『「介護時間」の光景』(65)「親しみ」。7.8.
いつも読んでくださっている方は、ありがとうございます。おかげで、こうして書き続けることができています。
この『「介護時間」の光景』を、いつも読んでくださってる方は、「2004年7月8日」から読んでいただければ、これまで読んで下さったこととの、繰り返しを避けられるかと思います。(終盤に、今日、「2021年7月8日」のことを書いています)。
初めて読んでくださっている方は、見つけていただき、ありがとうございます。
私は、臨床心理士/公認心理師の越智誠(おちまこと)と申します。
自己紹介
元々、私は家族介護者でした。
介護を始めてから、介護離職をせざるを得なくなり、介護に専念する年月の中で、家族介護者にこそ、特に心理的なサポートが必要だと思うようになりました。
そうしたことに関して、効果的な支援をしている専門家が、自分の無知のせいもあり、いるかどうか分からなかったので、自分で少しでも支援をしようと思うようになりました。
分不相応かもしれませんが、介護をしながら、学校へも通い、2014年には、臨床心理士の資格を取りました。2019年には公認心理師資格も取得しました。現在は、家族介護者のための、介護相談も続けることが出来ています。
「介護時間」の光景
この『「介護時間」の光景』シリーズは、介護をしていた時間に、どんなことを考えたのか?どんなものを見ていたのか?どんな気持ちでいたのか?を、お伝えしていこうと思っています。
特に、仕事もやめ、母の入院する病院に通い、家に帰ってきてからは、妻と一緒に義母の介護を続けている時には、将来のことは、少し先のことさえ考えられなくなり、ただ、毎日の目の前のことだけを見るようになっていました。
自分が、母の病院に通っても、医学的にプラスかどうかは分かりませんでしたが、でも、通わなくなって、2度とコミュニケーションが取れなくなったままになったら、と思うと、怖さもあって、通い続けていました。
1999年から介護を始め、2000年の転院当初は、それ以前の医療関係者にかなりの負担をかけられていたこともあり、最初は、うつむき加減で通い続けていました。
病院へ信頼感が出てくるのに2年はかかったのですが、母の症状も比較的安定してきましたから、2004年当時は、介護生活の中で、初めて自分のことを少し考えられる余裕も出てきた頃でした。
毎日のように記録はとっていました。
それは、とても個人的なことに過ぎませんが、それでも家族介護者の気持ちの理解の一助になるのではないか、とも思っています。
今回も、昔の話で申し訳ないのですが、前半は「2004年7月8日」のことです。終盤に、今日、「2021年7月8日」のことを書いています。
ただ介護をしている頃は、周囲の違和感や小さな変化にかなり敏感だったような気がします。
2004年7月8日
「午後4時30分頃に着く。
いつも、この病院で会う家族の方に、お礼を渡せた。
この前、ゼリーなどをもらったからだけど、さらにゆかりをお裾分けしてもらった。
病室へ行くと、いつも置いてある小さなお菓子が思ったよりも減っている。一応、一日1個のつもりなのだけど、2つのペースで食べているようだ。
昨日は、七夕で、屋上にみんなで行ったらしい。でも、母の様子は少しおかしい感じもするので、ちょっと気をつけようと思った。
お菓子も、やっぱり多めに買えばよかった。
最近は、母の症状が悪化することが頭に入ってなかった。油断した。
靴下は、一足持ってきた。これは大丈夫だったけれど、この前、持ってきた靴はダメだったみたいで、元に戻すことにする。それから、しょうゆさしも持ってきた。
少しでも、ここでの生活が整えられれば、と思う。
夕食は35分かかった。
おかずは残した。お菓子を2つ食べてしまっていたせいだと思う。
自分の足がとても疲れている。というか、しびれている、ということなのか。
よく分からないのだけど、足の裏を見て、少しもんだりもする。
どちらにしても、気になる。どこか、すごく悪いのだろうか。
黙って、少し上の空で時間がすぎる。
持っていった小さいしょうゆさしは、喜んでくれた。よかった。
喜び方を見て、少しそう状態なのか、みたいなことを思って、不安が再燃しつつ、だけど、午後7時には病院を出る。
足がだるい」
親しみ
駅を降りる時、改札の向こうに自転車を降りて支えて立っている中年の女性がいた。
何人もが固まりになって改札へ向かって歩いていく中で、誰か知り合いを、おそらく待っている人を見つけたらしく、その女性の目つきが明らかに親しげなものに変わった。
その相手は、どうやら私のまっすぐ後ろを歩いているらしく、だから、その女性の視線は、こちらに向かってきていて、親しみのかけらみたいなものが、私にまで少しそれて落ちてきたようだった。
何の関係もなく、まったく知らない人なのに、そのちょっとした時間の中で、こちらまで、その女性に勝手な親しみが少しだけわいていた。
変な感じ。
(2004年7月8日)
母親の症状が随分と落ち着いていたと思っていたら、この3ヶ月後に、母親のガンが見つかり、手術もしたが、その後、再発し、2007年に病院で亡くなった。義母の介護は継続したが、2018年に義母も亡くなり、19年間の介護生活が終わった。
昼夜逆転の生活リズムがなかなか修正できず、1年かけて、少し戻ってきた頃に、コロナ禍になった。
2021年7月8日
雨が降っている。
曇りと思って、洗濯物を出しても、また降ってきて、室内干しにする繰り返しになっていて、ちょっとうんざりしている。
昨日から干している洗濯物は乾いていない。
毎日のように汗をかいて、本当にたくさんTシャツを着替えているから、洗濯物だけが、高く積み上がっていく。
久しぶりにワイドショーを見たら、大谷翔平が、かなり日常的な表情で、とんでもないレベルの活躍をしていて、それを妻と見て、感心をする。
コインランドリー
さらに、妻と相談して、今日は洗濯機を回して、その洗濯物と、今干しているものと一緒に、近所のコインランドリーへ行って、そこには「10キロ乾燥機」があるので、それで一気に乾かす。
そんな予定を立てて、昼前に、洗濯が終わった。その中身と、干してあるものを、新品のゴミ袋を二つ使って、まとめて、右手で持っていく。
ちょっと重い。
まだコインランドリーは空いていて、上の位置の方が、取り込むときに、下へ落とすことが少なくなるので、そこに洗濯物を入れていく。
左腕を上げたら、まだ痛い。
昨日、コロナワクチン接種、1回目だった。
注射
6月下旬に、ワクチン接種のオレンジの封筒が届いた。
医療従事者、高齢者以外には、いつになるか分からないと思っていたので、想像以上にスピードアップしているようだった。それは、今住んでいる東京都大田区が、とても頑張ってくれたのだと感じている。
送ってきてくれた封筒の中には、様々な書類が入っていて、大田区の予約は、7月7日から予約開始、といった文章を見つけて、まだしばらく後で、その文章によると、接種は7月9日から、ということになっていた。
ただ、大田区の個別接種会場の一覧もあって、その表示の一部に、電話で問い合わせも可、という○印がついていて、じゃあ、一度は問い合わせしてみようと思って、クリニックに電話すると、すごくスムーズに対応してくれる。
7月7日。午後4時半の分にキャンセルが出ています、それが無理だったら、次は7月20日以降になるので、と言われ、7日の分を、お願いする。
聞かれたのは、住所と、名前と電話番号と生年月日だった。拍子抜けするほど、スムーズで、あっさりと決まった。
そして、昨日、7月7日にワクチン接種を受けた。1日たって、まだ左腕に激痛ではないけれど、痛みはある。
他の例えばインフルエンザワクチンの時にはなかった経験だから、「コロナワクチンの悪い噂」が起こっているのも、責任がある人が丁寧に説明を繰り返していないから、それは仕方がないのかな、とも思う。
乾燥機
コインランドリーに洗濯物を入れて、一般的なものだから、30分で300円。その時間をタイマーにセットして、いったん家に帰って、少し作業をして、時間になったから、また外へ出る。
見事な梅雨空だと思う。
たった30分で、コインランドリーは人が多く、乾燥機は、埋まっている。私が入れた洗濯物は、クールダウン中で回り続けている。その隣の乾燥機から、とても素早い動作で洗濯物をあっという間に回収し、いわゆるママチャリで走り去っていく女性がいる。
乾燥が終了したので、いったん洗濯物を置くための、金属製の大きめのカゴを使おうと思っていたら、まだ引き取り手のいない洗濯物が置いてあるので、持っていったゴミ袋を、さっきは濡れたものを入れていたので、それを裏返して、なるべく素早く入れていく。
途中で、一台、カゴが空いたので使わせてもらう。
作業が終盤になってから、小さい子供を連れた女性が来て、乾燥を終えた洗濯物を回収し始めたのが見えたから、こちらもなるべく急いで袋に入れて、そして、「すみません、お待たせしました」と、そのカゴを手渡すようにして、コインランドリーから出る。
緊急事態宣言
外は、小雨が降っている。
まだ左腕は痛いので、右腕だけで持っていく。
洗濯物の中には、ジーンズもあったのに、ホカホカに乾いていた。家に持ち帰って、妻に、たたんでもらい、その中で、靴下が一足だけ少し濡れていた、と言われた。履き口のところが丸まったままだったので、そこが乾いていなくて、自分がうかつだったと思う。
気がついたら、また緊急事態宣言が出るらしい。
ただ、不安だけがある。
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