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介護の大変さを、少しでもやわらげる方法」㉜「いつもと違うことをする」

 いつも読んでくださっている方は、ありがとうございます。
 おかげで、書き続けることができています。

 初めて読んでいただいている方は、見つけていただき、ありがとうございます。

 私は、臨床心理士/公認心理師越智誠(おちまこと)と申します。家族介護者の心理的支援を仕事にしています。


家族介護者の負担


 まるで、コロナが明けたかのように
言う人も増えてきたようになりましたが、ご高齢者に関わることが多い家族介護者の方にとっては、実際はコロナ禍が終息したわけではありませんし、それほど不安の大きさが変わっていないかもしれません。

 それに、もともと、介護が始まってから、いつ終わりが来るか分からない毎日が、ずっと続いているかと思います。

 その気持ちの状態は単純ではなく、説明しがたい大変さではないかと推察することしかできないのですが、それでも、ほんの少しでも負担感や、ストレスを減らせるかもしれない方法は、お伝えする努力はしていきたいと考えています。

 時間的にも余裕がなく、どこかへ出かけることも出来ない場合がほとんどだと思いますが、この「介護の大変さを、少しでもやわらげる方法」シリーズでは、お金も時間も手間もなるべくかけずに、少しでも気持ちを楽にする方法を考えていきたいと思います。

 今回は、とても個人的な体験に過ぎませんが、もしかしたら、他の方にも有効かもしれないと思い、紹介させてもらおうと思いました。

ラーメン

 最近、またラーメンを扱うテレビ番組が増えてきたような気がします。

 この前も、塩ラーメンを中心に紹介していて、どうやら近年、また新しく美味しいラーメン屋が多く開店してきた、という話をしていました。

 その中で、かなり長い年月ぶりに、いわゆる「有名店」がたくさんできるサイクルになっているのではないか。そんなコメントを、その番組に出ているマニアと言われる男性が語っていて、そのとき、画面に出ていた昔の有名店には私も妻と一緒に行ったことがありました。

 そうするとやはり、当時時々、ラーメン屋に行ったことを改めて思い出しました。

 それは、母親が入院する病院に頻繁に行って「通い介護」をしていた頃のことでした。もう15年以上前のことになるのに、その時の気持ちまで思い出したのは、自分でも意外でした。

通い介護

 このnoteを読んでくださっている方には、繰り返しになって申し訳ないのですが、私は1999年から仕事もやめて介護に専念しました。在宅で、妻の母親を妻と一緒に介護をし、私の母親は病院に入院してもらっていました。

 ほぼ毎日のように母の病院へ通い、それはのちに「通い介護」と名づける行為でしたが、帰ってきてからは、義母の介護をする毎日でした。その生活に慣れると、これがいつまで続くかわからなくて、そのことで全く先が見えなくなり、ほんの少しの将来のことも考えるのが辛くなってきて、そのうちに考えられなくなりました。

 とにかく目の前のことだけを考える、というか、考えられなくなっていたのですが、そのときの気持ちが日常的でないと、気がついたのは、介護を続けながら、介護者の心理的支援の重要性に気がつき、自分でもその支援ができないかと思い、臨床心理士になるために大学院に通い始めてからでした。

 修士論文を執筆するために、「家族介護者の心理」をテーマとし、そのために改めて介護者の方々にじっくりインタビューをし、こんなに大変なことをされているのに驚くとともに、失礼ながら、その言葉をデータとして分析し、考えていく中で、介護者の心理が日常的でないことに気がつきました。

 それは、24時間、365日、緊張感が続く介護の生活に適応するために、非日常的とも思える心理になることがわかってきました。

 そして、施設や病院に預けても、そこに通う介護者がいて、自分もそうでしたが、それを「通い介護」と名づけた方が、正確ではないかとも考えるようになりました。そうした人たちは思ったよりも多いのではないか、とも思うようにもなっていました。

帰り道

 そんなふうに、自分の行為に対して、よりふさわしい名前がつくことで、少しだけでも負担感が減ることもあるのですが、そうして学校に通って、学ぶようになる前は、もっと将来は暗く見えていました。

 毎日のように片道、約2時間をかけて病院に通っていましたが、家にいると、母はどうしているのだろうか、また症状が悪くなるのではないか、といった不安がふくらんできて、そして、また翌日に出かける、という繰り返しで、それでも家にいるときは、義母の介護をしていました。

 ずっと同じことが続き、それが、いつまで継続するのかはわかりませんでした。

 そのことに気持ちが消耗し、だから、何かを思ったり、考えたりすること自体が、だんだんできなくなっていました。

 ただ、そんな同じ毎日が続く中で、ごくたまに義母の介護を妻のお姉さんに任せて、妻も一緒に、母のいる病院に行くことがありました。

 ずっと一人で電車に乗って、その時間で読書習慣がついたのはいいことだとは思っていたのですが、なにしろ、何かをしていないと不安で、ただ必死だったのだと思います。

 その病院までの時間が、妻が一緒に行ってくれるだけで、いつもとは違うので、ちょっと外の世界とつながるような、微妙に明るい気持ちになれていたようでした。

 そして、病院に行っても、母も、私と妻と二人がいて、いつもとは少し違った気持ちになってくれたらいいな、と思っていましたし、確かに母の反応も変わっていたようにも思いました。

 それだけでありがたかったのですが、病院からの帰り道は、もう午後7時を過ぎていたのですが、いつもと違うルートで家に戻ることもありました。

 それは、夜まで義母をみてくれる人がいたり、ショートステイなどで預かってもらっている時に限られたことですが、ずっと毎日同じことの繰り返しの生活の中では、確かに、いつもと違うことをするだけで、気持ちが少しだけ開くような感じになりました。

ラーメン屋

 そのころは、2000年台の初頭で、やたらとラーメンが出てくるテレビ番組も今よりも多く、のちに有名店などと言われるラーメン屋も多く開店するような時期のようでした。同時に、そのラーメン屋が、自宅から病院の間にも何店舗かあったのに気がつきました。

 ラーメン屋が特集されている書籍を購入し、そのラーメン屋の場所を確かめて、病院に寄った帰り道のルートを、少し遠回りだけど、違う路線を利用することで、寄れる店が何店舗かあることがわかりました。
 妻と一緒に病院に行けて、義母の介護も夜も安心なときに限られるのですが、そのときには行こうと思っていました。

 そんな、いつもとは違うことを計画するだけで、ちょっと気持ちは違っていました。そして、実際に、そうしたラーメン屋に行き、行列に並んだ後に食べて、妻がおいしい、と嬉しそうなのも、やっぱりありがたい気持ちにもなりました。それで、気持ちは少しだけ軽くなったように思います。

 それは、美味しいものを食べる、と言うことだけはなくて、特に毎日、同じことだけを繰り返すことになる介護の生活をしていると、いつもと違うことをすること自体が、おっくうで、負担になるかもしれませんが、それでも、たまには違うことをするのが、自分にとっては、介護の大変さを、少しでもやわらげることにつながったのだと思います。

いつもと違うことをする

 この「通い介護」のとき、その通っている途中で、いつもとは違うことをする、と言うのは、私にとってはよかったのですが、もちろん、どんな方にも有効な方法ではないと思います。

 それでも、もし「通い介護」をされている方でしたら、自分が興味がありそうなところに、帰り道にちょっと寄ってみたりするだけでも、気持ちが少しでも違ってくるかもしれません。

 さらに、在宅で介護をされているときは、もし、デイサービスなどやショートステイをご利用されているときは、少しでも休息をしたいとは思いますが、わずかでも余裕がある場合は、いつもと違うことをされるのはいかがでしょうか。

 数分でもいいので、外へ出かけて、天気が良ければ空を見上げ、ちょっとぼんやりしたりするのは、いかがでしょうか。もしくは、読書の習慣があれば、全く読んだことのない小説を読んでみたり、テレビ視聴をする方であれば、見たことがないテレビ番組を見てみたり、といったことを試すのは、どうでしょうか。

 もしくは、これまでに「介護の大変さを、少しでもやわらげる方法」として、約30種類の方法を、こちら↑でも紹介しています。もし、よろしかったら、この中から興味がある方法を一つでも試してみるのは、いかがでしょうか。

 どれも合わないようでしたら、毎日同じ繰り返しで、追い詰められたと思うとき、「いつもとは違うこと」をするように心がけるだけで、気持ちが少し違うかもしれません。

 今回は以上です。

 疑問点、ご意見などございましたら、お聞かせ願えればありがたく思います。

 よろしくお願いいたします。



(他にも介護のことについて、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。




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越智誠  臨床心理士/公認心理師  『家族介護者支援note』
 この記事を読んでくださり、ありがとうございました。もし、お役に立ったり、面白いと感じたりしたとき、よろしかったら、無理のない範囲でサポートをしていただければ、と思っています。この『家族介護者支援note』を書き続けるための力になります。  よろしくお願いいたします。

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