見出し画像

介護について、思ったこと②「ワクチン接種」

 いつも読んでくださる方は、ありがとうございます。

 初めて、読んでくださっている方は、見つけていただき、ありがとうございます。
 臨床心理士/公認心理師越智誠(おちまこと)と申します。

 元・家族介護者ですが、介護中に、介護者への心理的支援が足りないと思い、生意気かもしれませんが、自分で専門家になろうと考え、勉強し、学校へ入り、その後、2014年に臨床心理士になりました。2019年には公認心理師の資格も取りました。

 さらに、家族介護者の心理的支援のための「介護相談」を始めて、ありがたいことに8年目になりました。

(よろしかったら、このマガジン↓を読んでもらえたら、これまでの詳細は分かるかと思います)。

 このnoteは、家族介護者に向けて、もしくは介護の専門家に対して、少しでも役に立つようにと考えて、始めました。

 もし、よろしければ、他の記事にも目を通していただければ、ありがたいのですが、これまでは、あまり現在起こっていることよりも、もう少し一般的な内容を伝えたいと思って、書いてきました。

 ただ、今回、新型コロナウイルスのワクチン接種について、私が語る資格もないかもしれませんが、気になることがあり、お伝えしようと思いました。

 もし、よろしければ、読んでいただければ、ありがたく思います。

コロナ禍の介護

 今さら、私が言うようなことではないと思いますが、コロナ禍になってから、家族介護者の方も、様々な変化があり、場合によっては、これまで使っていたデイサービスや、ショートステイが使えなくなったり、感染のリスクが上がったりと、さらに負担が高くなって、大変な日々が続いているかと思います。

 介護の専門家の方々には、この状況にも関わらず、リスクを背負って、働いていらっしゃるので、私が言うのも失礼だと思うのですが、本当に大変かと思います。コロナ禍でも、介護サービスが使えているので、それで、何とか家族介護者も、介護を続けられているのだと思っています。私が言うのは筋違いかもしれませんが、とてもありがたいと思います。

ワクチン接種

 最近になって、高齢者にワクチン接種が始まっている、と言うニュースが流れています。
 

 私は、東京都の大田区に住んでいるのですが、当初の予定は、3月か4月くらいだったと記憶していますが、現在だと、5月の下旬から「クーポン」が送られてきて、それだけで摂取できるわけではなく、ご存知のように、電話やインターネットで予約しないと摂取できないようです。(詳細は、まだ分かりません)。

 しかも、本当に全員に行き渡るまでいつになるかは分からず、60歳以下については、検討中、という文字があったので、さらに予定は未定のようです。

 そして、勝手ながら気になったのが、東京都大田区のサイトでの、高齢者が認知症の場合の「Q &A」です。


Q1 質問
認知症を患っており、本人から接種の同意を確かめられない。その場合は家族が同意すれば受けさせることができるのか。
A お答えします
接種には、ご本人の接種意思の確認が必要です。意思を確認しにくい場合は、ご家族等に協力いただき、ご本人の意思確認をお願いします。
なお、ご本人が接種を希望されていているものの、何らかの理由でご本人による自署が困難な場合は、ご家族の方等に代筆していただくことは可能です。(厚生労働省HP)

 これは、よく読むと「グレーゾーン」があるようにも感じます。「ご本人が摂取を希望されているものの、何らかの理由でご本人による自署が困難な場合は、ご家族の方等に代筆していただくことは可能です」。この状況を、本当に確認するのは困難ですから、実質的には、「ご家族の方等の判断」に頼っている、というようにも読めます。

 厚生労働省や大田区の担当の方であれば、認知症の方々が、人によってかなり状態に差があるのをご存知でしょうから、このように、“とにかく本人の意思確認”と、壁となって跳ね返すような表現をしながらも、微妙なグレーゾーンを作るような回答をするのであれば、最初から、きちんと答えて欲しいと思ってしまいました。

回答欄の言葉

 では、どんな回答ならいいのか?を考えてみました。

 この回答欄に、「どれだけ丁寧に意思を確認しようとしても、認知症などにより、意思確認が困難な場合、普段から介護をされている家族の方等の同意でも有効です」という言葉があれば、いいのにと思いました。

 介護をされている方は、真面目な方が多いので、認知症であっても、本人の意思を確認しようとする方が多いと思います。ただ、現在のコロナ禍に関しても、ほとんど気にしていない方もいれば、とても怖がっていたりと、認知症の方でも、いろいろな反応をされているようです。

 そこで、不安を必要以上に増やさないように、その上で、感染のリスクを少しでも減らすためにマスクをしてもらうために知恵を絞る場合もあれば、テレビなどをなるべく見せないように、といった個別な対応を工夫されていると思います。

 そこにワクチン接種という新しい“未知の出来事”への説明や、理解してもらうことを考えたら、とても難しい場合があると考えられます。そのやり取りで、せっかく減らすことができた、認知症の方の不安感が再燃してしまう場合もあるでしょう。そうなった場合は、“とにかく本人の意思確認”を強調するかのような、この「通達」のような回答は、とても嫌なものになってしまうかもしれません。

 それに、日常的に介護をされている方は、家族であっても、プロの方であっても、要介護者に対して、どうすれば、少しでも負担が減るのか、できたら快適でいてほしい、と願うように介護をしているはずです。

 そして、本人の意思決定を尊重しつつも、意思確認が難しい場合は、どこかで微妙な後ろめたさを持ちながらも、医療などに関しては、説明を聞いて、よりより方法を、できる場合は本人と相談もしながら、それが無理な場合は、介護者が決めてきたはずです。

 本人の意思の確認が必須というのは、原則だとは思いますが、それでも、意思確認が困難な場合には、介護者である家族などの判断に任せることを、明示してもいいのではないでしょうか。

(実際の現場の方々は、このような細かいことは気にせず、きちんとやるべきことを淡々をされているだけかもしれず、こうした指摘自体も、大きなお世話かもしれませんが)。

個人的な経験

 とても個人的な経験に過ぎませんが、私が家族の介護をしている時に、要介護者(母親)が認知症に加えて、ガンになってしまいました。

 その時に、手術を担当してくださる医師の方が、患者には本当のことを伝えて一緒に取り組んでほしい、という方針で、母にも伝えると、当初はおっしゃっていました。

 それは、とても理解できることでもあったのですが、そこに至るまでの5年以上、母親は精神的には、ほぼ常に、不安定で、時折、全くコミュニケーションが取れなくなるような状態になってから、また「戻ってくる」ような日々でした。

 ここで、ガンであることを告げたら、そのショックで、普段なら受け止められたとしても、今の母親では、もう2度と普通のコミュニケーションが取れなくなり、そのままになってしまうのではないか、と怖くなりました。

 それは、厳密に考えれば、介護者のエゴと責められるのかもしれません。それでも、その時に医師の方に手紙を書いたりして、本人に告げることなく、手術を行うことができ、その後に再発もしましたが、最期まで、母は精神的には比較的落ち着いた毎日を過ごすことができました。

 その対応自体が正解かどうかは分かりませんが、家族介護者は、認知症の方の介護をするときに、外から見たら、気にし過ぎに見えるくらい、とても細かいことまで気を配っているのではないか、と思います。でも、そうでないと、介護の毎日を過ごすのは無理ではないか、とも考えられます。

負担感の軽減

 私が言える立場でないのかもしれませんし、細かいことですが、当事者の方々が考えている以上に、公的機関の文章は、介護に関しても影響が大きいのも事実です。

 だからこそ、こうした文面に、ほんの少しだけでも配慮を加えていただければ、現在コロナ禍で、以前よりも、増えているはずの介護者の方々の負担感も、少しでも減る可能性があるのですから、考えていただきたいと思いました。

厚生労働省のホームページ

 ところが、というのは、大げさですが、厚生労働省のサイトは、微妙に文章が違っていました。この方が、より丁寧な感じはしますが、それならば「本人の接種の意向を丁寧に汲み取ってもなお難しい場合は、日頃から身近で寄り添っている方のご判断でも可能です」といった一文を入れてもいいのではないか、ということは思いました。

(大田区の文章のまとめ方は、推測は失礼ですが、介護に対しての考えが出ているというよりは、それだけ忙しく、細かいところまで、気を配る余裕もないのかもしれません)。

認知症などで本人に接種意思を確認することができない場合、家族にて同意書を書いてもらっても良いですか。
接種には、ご本人の接種意思の確認が必要です。 確認が難しい場合は身近な方にご協力いただき、本人の接種の意向を丁寧に酌み取ることなどによる意思確認を行ってください。
 接種には、ご本人の接種意思の確認が必要です。それぞれの状況に応じて、家族やかかりつけ医、高齢者施設の従事者など、日頃から身近で寄り添っている方々の協力を得て、本人の接種の意向を丁寧に酌み取ることなどにより本人の意思確認を行っていただくようお願いいたします。
 なお、ご本人が接種を希望されているものの、何らかの理由でご本人による自署が困難な場合は、ご家族の方等に代筆していただくことが可能です。


 今回は、以上です。

 読んでくださり、ありがとうございました。未熟な部分もあるかと思いますので、よろしければ、疑問やご意見などをお伝えくだされば、ありがたいです。よろしくお願いいたします。




(他にも、介護のことをいろいろと書いています↓。よろしければ、読んでくださると、ありがたく思います)。





#介護相談       #臨床心理士   
#公認心理師    #家族介護者への心理的支援    #介護
#心理学    #私の仕事   #臨床心理学 #自己紹介
#家族介護者   #介護者支援   #家族介護者支援   

#介護の専門家   #在宅介護   #入院   #介護家族

#コロナ禍   #介護行為   #ワクチン接種   #意思確認

#高齢者   #認知症   

 

 

 

この記事が参加している募集

 この記事を読んでくださり、ありがとうございました。もし、お役に立ったり、面白いと感じたりしたとき、よろしかったら、無理のない範囲でサポートをしていただければ、と思っています。この『家族介護者支援note』を書き続けるための力になります。  よろしくお願いいたします。