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「介護時間」の光景(64)「人」。6.28.

 いつも読んでくださっている方は、ありがとうございます。おかげで、こうして書き続けることができています。

 この『「介護時間」の光景』を、いつも読んでくださってる方は、「2001年6月28日」から読んでいただければ、これまで読んで下さったこととの、内容の繰り返しを避けられるかと思います。

 初めて読んでくださっている方は、見つけていただき、ありがとうございます。
 私は、臨床心理士/公認心理師越智誠(おちまこと)と申します。

自己紹介

 元々、私は家族介護者でした。
 介護を始めてから、介護離職をせざるを得なくなり、介護に専念する年月の中で、家族介護者にこそ、特に心理的なサポートが必要だと思うようになりました。

 そうしたことに関して、効果的な支援をしている専門家が、自分の無知のせいもあり、本当にいるかどうか分からなかったので、自分で少しでも支援をしようと思うようになりました。

 分不相応かもしれませんが、介護をしながら、学校へも通い、2014年には、臨床心理士の資格を取りました。2019年には公認心理師資格も取得しました。現在は、家族介護者のための、介護相談も続けることが出来ています。

「介護時間」の光景

 この『「介護時間」の光景』シリーズは、介護をしていた時間に、どんなことを考えたのか?どんなものを見ていたのか?どんな気持ちでいたのか?を、お伝えしていこうと思っています。

 それは、とても個人的なことに過ぎませんが、それでも家族介護者の気持ちの理解の一助になるのではないか、とも思っています。今よりも、周囲の細かい変化に敏感だったように思います。

 今回も、昔の話で申し訳ないのですが、前半は「2001年6月28日」のことです。終盤に、今日、「2021年6月28日」のことを書いています。

2001年の頃

 1999年から介護が始まり、2000年に、母は転院したのですが、私は病院に毎日のように通い、家に帰ってきてからは、妻と一緒に義母の介護を続けていました。

 それ以前の病院といろいろあり、そのことも原因で私自身が心房細動の発作を起こし、これ以上無理すると死にますよ、などと医師に言われ、毎日、心臓の薬を飲み続けていましたが、まだ時々、母の病院へ行く途中の電車の車内で、めまいを起こすようなこともありました。

 そのせいもあって、うつむき加減で、次の病院に移っても、なかなか、医療関係者を信じることができませんでした。母も転院後、急になんの前触れもなく、症状が悪化したり、また回復したりを2000年の転院以来、何度か繰り返していました。

 そんな状況だったので、仕事を辞めざるを得なくなり、さらに気持ちは重く、先が全く見えなくなっていました。

 それでも、毎日のように母の病院に通っていました。
 自分が通っても、意味があるか分からなかったのですが、病院へ行かなくなって、症状が戻らなくなったら、と思うと、怖くて、とにかく通っていました。

 そんな頃の記録です。

2001年6月28日

『親戚の方の告別式。
 当たり前だけど、全く動かない。

 その後に、母の病院へ向かう。

 心房細動の発作を起こしてから、1年くらい経つけど、脈の異常を測定するためのホルダーを24時間、今日、体につけている。

 午後3時頃、母の病室に着く。

 腰のあたりにホルダーをつけていて、結構不自然なのに、母は気がついていないようだ。

 親戚の方が亡くなったことを告げる。
 驚いていた。ただ、驚き方が普通だった。

 その後に、「〇〇さんが、頑張らなきゃね」。
 そう続けるので、「〇〇さんは、去年、亡くなったよ」と伝える。

「え、亡くなったの」。

 もちろん、知っているはずだったのだけど、記憶は微妙に混乱していて、この前も同じような反応をしていた。

 だけど、動揺までいかなくて、ホッとする。

 違う話題になった。

「今日、体操だったのよ。…歌も歌った。3曲くらい…高校3年生…影を慕いて…なんだっけ…」。

 そんな話をしながら、ニコニコしていた。

 すごく眠い。

 でも、午後7時、いつもの時間まで病室にいた。
 
 いつも、もう帰ったら、と言うことも多いのだけど、今日は、一言もなかった。

 バスに乗って、駅に着いたら、電車がホームに止まっていた。
 人身事故のようだ。
 
 自分がつけている心臓の脈を測定するためのホルダーは、コードが出ているので、今はTシャツ一枚だったりすると、外からも丸わかりで、ちょっと変だと思う。

 午後7時40分に、ホームに止まっている電車に乗ったら、ずっと動かない。
 午後8時30分になって、やっと出発した。

 帰ったら、親戚から、母の状態を心配する電話が来ていたようだった。
 告別式に出ないせいもあったかもしれない。

 だけど、母は、いつもと同じだった。
 月曜日だから、3日前に持っていったバナナ4本がなくなっていたけれど、1日一本のペースより少し早いくらいだから、そんなに食べ過ぎでもないのだと思う。

 カリウム不足と医師に言われてから、なるべく切らさないようにしている』。



 東海道線。夜9時くらい。4人がけのボックスシートと横向きの2人がけの席が並んでいる車内。

 私は2人用のシートに座り、その正面にも2人が座っている。まったく関係のない他人同士のようだ。

 若い男女。おそらくほぼ同じような年代。20代半ばくらい。ネクタイをしめた男性は「モーニング」を読んでいる。女性は携帯のメールを打ち続けている。どちらも右足を上にして足を組んでいる。正面から見ていると、その組んだ足の角度、電車の揺れで動くタイミングや動き方まで、ものすごく同じだった。もちろん本人達は気づいていない。

                         (2001年6月28日)


 それから介護は続き、2007年に母が亡くなり、2018年には義母が亡くなり、介護が終わった。昼夜逆転の生活の修正に時間がかかり、少し戻ってきたと思ったら、コロナ禍になっていた。


2021年6月28日

 月に一度、30分くらい歩いて、ボランティアに向かう。
 午後2時前に家を出る。
 暑くなっている。
 
 道には、意外と人が多い。
 小さな子供連れが目立つ。

 工事現場の男性がホースで水をまいている。
 道路に叩きつけるように、丁寧に路面を濡らしていく。

 だんだん黒っぽくなっていくアスファルトを見ていたら、急にワクチン接種のことを思い出す。先週末、接種券が届き、その予約方法がはっきりとしないのは、個別の病院は、直接電話で予約する、ということになっているので、今日、電話しようと思っていたのに、忘れていたことに気がつく。

 心の中で、ちょっと、あーっという声を出していたが、帰ってくる頃は午後6時近くになっているので、明日にしようと思っていた。

 さらに歩く。
 
 公園では、小さい子供連れの女性が多く、逆さまに足をかけて鉄棒にぶら下がっている子供が笑っていた。

 もっと歩くと、すれ違う女性が、日傘をさしている。
 また、さしている。
 90%くらいの確率で、女性が日傘をさしているような気がしてくる。

 金網で囲まれたような公園があって、そこは球技オーケーの場所のようで、小学低学年の男子が5人くらいいて、サッカーをしている。

 もちろんマスクをしていないけれど、なんだかホッとはする。

夕方

 午後5時になり、また同じ道を通って、帰路に着く。

 住宅街の中を通っている真っ直ぐな道路で、自転車に何台も追い抜かれていく。
 計4台。小さい子供が3人。女性が1人の自転車には後ろに子供が乗っている。

 道路の上を、広がって、バラバラに前を行く子供の運転する3台の自転車。さらに後ろから、自動車が来た。一番後ろの母親らしき女性が、腕を動かし、何か声を出したら、3台はスーッと道路の左端にきれいに並んで走っていく。

 すごく統制が取れた動きだった。

 女性の後ろに乗っていた男の子が、脳みそがぐにゃぐにゃで、心臓もグニャグニャ。と大きい声で語って、笑っている。

 何の話だろう。

道路

 この時刻は、犬の散歩をする人が目立つ。
 同じプードルを連れている人同士が、近づいて、犬同士はさらに距離をつめ、それぞれの飼い主が引っ張って、違う道を進んで、遠ざかっていく。

 都議選が今度の日曜日だから、選挙のための掲示板が、ポスターで埋まっている。こちらを向いたカラー写真の顔ばかりの中、一人だけ、モノクロで横を向いている候補者のスローガンは「コロナ鬱ゼロ」だった。


 行きがけに通った公園で、子供達がサッカーをしている。

 さっきよりも人数は増え、プレーする子供の年齢層も高くなっている。
 20人くらい。

 明らかに活気が伝わってくる。

 もっと歩いていき、駅が近づいてくると、子供を乗せた自転車も増えて、ジョギングをする人もいて、どんどん道路に人数が増えていって、午後よりも夕方は、人出という感じになっていって、マスク以外は、以前の「街」のようになっていた。



(他にもいろいろと介護のことを書いています↓。よろしかったら、読んでいただければ、うれしいです)。


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