、何が問題なのでしょうか。

その原因は何で、どうしたらよかったのでしょうか。

そこで、大元の「中学受験」というものを考え直してみたいと思います。


これは、有名国私立中学のある都市圏でのことが多く、それ以外の地域とは、また事情が違うかもしれません。

また、人口の流入が続く東京都や神奈川、千葉、埼玉などの関東と、それ以外の大都市圏でも、また、事情が異なる部分があります。



それをわかった上でお聞きしたいのです。


「なぜ、中学受験をさせるのですか?」
「進学させたい国私立中学に何を求めるのですか?」
「その中学校に進学させて、どうなってほしいのですか?」


これを考えていただきたいと思います。


中学受験が良い、悪いという観点で考えているのではありません。


なぜ、中学受験をさせるのですか?

これについて、お父様、お母様の中で、もう一度、整理してみてほしいのです。

この中学受験をなぜさせるのか、ということを考えるときに、合格実績というものについて、少し考えてみたいと思います。


私は大阪なので、どうしても関西の中学受験のことを題材にしてしまうのですが、灘中の合格者数についてです。


ちょうど今、2023年の関西の中学入試が、受験のある国立・公立中学を除いて、ほぼ終わって来ましたが、2022年春の入試で、灘中に10人以上合格させた塾は、浜学園、馬渕教室、希学園、早稲田アカデミー、日能研、SAPIX、能開センターですが、この公表されている合格者数の合計はちょうど350名です。


ちなみに、灘中の募集定員は180名です。

これはどういうことかは、お分かりと思うのです。

塾を掛け持ちされている方がかなりの数にのぼるということです。


そんなことは、当たり前のことだとおっしゃるかもしれません。

そのことには、何も問題はありません。


ただ、このことも踏まえて、中学受験をなぜさせるのですか?という問いの答えを考えてみたいと思うのです。


東京では、地域によっては同じ小学校の中で、塾に通っていない子どもが数名で、ほとんどの生徒が中学受験をする地域もあるのです。

もう、なぜ中学受験をさせるのか、などと考えることもなく、中学受験をするのが当たり前のように思われているご家族もいらっしゃると思います。



そこでです。
もう一度お聞きします。



なぜ、中学受験をさせるのですか?


これまで出会った子どもの保護者の方がらお聞きした答えを中心に幾つかをあげてみたいと思います。


中学受験をするのが当たり前だから
難関国立大学に合格しやすいように
大学の附属中学校なので、その大学に通わせたい
中学はここしかないと考えていた
目指すならTOP校が良いと思うから
高校受験をしなくてもよいから
とにかく公立中学の教育を受けさせたくない
将来の職業として◯◯になってほしいから
子どもに少しでも高みを目指してほしいから
子どもが将来、仕事の選択肢が多くなる近道だから
同じくらいの子ども達と楽しく競走しながら学校生活を送ってほしいから
この学校の教育方針が良いと感じたから
など


まだまだいろんな回答が考えられると思います。


ここから読み取れることを少し考えていきたいと思います。


まず一つ目の観点です。

私立中学に受験するのは、ご家族は合格できる可能性の高い大学が増えるとお考えになっていることがわかります。ランクの高い大学への合格の可能性が増えるということです。

だから、私立大学の附属中学も含めて、参考にされるとしたら高校の「大学進学実績」なのではないかと思います。

ということは、大学の進学を考えて、中学受験をさせていてる、と言い換えられます。もっと言えば、その先の仕事、職業の選択の可能性を考えて、中学受験を考えていると言えます。

このことは、ご家族がこれまでの人生での経験上、大学のランクが高いほど、難しいところに行くほど、のちの職業選択の可能性が圧倒的に増えると考えていることがわかります。

下手をすると、その大学選びによって、豊かな生活、安定した生活が送れるとまで考えていることがわかります。

実際に、東京大学の卒業者の生涯賃金が4億6千万円というデータもあるくらいです。

ですから、子ども達に少しでも高額な収入を得て、安心して生活をさせてあげたいと望んでいるということです。


これはある意味で事実ですし、本当に親心として当然であると言えると思います。


別の観点から考えます。

中学受験をすることが当たり前になっている地域からすると、「しないのはなぜ?」と疑問になると思います。

地域的にも同じ地域であれば、それほど通学距離的にも変わらないこともあります。その地域独特のものもあるかもしれません。

経済的にも同じような家庭の子ども達の中にいてほしいと考えているということも読み取れます。


これは極端な家庭環境の違いではなく、同じような環境の子ども達と、安心して友達をつくり、切磋琢磨して充実した学校生活を送ることを望んでいらっしゃることが、読み取れます。


だから、あまりにも家庭環境の違い、特に経済的な環境の違いはない学校の選択を望んでいるのではないかと考えられます。


あと一つの観点から考えたいと思います。

これは、学校の教育方針が、ご家族が子ども達に受けさせたい教育と一致するか、それに近い教育であることを望まれているということが読み取れます。

どのような教育を受けさせたいのか、進学だけでなく、学校生活の中で、何を大事にするかとご家族がお考えになっているかです。

そのことは、子ども達にどのように育っていって欲しいか、ということをご家族がお考えになっているということだと思います。

なぜ、中学受験をさせるのか、ということについて、ご家族のお考えを読み取ってみました。


もっと多くの観点があると思いますが、今は3つだけ取り出してみました。


さて、ここで、最初に灘中を志望する子どもが多い、有名進学塾の発表する合格実績の合計数が、灘中の定員の2倍くらいになることが、どう関係があるかということなのです。

大手中学受験進学塾が合格者を水増ししていないという前提で考えると、塾を掛け持ちをしている子ども達が、かなりの数にのぼるということなのです。


早稲田アカデミーが関東圏を中心だと考えると、他の塾との掛け持ちが難しいことから考えると(実際のところがどうかという業界内の問題は別として)、残りの塾どうしての掛け持ちの生徒がかなりいるということなのです。


これは、3つの観点だけでなく、他の観点も含めて、塾を掛け持ちしてでも、合格させたいというご家族の強い思い以外の何ものでもないことがはっきりとわかります。

なぜなら、少しでも合格しやすいように、子ども達にとって、良い授業、合格のために必要な塾のサービスを受けやすいようにという、ご家族の思いだと考えられるのです。

中学受験というのは、結論から言うと、ご家族が子ども達に望んでいることである、と言い切ってもいいということなのです。


なぜなら、対極になるのが、公立中学への進学です。

費用もかかりません。絶対に受けさせなければならないとされている教育です。

ですから、塾の掛け持ちをしてでも、お金がかかったとしても、少しでも合格の可能性を高めてあげたい、という親心でしかありません。

それも、かなり強い希望であることは、間違いありません。子ども達がどう感じるかよりも、ご家族の思いが優先されることも多いでしょう。

それが、ご家族の子ども達への強い愛情の表れとも言えるのです。



これが子ども達の感情面を大切にし、うまく軌道に乗っているときはいいのです。

ところが、間違うことがあり、Tくんのようなことが起こってしまうのです。

Tくんのようなことは極端な例かもしれませんが、子ども達をめぐって、問題が起こることがあることも事実なのです。

なぜ、問題が起こるのかを、現実にあったことから考えてみたいと思います。

これは、中学受験するのであれば、少しでも子ども達が元気で、自分の可能性に向かって頑張って欲しいと思うからなのです。


だから、Tくんのようなことは、ないに越したことはないのです。

そのためにお話させていただいているのです。



進学塾TMC池田 講師
フリースクール・パーソナルアカデミー カウンセラー・講師

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Keisuke Tani
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