読書記録「紙の月」
川口市出身の自称読書家 川口竜也です!
今回読んだのは、角田光代さんの「紙の月」角川春樹事務所 (2014) です!
・あらすじ
わかば銀行の契約社員 梅澤梨花容疑者 (41)は銀行から1億円を横領したとして指名手配されており、警察は現在も捜査を続けている。
結婚を機に専業主婦になった梨花だったが、旦那の金で生活しているという意識と、子どもに恵まれないという焦燥感から、銀行のパート社員として働くことを決めた。
梨花の担当する顧客は、宅地開発で田んぼや山を売って資産家になった高齢者が多く、若く聞き上手な梨花を信用している者も多かった。梨花自身、自分が誰かの役に立っていることが嬉しかった。
だがしかし、様々な「もし」の選択の中で、梨花のなかで何かが変わっていった。
それは化粧品を買うために一時的に顧客の金を使ったことだったり、夫から稼ぎに対してマウントを取られたり、顧客の孫である若い大学生との出会いだったりと、徐々に、だが確実に取り返しのつかない道を歩んでいた。
彼女は大金を手に入れたことで、何を得たのか。そして、何を手放すことだができたのか。
半年ほど前に、池袋は東京読書交換会にて頂いた本をようやく紐解いた次第(ちなみにここの読書会もおすすめです)。
この世で生きていく以上、それこそ無人島か山奥にでも行かない限り、お金は切っても切れない関係にある。
私自身、正直もっとお金があったらなぁと思う時は何度もある。お金に余裕があれば、京都に行くにしてももっといいホテルに泊まれるし、美味しいものを食べれるし、そもそも夜行バスなんか乗らないだろうと。
まぁ貧乏旅行自体を楽しんでいるという気持ちもあるが、やはりお金はあればあるだけいいなとも思ってしまう。
先日たまたま耳に入った会話。「…に行くためにも、収入をあげないとね〜」と当たり前のような顔で話している男性と、「そうですよねぇ…」と神妙にうなずく女性。
恐らく、収入によって見える世界が変わるのかもしれない。いや、現実というものが変わるのだろう。
お金があれば◯◯ができるのに、値札なんか見ずに買い物できるのに、という世界と、月々の支払いをチェックせずとも潤沢に、そして安全性が担保された世界。
特に後者の場合、その世界に慣れてしまうと、お金のない世界に戻ることが困難になる。
なぜなら、お金があればあるほど、選択の自由に幅が広がるからだろう。
この作品は、梅澤梨花がなぜ1億円もの大金を横領したのかという背景が物語の大筋であるが、時折梨花のかつての友人の話も登場する。
例えば、子どもの頃は裕福だったのに、結婚したら旦那の収入が少ないと毎日愚痴を聞かされる男性。お金に振り回されないよう、いくつもスーパーを巡って節約する女性など。
なぜ梨花は銀行の金を横領したのかと同時に、ふと考える。梨花のように大金を得られたらどうなるのだろうかと。
お金があれば自由になれる。解釈はいくつもあるだろうし、いやお金よりも大切なことはあることは認めるが、やはりお金と自由の関係性というものは、あながち間違いではないと私は思う。
ただお金を持っているから正しいというわけでもないし、私自身お金がなくてもそれなりに幸せに生きている。もっとも、向こう側の現実とやらを知らないだけかも知れないが。
お金は人を変えるというが、この作品の登場人物もまた、お金に振り回されて生きている。誇張しているところもあるが、少なからず私が抱く不安を物語っている。
少なくとも、これからも真っ当に生きようとは思う。それではまた次回!
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