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『「介護時間」の光景』(108)「池」。5.9.
いつも読んでくださっている方は、ありがとうございます。おかげで、こうして書き続けることができています。
初めて読んでくださっている方は、見つけていただき、ありがとうございます。
私は、臨床心理士/公認心理師の越智誠(おちまこと)と申します。
「介護時間」の光景
この『「介護時間」の光景』シリーズは、介護をしていた時間に、どんなことを考えたのか?どんなものを見ていたのか?どんな気持ちでいたのか?を、お伝えしていこうと思っています。
それは、とても個人的なことに過ぎませんが、それでも家族介護者の気持ちの理解の一助になるのではないか、とも思っています。
今回も、昔の話で申し訳ないのですが、前半は「2001年5月9日」のことです。終盤に、今日「2022年5月9日」のことを書いています。
(※この「介護時間」の光景では、特に前半部分は、その時のメモをほぼそのまま載せています。希望も出口も見えない状況で書かれたものなので、実際に介護をされている方が読まれた場合には、気持ちが滅入ってしまう可能性もありますので、ご注意くだされば、幸いです)。
2001年の頃
ずいぶん前の話ですみませんが、1999年に母親に介護が必要になり、私自身も心臓の病気になったので、2000年に、母には入院してもらい、そこに毎日のように片道2時間をかけて、通っていました。仕事もやめ、帰ってきてからは、義母(妻の母親)の介護をする毎日でした。
入院してもらってからも、母親の症状は悪くなって、よくなって、また悪化して、少し回復して、の状態が続いていました。
だから、また、いつ症状が悪くなり、会話もできなくなるのではないか、という恐れがあり、母親の変化に敏感になっていたように思います。
それに、この病院に来る前の病院で、いろいろとひどい目にあったこともあって、医療関係者全般を、まだ信じられませんでした。大げさにいえば、外へ出れば、周りの全部が敵に見えていました。
ただ、介護をして、土の中で息をひそめるような日々でした。それが2001年の頃でした。
それでも、毎日のようにメモをとっていました。
2001年5月9日
『自分の心房細動をみてもらうための病院に寄ってから、いつもより少し遅めの午後5時過ぎに、母親の病院に着く。
出がけに、カサを持つ、持たないで、妻とモメる。
イライラしてしまった。
母親は、突然「今日は、水曜日くらい?」とかなり正確に分かっていた。
「水曜日は、刺しゅうとかをしたの」。
病院内での作業をすることで覚えているようだった。
「来週、バスで遠足行くって、看護婦さんが教えてくれた」
でも、4月の下旬に、そのために妻と一緒に洋服を選んだことは、全く忘れていた。さらに「昼は、これから」と言い始める。
ただ、油断はできないものの、少し会話も通じるようになってきている。
一緒にテレビを見る。
奈良が出てきた。
「新婚旅行の時、奈良ホテルに泊まったのよ」
そのあとに、便通の話になった。
「朝一番に、いつも出る。起きたらコップ一杯の水を飲むのよ」。
しばらくしてから、何か足りないものを聞くと、「みんなと違うとまずいから」という答えが返ってくる。
ふと昔の話をしてから、「たぶん、そうだったと思うけど」というのが口癖のように多くなっていて、自分の記憶に自信がなくなっているのかもしれない。
午後7時過ぎに病院を出る。
安心すると、やばいと思いつつも、いい感じになってきていて、こちらの心も少し穏やかになる』。
池
送迎バスに乗るために歩いてきた病院の前。
その敷地の中に池がある。いくつかのレンガみたいなブロックが沈めてあって、少し顔を出している。
夜になると、そのざらつき具合いが、光があたって、いい感じの質感になっている。
たばこを吸いながら、その方向をじっと見ている送迎バスの運転手。それを見ているかは分からないけど。
(2001年5月9日)
この生活は続いたが、2007年に母が病院で亡くなり、「通い介護」も終わった。義母の在宅介護は続いていたが、臨床心理学の勉強を始め、2010年に大学院に入学し、2014年には臨床心理士の資格を取得し、その年に、介護者相談も始めることができた。
2018年12月には、義母が103歳で亡くなり、19年間、妻と一緒に取り組んできた介護生活も突然終わった。2019年には公認心理師の資格もとった。昼夜逆転のリズムが少し修正できた頃、コロナ禍になった。
2022年5月9日
天気予報は、午後から雨らしい。
このまま暖かくなっていくのかと思っていたのに、少し気温も下がっている。
妻に聞いたら、この1週間くらいは雨が続くらしいから、このまま梅雨になるような気持ちにさえなるが、とにかく、今日出かける予定だったけれど、明日のほうが、まだ雨が少ないかも、といった予想をもとに、妻と相談をして、出かけるのは明日にする。
とても数少ない機会なのに、外出しようとすると、最近、よく雨が降るような気がする。
植物
庭には古い木材が立てられ、この前までは妻が作ったオブジェが飾られていた。
だが、先日、強風で飛んでしまい、設置に無理があると妻は思い、最初は、苔玉教室で作った苔玉が枯れ気味になってしまったので、それを乗っけてみたのだが、木材の穴にすっぽりと入ってしまった。そのため、木材の上に乗せるものとして、庭に生えている芝を抜いたら土がついていたので、それをそのまま、上に乗っけてみた。
少し、そのまま設置していたが、伸び具合いの姿のバランスがよく思えなかったので、芝を2ミリほど刈り込んだ。そうすると、いい景色になった。さらに、その翌日、玄関の横の、日のあたりにくいところに苔を見つけ、それを、はってみた。その作業で、もっと、妻のイメージに近づいた、という。
そんな時間と手間をかけて、今日も、木材の上には、「植物」が乗っている。
そこから、またさらに違う植物が生えてくるのを、妻は楽しみにしているらしい。
たこ焼き
作業を続けていたら、午後3時すぎに、妻がおやつを用意しくれた。
冷凍のたこ焼きを温めてくれ、この前、スーパーで安いからと買ってきたくずきりの両方を出してくれた。
温かいものと、冷たいもの。
もっと気温が上がるかと思ったら、なんだか肌寒いような気候になってしまったが、それでも、この前、コンビニで買ったアイスクリームをくずきりに入れる。
おいしいおやつになった。
意見
このところ、介護の元・当事者の視点を、これからも心理的支援の専門家として、どのように生かしていけばいいのか、考えることが増えた。
当事者として、もしくは経験者として気をつけることとして、自分が当事者、もしくは元・当事者だったとしても、それで、そのことを全部わかったようなことを言わない。しない。それは、臨床心理学を学んでいるときに言われ、それは当然、守ろうとしてきたが、さらに、考えるべきことが多くなっている気がする。
最近、読んだ本で、自分の意見で生きていくことの大切さ。そして、自分の意見について考え尽くすことの大事さ。さらには、その意見に独自性があるほど、少数の場合でも、反対されることは多く、だけど、結果として支持する人も増えてくるはず、といった内容でもあり、励まされる気持ちにもなった。
同時に、まだ考え尽くしていないのかもしれない、と思った。
感染拡大
ゴールデンウィークが終わり、コロナの新規感染者は、もう感染拡大の傾向になってきたようだ。
まだ、警戒する日々が続くかと思うと、雨も降り続けているし、気持ちも重くなる。
(他にも、介護のことをいろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでいただけると、うれしいです)。
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