続き)i'm ok & you're not ok は難しい
先週は、交流分析の考え方を使って、クレームを言うお客さまが、どれに該当するかを考えてきました。
しかし、A、B、CとあげたうちのAさんのみで先週も終わってしまいましたので、今回はBさん、Cさんと進めたいと思います。
ちなみに、先週の記事はこちら。
「交流分析だの i'm ok だの、なんだ?」と思われた方は先々週の記事(↓)をご覧ください。
それでは、パターンBのお客さまです。
Bさんの場合 i'm not be & you're not be
それは、こんな感じのお客さま。
この人は、応対者に向かって怒っていますが、応対者のことを怒っているわ
けではありません。
この状態を言葉にすれば「ラッキー!お金の元が向こうから転がり込んできたぜ!よし、ここは俺の腕の見せ所だ。なるべく多くむしり取ってやるぜ」
本心をいえば、「わざわざ俺に不良品を送ってくれるなんて、なんていい会社だ!」ということになります。
そう考えると、この人は i'm ok & you're ok 状態です。
ただし、言葉の上では you're not ok を思い切り打ちだしてきて、応対者を「 i'm not ok & you're ok 」の状態に持っていきたいんです。
したがって、仕事としての対応は、「誠意を見せろとおっしゃるのは構いません(= you're ok)が、いたしかねます(=i'm ok )」で終わりです。
終わりなのですが、もう一歩踏み込んで考えると、この人は本当に「i'm ok」だろうかと思うのです。
先に、この人は「 i'm ok & you're ok 」だと書きましたが、当然のことながら、電話口で「お宅はいい会社だ」とも言いません。
こういう人は、大声で怒鳴り、こちらを責めます。
でも、どのように傷ついたか、そこに寄り添おうとしても、寄り添うことはできません。そもそも傷ついていないからです。
実在しない「客」を演じ、会社に独り相撲を取らせ、自ら金を払うように仕向けたいのです。
こんな自分を隠した生き方が幸せでしょうか。そう考えると、これは「i'm not ok」どころか「i'm not be」ではないでしょうか。(英語に詳しいnoterさん、英語の使い方が間違っていたら、なんと直せばいいか教えてください!→教えていただきました。下の追記をご覧ください)「私」がいなければ「あなた」もいません。「あなた」を見る主体である「私」がいないのですから。
それでもこの人は、小さい頃「ねえお母さん、今日僕ね!」「僕がね!」「僕はね!」と言っていたはずなんです。
このケースは「i'm ok & you're not ok 」に見えるかもしれませんが、「i'm not ok & you're not ok」、もっと言えば、「i'm not be & you're not be」(=俺がどんな人間だろうが、お前がどんな人間だろうが知ったことか)です。
こういう人に、コールセンターは何もしてあげることができません。
ただ、時間や手間がかかるからと相手の言うなりになることは、相手の「i'm not be & you're not be」を強化してしまうことになりますので、それだけは避けたいものです。
Cさんの場合 i'm not ok & you're not ok
最後のCさん。それは、こんな感じのお客さま。
Bさんと同様、犯罪まがいの電話ですが、Bさんと違って自分の聞きたいことを聞いていますね。
でも、このCさんも、こんな質問をされて喜んで答えてくれると思っているわけではないでしょう。このような電話をかけてくる人で、発信者番号を通知してくる人はいませんから。
であれば、なぜこんなことをするのかといえば、人の反応が欲しいからです。人は普通、「ありがとう」とか「かっこいいね」などの良い反応を求めます。けれど、それが求めても得られないと思うと、今度は「そんなことしちゃダメでしょ!」「悪い子ね!」という反応でもいいから集めようとします。i'm not ok のほうが、i'm not be よりマシだからです。
でも、思わず「you're not ok!」と応対者が言わされてしまうような電話は、その応対者も深く傷つけます。
このような場合、コールセンターではいかに応対者を守り、無駄な時間を使わないように済ませるかに集中しますので、すぐ男性に代わるなどの対応を取ります。
ただ、海外の「いのちの電話」のようなところではこういう人が持っている傷に寄り添うような訓練も行っていると聞いたこともあります。
電話を切った後、こちら側もつらいですが、電話をかけた人もつらい時間が待っているのでしょう。
このケースは「i'm not ok & you're not ok」だと考えます。
i'm ok & you're not ok は難しい
「i'm ok & you're ok 」ではない入電を、3つのケースで見てきました。
この中に「i'm ok & you're not ok 」に一見、見えるケースはあっても、「i'm ok & you're not ok 」はありません。
「i'm ok & you're not ok」と見えるとき、それは、ほぼ「i'm ok」ではないときです。
たとえばプレゼントを渡せなかったショックを受け入れられないAさん。
自分を自分で見捨ててしまったBさん。
自分が「 you're ok 」を得られるわけがないとあきらめて「you're not ok」を集めるCさん。
「i'm not ok」な状態で相手を見れば、「not」に見えます。
それは、人が自分を通してしかものを認識することができないからです。
逆の言い方をすれば、「 you're not ok 」と思ったときには、どこかに「i'm not ok」が隠れています。
自分が、「なんてひどい奴だ!」「こんなやつ、許せなくて当たり前だろ」と思ったときほど、ちゃっかり隠れています。
これは、コールセンター経験から私が感じたお話です。
ん、コールセンター以外の経験も混じってるかな?
それでは、また。
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