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図書館司書の短編小説紹介

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図書館司書として多く本を扱って来た中で、一人でも多くの方と楽しみや感動を共有したいと感じた短編小説を紹介しています。
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#短編

「鵠沼西海岸」阿部昭著

「鵠沼西海岸」阿部昭著

 書き手である男性が、三十年来住んだ鵠沼について記した一作。
 戦争は終わったものの、男性の家には「ひとつの不幸が居すわりつづけ」ていた。
 戦争神経症だろうか、正気を失った兄がいたのだ。
 夕暮れになると、この兄のうったえるような泣き声が、まだ少年だった男性の遊び場である路地にまで漏れてくるのだという。
 そのため、彼の家には誰も寄りつかなかったのだけれど、一人だけ例外があった。
 近所に住む少

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「地獄変」芥川龍之介著(新潮文庫『地獄変・偸盗』所収):図書館司書の短編小説紹介

「地獄変」芥川龍之介著(新潮文庫『地獄変・偸盗』所収):図書館司書の短編小説紹介

 地獄とはさもこのようであろうかと、そこに堕とされた罪人たちの責め苦と彼らを苛む奈落の獄卒たちの残忍さ、そして何よりも牛車ごと紅蓮の業火に包まれる女房の悶え苦しみを写し取った一隻の屏風。
 本作は、絵師良秀がその屏風「地獄変」を完成させるまでの経緯を描いている。
 見せ場は、良秀が屏風のあらましは出来上がったものの、「唯一つ、今以て私には描けぬ所がございまする」と、絵の注文者である大殿に上申したた

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「たきび」(新潮文庫『ふなうた』所収)三浦哲郎著 :図書館司書の短編小説紹介

「たきび」(新潮文庫『ふなうた』所収)三浦哲郎著 :図書館司書の短編小説紹介

 竈の火。囲炉裏の火。仏壇の火。盆の迎え火。野焼きの火。そして、不謹慎ながら、盛大に燃える火事までが好きだったと言う男性。

 わかる気がする。私も、火の揺らめきを見るのが好きだった。どんな火でもよかった。
 ろうそくの火でも、ライターの火でも、花火の火でも。

 本文にも書かれているように、「人間は誰でも火が好き」なのだろうと思う。
 
 気を抜いて扱うと、危険と紙一重の特性を持ちながら、形を一

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