読書記録「飛ぶ教室」
川口市出身の自称読書家 川口竜也です!
今回読んだのは、エーリヒ・ケストナー 池内紀 訳「飛ぶ教室」新潮社 (2014) です!
・あらすじ
寄宿学校の五年生たちは、終業式後に行う劇「飛ぶ教室」の稽古に励んでいた。
キルヒベルクはヨーハン・ジギスムント・ギムナジウムの寄宿学校の生徒は、誰もが浮足立っている。
なぜなら、まもなくクリスマスを迎える時分。休暇中は学校を離れて、両親の待つ故郷に帰省できるのだ。
しかし、全員が帰省できるわけではない。
例えば、幼い頃に両親に捨てられたジョニー(ヨーナタン・トロッツ)は、休暇中に帰る家自体がない。
その他、経済的な事情で規制できない生徒も少なくない。
5年生のマルティンは、母親から届いた手紙を読んで、「泣きたい」気持ちになった。
そこには、マルティンが帰省するためのお金を、工面できないとのこと。
悲嘆に暮れるマルティン。だけど、「飛ぶ教室」に向けて練習しなければならないし、トラブルは次から次へと舞い込んできて……。
玉川重機さんの「草子ブックガイド」でも紹介された作品で、いずれ読もうと思っていた名作の1つ。
「クリスマス・キャロル」、「賢者の贈り物」に引き続き、季節感のある作品を読もうという流れで紐解いた次第。
少年たちの成長物語と、時折挟まれる先生と生徒たちの掛け合いも面白い。
物語は寄宿学校の5年生である5人の少年が、様々なトラブルに見舞われたり、起こしたりして進んでいく。
例えば、ライバル校が生徒の一人を監禁した騒動では、もとを辿ればライバル校の旗を破ってしまったことから始まる。
年齢にすると12歳前後の少年たち。トラブルの1つや2つは日常茶飯事かもしれない。
そんな彼らでも、突発的に仕返しに行こうとはせず、一旦大人の意見を聞こうと踏みとどまれるのは凄いと思った。
被害を最小限に抑えるためにはどうすればいいか、森の旅客車両に住む「禁煙さん」に訪ねたり。上級生が威張っているようならば、舎監の「道理さん」の意見を仰いだり。
そして大人たちも、それが「間違っていない、やるべきことだ」と判断したら、頭ごなしに否定しないこと。
規則を破ることは、間違った行為である。だけど、友達の身に危険が迫っているのに、助けに行かないのはもっと間違った行為だと。
道理さんや禁煙さんがそう考えるのは、この作品で著者が伝えたいことが垣間見える。
それは、子供の頃の経験や体験は、大人になっても必ず影響すること。
小学生の頃の保健室登校の日々も、従兄弟が自ら命を絶った中学生の記憶も。兄貴とは違う方向性で成長しようと決めた高校時代も。
それが今の自分を形成しているに違いない。
それを踏まえると、作品の雰囲気としても、吉野源三郎さんの「君たちはどう生きるか」に近しいものを感じた。
(そういうことを書くと、また「本当に読みましたか?」とコメントされそうだが)。
正しいことは正しいと、間違っていることは間違っていると伝えること。
勇気を示すとは、必ずしも名誉の負傷を負うことではないこと。
それから、感謝の気持ちを忘れないこと。正直でいること。
そのためには、子供だけではなく、大人の助力が必要であり、大人こそしっかりしていなければならないだろう。
道理さんや禁煙さんが、5年生たちに接したように。叔父さんやお母さんが、コペルくんに接したように。
少なくとも、大人って凄いなぁと思われる、大人になりたい。まだ間に合う気がするから。それではまた次回!