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「介護時間」の光景㉘「鏡」。10.2.

 今回も、最初は、昔の話です。

 5年前の、2015年10月2日のことです。(後半は、2020年10月2日の事を書きました)。

 個人的なことですが、1999年から、介護生活に入り、途中で、私自身が心臓発作を起こしたこともあり、仕事もやめ、母親と義母(妻のお母さん)の二人の介護を続けました。途中で、家族介護者にこそ、心理的なサポートが必要と感じ始め、自分でも、そこに関わりたいと思い、臨床心理士を目指そうと思いました。

 2007年には、母が亡くなり、義母の介護は続いていましたが、本格的に勉強を始め、大学院に通って、修了し、試験を受けて、臨床心理士になったのが2014年のことでした。(リンクあり)。大学院を修了してから、1年以上、応募し続けたのですが、本当に仕事がなく、それでも、幸いなことに、2014年から、月に1日だけですが、家族介護者の相談の仕事を始められました。

 それから、約1年がたち、いろいろと努力はしているつもりでしたが、仕事は増えず、月に2日か3日くらいしか仕事がありませんでした。その一方で、義母は、2015年の年末で100歳を迎えようとしていましたが、介護は続いていて、夜間担当の私の就寝時刻は午前5時半を超えようとしていました。

 仕事を増やしたくて増やせず、収入面での不安は大きいままでしたが、ずっと疲れている感じが続き、薄く体調が悪いのが通常になっていて、だから、仕事が増えたとしても、それができる気がしませんでした。

 なんだか、矛盾した葛藤の中で、毎日を過ごしていたと思います。



自転車とすれ違った。
 私も、自転車に乗っている人にも、どちらもほとんど意識することなく、ただ通り過ぎた。

 振り返ると、ご老人といっていい男性が運転している。右側のハンドルに鏡。
 最近は珍しくなった、後ろを見るための丸い鏡に、ちょうど男性の顔がおさまって、映っているのが分る。
 走っているから、その顔が、鏡の震えと共に、ぷるぷると震えている。
 その顔がだんだん小さくなっていく。

                   (2015年10月2日)


 その日の夜中には、こんなことを書いていました。
 
「起きた時に疲労感はある。確かに昨日は仕事をしてトークショーを見に行って、質問もして、そこで知らない人に声をかけられて話もして、帰って来てから電話もして、それからメールも書いて、自分としてはやることが多く、疲れて当然だった。

 それでも、あさっても仕事もあるし、と思っていたら、妻までカゼをひきはじめて、気の毒と思うけど、どうしてこの時期に、とは思って、でも自分がうつしたかもしれないし、と思うと申し訳ないと思った。

 だけど、どう思っても状況は今回も悪くなるだけで、疲労がたまるだけで、ということが重なっていて、仕事でないことなのに、やることがあって、と思うと、なんだか余計にぐったりとしてしまう。

 今日は月に1度の歯医者の日だった。
 毎月、こうやって歯の掃除をしてもらっているから、今よりもひどい状況にならないことも事実で、それから、図書館へ行く。その時の手続きのことで、先方が間違え、こちらが言うまで気がついてくれず、微妙に、イライラしてしまった。

 それから、家に戻って来て、今度は整形外科に行って、腰をひっぱってもらう。介護を始めて以来、もう長い時間、このことを繰り返して来ている。だけど、それほどよくなった、というわけでもない。けんいんをしてもらいながら、自分の年齢を考え、もう10年くらい若かったら、と考え、できもしないことに少し重い気持ちになる。現実はただの貧困に近い、と書くと、ちょっと悲しくなる。

 それから買物をして、弟の誕生日のクオカードを買って、帰って来て、それから洗濯ものを干して、メールを送って、少しホッとする。だけど、お茶を妻として、しばらく何となくザワザワしていたら電話があって、メールのことで、それで少し話をする。

 また新しくメールが来て、それへの返事も必要だし、手紙も必要だし、それは、仕事でないのだけど、ご近所のことで、やらなくてはいけないことだった。

 妻はカゼをひきはじめているし、義母はあいかわらずだし、夜中に、ついさっき連れていったばかりなのに、またトイレに行くし、いろいろなことがとても嫌になるが、続けていくしかなくて、それで、また嫌になる」。

 2018年に、義母は亡くなり、介護は突然終わりました。


そして、今日は、2020年10月2日です。

 この前、妻に、河川敷に彼岸花が咲いていた話を聞いて、気になっていたので、私も一応マスクをして出かけました。

 歩いて、数分なので、かなり近いのですが、妻に、このあたり、と聞いていた場所に、彼岸花が咲いていました。

 緑色が少し弱ってきているものの、草はかなり背が高く繁っている中で、彼岸花の赤は、目立っていました。ここに、その花が咲く気配は、つい最近までは、まったく分かりませんでした。

 これだけ名前のイメージと合っている花は、珍しいかもしれません。

 午後3時くらいですが、河川敷には、けっこう人がいて、子供が多く、大人もいて、体を動かす姿が目立っています。

 そして、その草むらから、秋の虫の声が、りりりりりー、と聞こえてきて、それも、かなり大きく響いて、ずっと鳴き続けています。 
 家の近くでは、夜だけに聞こえていたような声で、昼間も鳴いているのを、この秋になってから、初めて聞きました。

 このあたりは、夏には、セミの声が、話し声が聞こえなくなるほど鳴いていたのに、当然ですが、今はその気配もありません。

 道路で、幼稚園の送迎バスとすれ違いました。
「登園前に、検温していない場合は、お申し出ください」。
 そんな手書きの紙が貼ってあるのが、目に入りました。

 

 家に帰ると、妻が、彼岸花のことを、さらに話してくれました。

 不思議な花だよね。
 ほとんど葉っぱもなくて、急に、ヒューッと茎が伸びて、つぼみができて、咲くんだよね。


(他にも、介護に関して、いろいろと書いています↓。クリックして読んでいただければ、うれしいです)。

「介護時間」の光景㉗「言葉」。9.24. 

家族介護者の気持ち⑨「待機」と「見回り」

「介護の大変さを、少しでもやわらげる方法」

「介護の言葉」

介護に関するリクエスト①「気分転換をしようとしても、悪いことが起きるような気がします。どうしてでしょうか」


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越智誠  臨床心理士/公認心理師  『家族介護者支援note』
 この記事を読んでくださり、ありがとうございました。もし、お役に立ったり、面白いと感じたりしたとき、よろしかったら、無理のない範囲でサポートをしていただければ、と思っています。この『家族介護者支援note』を書き続けるための力になります。  よろしくお願いいたします。

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