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【読書感想文】実際にあった珈琲屋が元になっている絵本『かんばんのないコーヒーや』
実際に日本のどこかにあった珈琲店のマスターが元になっているお話。
あらすじ
自分の淹れるコーヒーに自信があったオオカミくん。ある時森の中を歩いているとどこからかコーヒーの匂いがする。匂いにつられて看板のないコーヒー屋に入りそこのクマのマスターが淹れてくれたコーヒーを飲むと、自分のコーヒーとは桁違いの美味しさに感動したのだった……、というお話。
あまりの美味しさに感動したオオカミくんは、クマのマスターに弟子にしてくれと頼み込むが、マスターは「自分もまだまだ勉強中でね……」と弟子入りを断る。それでもオオカミくんは自分なりにコーヒーの研究をしていく、というふうに話が続く。
何かを極めるとは、まさにこういうことだ。
誰かに教えを乞うのも一つの道だが、最終的には自分で試行錯誤するしかない。
よく師匠を崇め過ぎている弟子たちがいる。師匠の教えは「絶対」と思っている彼らには発展がない。その弟子たちに「なぜ、こうなのか?」と訊くと、「師匠にそう教わったからだ」と答えるのだ。
それで本人がいいならそれでいいのかもしれないが、個人的には本当に何かを極めようとするのであれば「そう教わったから」で終わってはいけない気がする。
まずは教わった通りにやってみる。それができるようになってきたら、教わった方法でないものを試したり、自分で工夫を凝らす。
そうやって独自に重ねられた試行錯誤が、やがて教わった以上のものを生み出しどんどん発展していき、多様な文化や流派が世界を色あざやかに染め上げてくれるのだ。
そんなことを偉そうに言っている僕自身(カフェ店主)も、コーヒーの道はまだまだ勉強中である。よくコーヒーを「美味しい!」と褒めてもらえてはいるが、僕はとにかく丁寧に淹れているだけで本書のマスターのようにはなれていない。
ただいろいろと試してみて確実に言えるのは、コーヒーというものは「豆の鮮度」が一番大事だということだ。
コーヒー豆というと見た目で鮮度がわかりにくいものなので、軽視されがちだが、野菜などと一緒で時間が経てばどんどん劣化していっている。採れたての野菜が美味しいように、新鮮な豆で淹れるコーヒーはそれだけで美味しいのである。
どれだけ道具や淹れ方にこだわっても、豆自体が古ければどうしても味は落ちてしまうので、とにかくうちのブックカフェでは「鮮度」に拘る。鮮度に拘っている豆屋さんから、頻繁に仕入れて豆を随時入れ替えている。新しい豆だけをカフェで使い、古くなった豆は自分用として使っている。
コーヒーのこだわりを書いていると、それだけで一つの記事になってしまいそうなので、ここらで終わるとする。コーヒー豆は鮮度が命、とこれだけ覚えていただけたらと思う。
拘ることの面白さや素晴らしさを考えさせてくれる、素敵な絵本でした。
↑うちの店で使っているコーヒーミル。個人で使う分には、高級な電動のものを買う必要はなかったりする。手挽きでもこれなら一人分は数十秒で挽けるし、電動のものと違ってコンセントや場所も占領せず、挽く粗さも好みに合わせて調整できるので、非常にお勧め。
粉で買う人も多いが、粉だと空気に触れる面積が増えて鮮度が落ちやすいので、やはり淹れる直前に豆から挽くのがベスト。