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『「介護時間」の光景』(66)「水たまり」。7.14.

 いつも、このnoteを読んでくださっている方は、ありがとうございます。おかげで、こうして記事を、書き続けることができています。

 この『「介護時間」の光景』を、いつも読んでくださってる方は、「2006年の頃」から読んでいただければ、これまで読んで下さったこととの、繰り返しを避けられるかと思います。(終盤に、今日、「2021年7月14日」のことを書いています)。

 初めて読んでくださっている方は、見つけていただき、ありがとうございます。
 私は、臨床心理士/公認心理師越智誠(おちまこと)と申します。

自己紹介

 元々、私は家族介護者でした。
 1999年に介護を始めてから、介護離職をせざるを得なくなり、介護に専念する年月の中で、家族介護者にこそ、特に心理的なサポートが必要だと思うようになりました。

 そうしたことに関して、効果的な支援をしている専門家が、自分の無知のせいもあり、いるかどうか分からなかったので、自分で少しでも支援をしようと思うようになりました。

 介護をしながら、学校へも通い、2014年には、臨床心理士の資格を取りました。2019年には公認心理師資格も取得しました。現在は、家族介護者のための、介護者相談も続けることが出来ています。

「介護時間」の光景

 この『「介護時間」の光景』シリーズは、介護をしていた時間に、どんなことを考えたのか?どんなものを見ていたのか?どんな気持ちでいたのか?を、お伝えしていこうと思っています。

 それは、とても個人的なことに過ぎませんが、それでも家族介護者の気持ちの理解の一助になるのではないか、とも思っています。

 仕事もやめ、母の入院する病院に通い、家に帰ってきてからは、妻と一緒に義母の介護を続けている時には、将来のことは、少し先のことさえ考えられなくなり、ただ、毎日の目の前のことだけを見るようになっていました。それが、2000年から続きました。

 自分が、母の病院に通っても、医学的にプラスかどうかは分かりませんでしたが、でも、通わなくなって、2度とコミュニケーションが取れなくなったままになったら、と思うと、怖さもあって、通い続けていました。

2006年の頃

 その日々に少し慣れて、母の症状も安定し、少し自分のことを考えられそうになった2004年の頃、母の肝臓にガンが見つかりました。手術を受け、その時には、いったんは良くなったのですが、翌年、再発し、年齢などの状況もあり、また手術することなどは難しくなりました。

 それから、いつもの病院に通う日々に戻ったのですが、どうなるのか分からない時間の中で、2006年には家族で旅行に行く予定を立てたりしていました。よく分からない緊張感が増した気もしていたのですが、家に帰ると、妻と一緒に義母の介護は変わらずに続いていました。
 

 介護をしている頃は、周囲の違和感や小さな変化にかなり敏感だったような気がしますが、この2006年の頃は、毎日書く文章の量が短めになっていました。


2006年7月14日



「病院に着く。花をかえた。病室の壁に貼ってあった写真をかえた。壁紙が少しはがれてしまった。病院の行事で、母を写してくれた写真を申し込んだ。

 いつもの時間が流れる。
 夕食は35分くらいかかる。7割くらいは食べた。焼き魚のおかず。

 午後7時に出る。

 明日は休む、と伝える。
 弟が来てくれる予定だった。
 暑い」。


水たまり

 乗り換えるための階段を降りる時、ホームの中程、ホントはないはずの場所に水たまりがあった。

 ホームにもでこぼこがあって、吹き込むような雨だったから、その雨水が水たまりを作っただけだと思うけれど、そこに水で出来た「◯」があるのは、私は初めて見たはずなので、階段を降りながら、原因は分かった気がしたけれど、見た瞬間には、その光景自体に納得できない気持ちがあった。

                         (2006年7月14日)


 母は2007年に病院で亡くなり、それから義母の介護は続いたが、2018年年末に103歳で亡くなり、介護は突然終わった。それから1年と少しで、コロナ禍に突入した。

 もっといろいろなことができると思っていた「介護後の時間」は、今年の年末で丸3年になるが、想像以上に何もできていなくて、焦るばかりの時がある。


2021年7月14日。

 昨日は、眠る前に、干していた洗濯物を部屋の中へ入れた。

 夜中から雨が降るという予報が出ていたのだけど、晴れていると思ったら、急に雨が降る、という繰り返しは続いていて、その対応は、ちょっと面倒くさい。

 起きたら、薄曇りだった。

 妻が「今日は、曇りだけど、降ったり止んだりするんだって」と教えてくれる。

 「洗濯物も、クターってなってる」と肩を落とすような、ジェスチャー付きで伝えてもらったけれど、乾かないと、次の洗濯もできなくて、ちょっと困る。

セミの声

 少し窓を開けたら、少し遠くから、ミーン、ミーン、ミーン、というセミの声が聞こえてくる。昨日から、急に鳴き始めた。

 まだ、音量は真夏のような大きさには届かないのだけど、毎年、ある日から急に鳴き始めると、毎日、セミの声が響いていき、だんだん大きくなって、うるさいほどになり、そのうち、急に、またセミの声が消える。

 そんな繰り返しを思い出し、やけにきっちりと日程を守る感じが、ちょっと不思議に思えた。

アイロン

 近くのスーパーに買い物に行き、プリンなどを買って、戻ってくる。
 ご近所の方にいただいた、おいしいメロンと一緒に、アイスも乗せて、おやつで食べた。

 とてもおいしかった。すごく贅沢なプリンアラモードのようだった。

 ずっと、雨が降るか気にしながら時間がすぎ、天気予報が、あまり当たらないくらい大気が不安定なのだろうけど、それでも、予報よりも、雨が降る時間が少なくなっているようで、洗濯物が少し乾いてきて、ありがたかった。

 夕方になり、私が着るワイシャツにアイロンをかけてくれていた妻が、少しだけ沈み気味の声で、言った。

「1000人超えちゃった、って」。

 東京の新規感染者が、また4桁になった。だけど、私は、もっと増えると思っていて、それで、不安だけがある。



(他にも介護のことを、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでいただければ、ありがたく思います)。


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越智誠  臨床心理士/公認心理師  『家族介護者支援note』
 この記事を読んでくださり、ありがとうございました。もし、お役に立ったり、面白いと感じたりしたとき、よろしかったら、無理のない範囲でサポートをしていただければ、と思っています。この『家族介護者支援note』を書き続けるための力になります。  よろしくお願いいたします。

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