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「介護の大変さを、少しでも、やわらげる方法」⑥誰かに話す

  臨床心理士/公認心理師越智誠(おちまこと)と申します。家族介護者の心理的支援を仕事にしています。こう書くと偉そうになり、申し訳ないのですが、介護をされている方のこころのサポートをしたいと考えています。このnoteの記事も、そのために始めて、続けています。

 介護をされている方は、毎日、ずっと気が抜けない時間が続いていると思います。
 いつからか、はっきりとは分からないかもしれませんが、介護が始まってから、いつ終わりが来るか分からない毎日が、ずっと継続している感覚だけは、変わらないのでは、とも思っています。

家族介護者の介護負担感

おそらく、どんな時でも、介護を受けている方(要介護者)が、できたら、いつまでも生きて欲しい、という気持ちと、同時に、早く介護が終わってくれないだろうか、という思いは、矛盾せず、どちらも起こってくることだとも思います。その時の気分や、環境によって、気持ちが変わってくるのだと思います。

 さらに、介護を受けている方(要介護者)を、大事にする気持ちに嘘はなくても、厳しい介護環境がゆえに、つい怒ってしまったりすることもあって、ご自身に対しての嫌悪感すらわいてきて、そのことで、また疲労感が増大する可能性すらあるのでは、と考えています。

 今は、それに加えて、コロナ禍のことで、いろいろな心配が増えて、さらに、負担が増えている可能性も高いのでは、と思います。
 その介護生活での気持ちの状態は、説明しがたい大変さもあると推察することしかできないのですが、それでも、ほんの少しでも、負担感や、ストレスを減らせるかもしれない方法は、お伝えする努力はしていきたいと思っています。

 時間的にも余裕がなく、どこかへ出かけることも出来ない場合がほとんどだと思いますが、この「介護の大変さを、少しでもやわらげる方法」シリーズでは、何回かに分けて、お金も時間も手間もなるべくかけずに、少しでも気持ちを楽にする方法を考えていきたいと思います。少しでも気が向いたら、試してみてもらえたら、幸いです。

「誰かに話す」

「介護の大変さを、少しでも、やわらげる方法」シリーズ第6回目のテーマは、「誰かに話す」です。

 これも、考えたら、負担感を減らすためには、王道ともいえる方法でもあって、どこかで、それができれば苦労しない、というようなことを思われるかもしれません。

 私自身も、「介護相談」の際に、もっとも気をつけている部分ではあるとは思うのですが、やっとの思いで、話をしても、それが十分に聞いてもらえなかったり、善意ではあるのですが、実際はできないことの提案などをされて、返って疲れてしまったりといったことがあると、もう2度と「相談」をしない、という気持ちになりがちです。

 もし、そんな経験がある方がいらっしゃったら、それは、その時の相性が悪かった可能性もあるので、もう一度、「誰かに話す」を試みてほしい、と思っています。

身近な人に話す

 ただ、改めて考えると、「誰に話せばいいのか?」ということに迷われるかもしれません。

 まずは、身近な人を探してもらえますか。その場合に、その方が介護などに詳しければ、そのほうがいいと思いますが、まずは、今読んでいらっしゃるあなたにとって、信頼できる人であれば、大丈夫だと思います。

 それから、普段から、どんな人かをご存知だと思いますが、生意気な言い方になりますが、知らないことへ謙虚さのあるような方であれば、詳しくなくても、ただ聞いてくれるのではないか、と思います。

 ただ、黙って、できたらそばにいて、聞いてくれる。それは、何もしないのではなくて、何か言われたら、人は反射的に何かを言いたくなるのは、ご存知だと思います。そして、その内容がハードであれば、気持ちの中に投げ込まれた言葉は、おそらくは比喩的にいえば、心の中の大きな波紋を広げてしまうので、そこを中和させようと、自分の話題を出したり、何かを言いたくなったり、もしくは、その話をしている人の現状を変えようとするようなアドバイスを言ってしまいがちなのですが、そうではなく、ただ、聞いてくれる人がいたら、それはとても幸運なことなので、話をしてもらえませんか。

 それでも、今述べたことは理想に近いことですので、こんな大げさでなくても、単に「この人なら大丈夫」という、ご自分の感覚を優先させることが、重要だと思います。

「話すこと」への抵抗感

 すごくがんばっていられる方ほど、自分の話ばかりをするのはあまりいいことではないのではないか、または、ネガティブなことをいうのは、よくないのではないか、といったことを思われるのかもしれません。ただ、そうした方ほど、人に話した時に、そして、聞いてもらえた、と感じた時に、負担感が減る可能性があります。

 普段から頑張っていらっしゃる方が、介護をされている時に、同じように頑張るのは自然ですし、いつもは弱音や愚痴などを言わない方は、介護をされて辛かったとしても、弱音と思われるようなことを人に話すことへの抵抗感があるのも自然なことだと思います。

 だから、そこを無理することで、負担感やストレスが増えてしまっては、本末転倒ですので、ご自分の気持ちと相談されながら、でも、これからの介護生活を少しでも負担を減らすような方向へ持っていくには、おそらくは「人に話す」は、必要なことになると思います。少しずつ、話すようにしてもらえませんか。
 
 人に話をすること。それも、普段ならあまり人に言いたくないこと。それを話している自分をイメージすると自己嫌悪になりそうかもしれません。だけど、介護の辛さが重くなってきたら、というよりも、あまりに辛くなりすぎると、人に会ったり話したりすることも出来なくなる可能性がありますので、そうなる前に、人に話すトレーニングと思って、話すことにチャレンジしてみてください。

 これまでそういう経験があまりなくて、避けてきた方ほど、「人に話す」のは、新鮮な感覚になると思います。そこで、すぐに解決策が出てきたり、問題がなくなるわけでもないのですが、その「辛さ」は、人に話すことで、ほんの少し自分から離れます。そのことで、少しですが、負担感は減っていく可能性が出てきます。

 話ができる相手がいらっしゃっても、実際に話す時になった時の不安を減らされたいのあれば、「ネガティブなことを話すと思う。だけど、できたら、何も言わずにただ聞いて欲しい」ということを最初に伝えてもいいのかもしれません。それを聞いて、そのことを尊重しようとしてくれる相手がそばにいるだけで、おそらくは負担感が減るのだと思います。

 もし、いろいろと考えたり、試したりしてみても、ダメだった場合は、誰が悪かったというのではなく、相性が悪かったり、ちょっとついていないということだと思います。

専門家に話す

 介護を継続されている方でしたら、すでにいろいろな介護の専門家との関わりができていると思います。たとえば、ケアマネージャーの方。デイサービスやショートステイを利用されているのでしたら、介護福祉士や相談員の方々、もしくは介護の現場の専門家など、介護の日常の中で、言葉を交わす方がいると思います。

 日頃から関わりがある方に、そうした方々はお忙しいとは思うのですが、少しでもタイミングを見て、介護の大変さを少し話してみてください。

 もちろん、この人なら大丈夫そうだ、といった感じを持っている方に限ります。そして、今、介護を続けられていて、その中での心身の疲労の蓄積が溜まっている、といった話をして、聞いてもらっている感触を得られる人に、時々話すようにするのは、どうでしょうか。あまり長い時間は無理かもしれませんが、少しでも話をして、他の誰かが理解しようとしているのは、負担感が軽くなることに、つながる可能性があります。

 ただ、無理をせず、話して通じなさそうだったら、切り上げたほうがいいと思います。話を始めて、比較的短い時間で、話したほうがいいのか、やめたほうがいいのか、というのは感覚で分かると思います。また、話すことによって、場合によっては「アドバイス」がかえってきて、微妙なもやもやした気持ちになることもあります。その時は、すみませんが、誰が悪いというのではなく、相性の問題が大きいと思いますので、その方に話すのはあきらめたほうがいいと思います。

 ただ、もし、大丈夫そうだと思われる別の方が現れたら、その時は、静かにチャレンジを繰り返すのも、意味はあると思います。

専門機関に話す

 これまでのことが、どうもうまくいかなかった場合は、専門機関に話すのもいいかもしれません。

 今は、少しずつですが、介護者のための相談窓口も存在します。身近に話す機会がない場合は、お手数ですが、こうした場所に探していただき、話すのは、どうでしょうか。まったく知らない人のほうが話せる場合もあります。

 探す際は、できたら、公共性が高い機関がおこなっていること。また、相談者の専門性が高いほうが安心できると思います。
 
たとえば、東京都内ですが、こうした相談窓口があります。

 以上は、どちらも臨床心理士が相談を担当していますので、介護者の方の気持ちの部分を丁寧に聞いてくれるはずです。(※どちらも私自身が関わっているわけではありません)

長崎県佐世保市でも、臨床心理士による相談があります。

北海道函館市には、家族介護支援相談員による窓口があります。

 こうした「介護者のこころの負担を減らします」と、うたわれた場所は、相談の経験の蓄積がありますので、こうしてごく一部の地域の紹介しかできず、申し訳ないのですが、もし、お住まいの地域に窓口があり、試せる方は、試してみてはいかがでしょうか。

 もし、他の地域にお住まいの方で、こうした「介護者のための相談窓口」があるかどうか確かめたい場合は、お住まいの地域の行政機関(市役所や区役所や県庁など)の、高齢者支援課といった窓口にお聞きしていただければ、と思います。

 また、スマートフォンなどをお持ちの場合でしたら、「介護者 こころの相談」に、お住まいの地域名を入れて検索すると、分かるかもしれません。ただ、できましたら、公共機関が行っているところ。無料であるところかどうかは、確認していただいた方が安心かと思います。

 どのような窓口であっても、問合せに丁寧に答えてくれない場合は、警戒したほうがいいかと思います。

電話相談

 対面ではなく、電話相談の窓口も、今は少しずつ増えていると思います。

 たとえば、全国的な組織で「認知症の人と家族の会」では、介護経験者の方が電話での相談をされています。

 地域によっては、電話相談の窓口もあります。

 こちらも「介護 電話相談」に、お住まいの地域名を検索すれば、見つかる場合もありますが、やはり、公共機関がおこなっているかどうかは、大事かと思います。


 さらには、介護だけの相談ではありませんが、「心の相談」としての電話相談の窓口もあります。

 臨床心理士の、相談窓口もあります。

 また、心の相談としては、「よりそいホットライン」もあります。

 これも、「こころ 電話相談」に、お住まいの地域名での検索は可能かもしれません。これも、その相談先の信頼性には、気をつけていただければ、と思います。行政機関や、公共性が高い機関でしたら、安心かと思います。


 今回は、以上です。


(他にもいろいろと介護について、書いています↓。クリックして読んでいただければ、うれしいです)。

「介護の大変さを、少しでも、やわらげる方法」

「家族介護者の気持ち」

「介護books」

「介護離職をして、介護をしながら、臨床心理士になった理由」

「介護時間」の光景⑱ 「赤」 7.24.

介護の言葉④「これからが、大変だから」


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