「介護の大変さを、少しでもやわらげる方法」㉝「無理に笑顔をつくらないようにする」
いつも読んでくださっている方は、ありがとうございます。
おかげで、書き続けることができています。
初めて読んでいただいている方は、見つけていただき、ありがとうございます。
私は、臨床心理士/公認心理師の越智誠(おちまこと)と申します。家族介護者の心理的支援を仕事にしています。
家族介護者の負担
まるで、コロナが明けたかのように言う人も増えてきたようになりましたが、ご高齢者に関わることが多い家族介護者の方にとっては、実際はコロナ禍が完全に終息したわけではありませんし、それほど不安の大きさが変わっていないかもしれません。
それに、もともと、介護が始まってから、いつ終わりが来るか分からない毎日が、ずっと続いているかと思います。
その気持ちの状態は単純ではなく、説明しがたい大変さではないかと推察することしかできないのですが、それでも、ほんの少しでも負担感や、ストレスを減らせるかもしれない方法は、お伝えする努力はしていきたいと考えています。
介護の大変さを、少しでもやわらげる方法
時間的にも余裕がなく、どこかへ出かけることも出来ない場合がほとんどだと思いますが、この「介護の大変さを、少しでもやわらげる方法」シリーズでは、お金も時間も手間もなるべくかけずに、少しでも気持ちを楽にする方法を考えていきたいと思います。
今回は、常識として言われていることが、人によって、もしくは状況が変われば、気持ちを上向きにすることにあまり役に立たないかもしれない。などと思うことがありましたので、紹介させていただきたいと思っています。
泣くから、悲しくなる
どれだけ冷静な人でも、感情と全く無縁な人はいないと思いますし、感情が動きにくくなったとしても、全く感情と関係なく1日を過ごすことさえ難しいと思います。
ただ、その感情も、専門的な観点から見ると、まだ分からないことが多いようです。
引用した文章中の「末梢起源説」は、ジェームス=ランゲ説としても有名ですが、このように身体反応があってこそ、感情が起こるということを示しているようですし、それが発展して「顔面フィードバック仮説」というものまで存在します。
つまり、感情に関わらず笑顔に近い表情をつくれば、それによって気持ちが楽しくなる、ということのようです。「おもしろいから笑うのではない。笑うからおもしろいのだ」という表現もできるかもしれません。
ですので、いつの間にか、悲しい時は無理でも笑顔をつくった方がいい。そのことで、気持ちまでポジティブになれる。といったことを「常識」のように語る人も増えてきた、という印象があります。
もしかしたら、介護をされていて大変な時期に、そうした善意のアドバイスを受けた経験のある方もいらっしゃるのではないでしょうか。それを試してみて、少しでも気が楽になったのであれば、それはご本人に合っている、ということでもあるので、今後も試してみてもいいのだと思います。
ただ、どうやら誰にでも、その方法が合うわけでもないようです。
無理に笑顔をつくらない
この仮説に関しては、その後もさまざまな実験や検討や分析もされているようです。
こうした指摘を読んで、少しホッとする気持ちになってしまいました。
それは、気持ちが落ち込んだりしたときには、何かをする気力そのものもなくなってしまうのに、「笑顔をつくる」ということをアドバイスされるのは、それが善意であったとしても、そういうときにも早く気分の回復を強制されているような気もするからだと思いました。
それでも、このテーマは心理学の分野では今も実験が続けられているようです。
(「裏から読んでも心理学」 笑えばいいって本当でしょうか。)
https://psych.or.jp/wp-content/uploads/2019/04/85-32.pdf
こうした実験は今後も続けられ、「笑顔をつくると、楽しい気持ちになるかどうか」の議論は続くのではないかと予測されます。
仮説であること
しかし、これはただの臨床心理士が言う資格はないのだと思うのですが、もともと、実験の協力者は、本当に辛かったり悲しかったり、といった状態であることは少ないのではないでしょうか。(本当に辛いときに、実験に参加する気力は起きにくいでしょうから)。
ですので、個人的には、介護者に関係して知りたいのは、介護を継続しているのであれば「抑うつ状態」が常態であると思えるのですから、そうした強い辛さの中にいる人にも有効なのだろうか、といったことです。
また、こうした実験をさまざまな専門家が繰り返して明らかになったことは少なくなかったとはいえ、あくまで仮説ですので、人によって有効だったりそうでなかったりすることがある、というような段階ではないかと推測できます。
ですので、「悲しい時こそ、辛い時こそ、笑顔をつくった方がいい」といった今はある種の「常識」になっていることが、誰にでも当てはまることではないようです。
だから、今回は「悲しい時こそ、無理にでも笑った方がいい」といったアドバイスをされたとしても、そのときに、とてもそんな気持ちになれないのであれば「無理に笑顔をつくることはない」ですし、「無理に笑顔をつくったからといって、楽しい気分になるとは限らない」という根拠もあるので、そのことを知った方が、もしかしたら、少しでも気持ちが楽になるかもしれないと考えて、色々な仮説を紹介させてもらいました。
ストレートに、「この方法を試してみては」というよりは、「この方法は無理に試みなくてもいいのでは」といったやや屈折した提案ですが、考えてもらえたら幸いです。
今回は以上です。
(他にも介護のことについて、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。
#介護相談 #臨床心理士
#公認心理師 #家族介護者への心理的支援 #介護
#心理学 #ジェームズ =ランゲ仮説
#家族介護者 #臨床心理学 #今できることを考える
#介護の大変さを少しでも 、やわらげる方法
#家族介護 #介護家族 #介護職 #介護者相談 #家族介護者への心理的支援
#介護相談 #心理職 #支援職 #家族のための介護相談
#私の仕事 #介護への理解 #家族介護者支援note
#専門家 #介護者相談 #最近の学び
#自己紹介